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【小説連載】【短編小説】『紅ひらり』第七話


 私は山にやってくると、いつものように声をかけました。
「今日もやってまいりました。楓様」
 そう、注連縄の巻かれた一本の大木に話しかけます。
 けれどそこに人の姿が現れることはなく、声が聞こえてくることもありませんでした。
 赤と黄の舞う山の中、私は一人きりでした。

 楓様は私に変わるようにと諭されました。そして自身は神木となられました。
 ですが結局私はまたここにいます。
「楓様は美しい変化をするのはカエデではなく、むしろ寿命の短い人間の方だと述べられました。ですがそれはあくまで木から見たときの話です。人にとって人の時間は長いのです。一朝一夕で変われるはずがないではないですか」
 しかし状況は半ば強制的に変えられてしまいました。このように話しかけても応えてくれる方はもういないのです。
「ただだからこそ気付いたこともあります。失ってからわかっても仕方のないことですが」
 言葉と一緒に苦笑が漏れます。それは乾いたものではありませんでしたが。
 私がここに通っていたのは、そうすることで心穏やかになれるからでした。先日指摘されたように村の居心地が悪くて、それで逃げていたというのもあるのでしょう。けれど私は相手が楓様だから会いに来ていたのです。他の人や場所ではなく、楓様の隣がよかったのです。
 子供の頃から私はほとんど変わっていないかもしれません。でも変わらぬものがあってもよいのではないでしょうか? 心安らぐこの場所は、私にとって大事なものだったと今でははっきりと申し上げることができます。ただ当たり前すぎて、失うまで気付かなかっただけなのです。
 その場所を失くしてしまったことは悲しいことですが、楓様と過ごした時が大切だったとは胸を張って言えるのです。
「だからこそお聞きしたいことがあります」
 もう楓様は言葉を発することはありません。それでも問わずにはいられませんでした。
「どうして楓様はいつも私の前に姿を現してくれたのでしょう? 最初の出会いのとき、山の中で泣いている幼子が気になったというのはまだわかります。ですがその後もずっと私と一緒に時を過ごしてくれました。その理由とは何なのでしょうか? ただの気紛れとはどうしても思えないのです」
 人と木は違う存在なのだと度々言われてきました。それは事実でしょう。私自身楓様は自分とは異なる特別な存在だと思っていたからこそ、どのように想っているのかにきちんと向き合ってこなかったわけですし。
 そうでありながらも、全く異なるものでもないはずなのです。思い違いでなければ私と楓様はきちんと言葉と心を交わしていました。
「楓様と過ごした日々を私は忘れることができません。これからもずっとずっと抱えて生きていくことでしょう。ただ、もし私に変われた部分があるとしたら、それはこういうことなのではないかと思います」
 告げると私は着物の袂から鼈甲櫛を取り出しました。母の形見であり、父と交換した品。それを注連縄のところに差します。
「これが私の気持ちです。ですから受け取ってくださいませ」
 私の告白に楓様は何も返されません。
 神木となった今、私はおろか、他の木々とも言葉を交わされることはないのでしょう。
 それは仕方のないこと。何も思わないわけではありません。けれど理解はできています。
 しばし新たな神木となった楓様を見つめてから、私は踵を返しました。今日はもう帰ろうと思います。自分の想いを伝えるのが目的でしたから。
 帰り道の途中で食べるものがたくさん見つかればいいなと、そのようなことを考えながら歩き出します。
 そんな私の目の前に鮮やかな紅が舞いました。
 手にしたそれは、綺麗に色付いた一枚のカエデの葉でした。
 胸がきゅっと締め付けられます。それでも私は何も口にせず、振り返りもせず、ただそれを大事に仕舞うと帰り道を歩き出しました。
 ひらりひらりと赤や黄が舞う中で、その一葉がどれだけの価値があるのか私はきちんと知っていましたから。

                               『紅ひらり』契

by zattoukoneko | 2012-06-29 03:37 | 小説 | Comments(0)

