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トラウマは、外科手術で消せるかもしれない!

まだ精査できていないんですが、覚書として。
以下のような論文が2016年12月8日にNeuron誌に発表されたそうです。

論文掲載ホームページ
Wu-Zhou Yang, et al. Fear erasure facilitated by immature inhibitory neuron transplantation. Neuron, 2016, doi: /10.1016/j.neuron.2016.11.018
ログインできない人も多いと思うので、上記論文を紹介したNewScientist誌の記事
Brain cell transplant helps fearful mice overcome anxiety

ざっくりまとめると、大きな音に対してすくみ行動のような恐怖反応を示すマウスを用意し、そのマウスの扁桃体に別のマウス胚の細胞を移植してみたところ、大きな音に対して驚く頻度が少なくなったというのです。
つまり、トラウマを抱えていたマウスちゃんに、脳外科手術を施してみたら、そのトラウマが解消されたよ!、ってこと。
この技術が人間にも応用可能になれば、PTSDなどの重い精神疾患に苦しむ患者さんに対し、外科手術で一気に快方に向かわせるという選択肢を増やしてあげられるかもしれないのです。
(まあ、私がツッコミ入れるとしたら、正確にはマウスの恐怖に対する反応の「頻度が下がった」ことしかわかっておらず、それは恐怖感情の低減と直結しているとまでは言えないのでは、とコメントしたいですが。マウスちゃんに気持ちを直接聞かせてもらうことはできないですからね)

この技術はなかなか興味深いものでして、というのは――
私は、鬱病などの精神疾患およびそれに対する治療に対してあまり理解のない方に、次のような説明をしていたからです。

「精神疾患というのは、神経が見た目の上でも歪んでしまうようなれっきとした病気なんです。ひどいやけどを負った人の顔などに、ケロイドがあるようなもの。ただ決定的に違うのは、やけど傷であれば皮膚移植などによって綺麗にする選択肢が採れますけど、神経の外科手術というのは難しい。ほら、神経切り貼りするって、聞いただけで痛そうじゃないですか? しかもその傷ついた神経があるのが脳だったりするわけです。手術するのが難しいって容易にわかりますよね。だから仕方なしに、向精神薬のような薬物治療によって内科的に治していくか、カウンセリングやセラピーのような手段によって時間をかけて戻していくしかないんです」

聞き手の『痛そう』って感情に頼っているので、この説明はあまり科学的・医学的にほめられたものじゃないのですが、それでも納得してくれる方は多くて重宝していました。
しかし、今後は「外科手術もできる(ようになるかもしれない)」と述べないといけなくなってくるかもしれませんね。
考えてみれば、上記の私の説明に対し、「じゃあ痛くないよう&問題ないよう外科手術の技術を確立させればいいんじゃないか?」「そもそも外科手術で精神疾患が治るかどうか、その検討してないんじゃないの?」と疑問をもち、課題とする研究者が出るのは自然なことで、今回の論文は後者の疑問に答えるものと位置づけられそうです。

手術の効果がどのくらい持続するのか、移植による問題はないのか、人間に応用できるのか……などなど検討事項はたくさん残っているとのことですが、今後の研究の発展に注目するだけの価値はありそうだと感じました。
by zattoukoneko | 2016-12-09 12:44 | 生物・医療 | Comments(0)