【小説連載】【短編小説】『紅ひらり』第六話


 私は楓様に反論しました。神木になられるということが何を意味しているのかわかっているのでしょうか。もはや会うことができなくなると、そういうことではありませんか。
 怒りと悲しみに綯い交ぜになったぐちゃぐちゃの私に、楓様は毅然とした態度で答えを返されます。
「本来わたしたちは交じり合うことも出会うこともなかった者同士だ。邂逅しなければよかったなどとは言いはしない。けれど違う道を歩んであるはずであり、出会ったとしてもいずれはそうしなければならなかった。ただ今回は神木になるという選択肢が提示されたというそれだけのことだ」
 それで納得のできることなのでしょうか。私には理解できませんでした。
 つい先日御神木様のところを訪れたばかりです。あのように喋ることのできないものに楓様はなりたいということなのでしょうか。
「それは人としての舞の想いでしかない。木と人は違う。元から声を発することのできないわたしたち木々にとって、話すことができないというのがそんなに苦痛であり得ようか?」
「よく……わかりません」
 仮に楓様の主張を認めたとして、神木になる理由が見つかりません。
 けれどそれこそ簡単なことだと楓様は笑われました。
「切り倒されてしまうより遥かに良いではないか。神に近しい存在になるのだから、これまでとは立ち居振る舞いは当然変えなければならない。けれど木であることには変わりない。何もまったく別の存在になれというわけではないのだ。無理なことでも無茶なことでもない」
 そしてどこか遠くを見つめるようにしてその言葉を発せられました。
「神木になることで村の厄災が収まるのなら、それによって舞を今の境遇から救い出すことができるのなら、わたしは喜んでこの身を捧げよう」
 その言葉はあまりに卑怯すぎます。そう言われたら私からは何も申し上げることができなくなってしまうではないですか。
 黙りこくってしまった私に、楓様が仰られます。
「私は変わる。けれどそれだけでは駄目だ。舞もこれを機に変わらなければならない」
 そう忠告してから私に訊いてきます。
「舞はここを逃げ場としてきたのではないか?」
「そのようなつもりはない、と申し上げたいところですが、事情を知った楓様は信じてくれないでしょう。それにそのような気持は一切なかったとも言い切ることができません」
「そうだな。舞は村で名誉回復なり信頼構築をしようという努力をしていなかったように感じる」
 楓様は山から外に出られませんから、それは推測です。けれど当たっていました。私は村では食べ物の交換など必要最小限のやり取りはしていましたが、それ以上の仲を形作ろうとはしてきませんでした。
「わたしは人間とは互いに支え合うべきものだなどと偉そうに説教するつもりはない。そもそも人ではないわたしには分かり得ないことであるし、何より呉葉のことを知っているからな。彼女は村の中では浮いていたようだが、独力で自分の魅力を磨いていった。それは村人にはなかなか理解されないものであったが、それはやがて経という男に見染められるきっかけとなった。それと同じように舞は舞らしく生きてくれればそれでよい。けれどこれまでのように自分を卑下して、わたしのような人外のものに頼るのはやめにしよう」
 お話を聞きながら、一つだけどうしても確かめたいことが出てきました。率直に楓様にお尋ねします。
「楓様は私を面倒に思われていたのでしょうか。いつまで経っても自立できない幼稚な子供が毎日のように遊びに来る。仕方がないから子守をしてやろうと、そういうことだったのでしょうか」
 その問いかけに楓様はきっぱりと首を振って否定してくれました。
「そんなことは一度たりとて思ったことはない。舞に出会えたこと、共に過ごした時間はわたしにとっても大事な思い出となっている。ただわたしが関わり続けることで舞の成長が止まるのならそれは避けたい」
 そうして結びとして楓様はもう一度その考えを述べられました。
「わたしの力で村に平穏が訪れるのかどうか、挑戦してみたい。里山は村なくして存亡できないものだからな。その役に立てるのならできるだけのことをやってみよう。それに災いが落ち着けば舞も自らの変化に向き合い易くなるだろうからな」
 それが木である楓様の考え方なのでしょうか。幼い頃から私のことを見守り続け、異なる時の流れの中で生きるものとしての。
 ならばその決意は尊重されるべきなのかもしれません。人である私とは異なる道を進まれることを決められたのです。そしてそれは遅かれ早かれやってくる別れでもありました。それが今回の一件だったというだけ。まだ心の整理はきちんと付いていませんが、楓様が意を決める中で私のことをとてもよく考えてくれていることも伝わってきました。私はそれに心から感謝すべきでしょう。
 ただ優しく頭を撫でてもらいながら、私はどうしても思ったことを口にせざるを得ませんでした。
「あまりにも遠慮と自制が過ぎますよ……楓様」
 そうして双眸から滴が紅の世界にひらりと舞い落ちました。


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by zattoukoneko | 2012-06-28 05:07 | 小説 | Comments(0)

【小説連載】【短編小説】『紅ひらり』第五話


 私が怖れていたことがただ一つだけありました。
 今日もいつもと同じように、私は楓様のもとを訪れます。けれど近くまで行ったところで異変に気付き、慌てて身を隠しました。
 木の陰から楓様の方を見遣ると、数人の村人が集まっているのが目に入ります。
 途端に胸が締め付けられ、息をするのが苦しくなって手で押さえないとどうにもなりませんでした。
 どのくらいの時間村の方たちが楓様の前で話をしていたのかはわかりません。帰っていったのを確認すると、朦朧とした意識のまままろび出ました。
 ふらつく私を、楓様が悲しそうな目をして迎えます。
「ずっとわたしを偽っていたのだな」
 その一言で楓様がすべてを知ってしまったことを悟りました。おそらくは村の方たちが話をしていたのでしょう。
 私には楓様を謀ろうなどというつもりは毛頭ありませんでした。ただ話すことができなかった、それだけなのです。
「村ではまだ厄災が続いているそうだな」
 続いていたというわけではありません。御神木様のおかげで、当時厄は消えたかに思われました。けれど少なくなったものの病に倒れる人は時々いました。数年が経ち、その数は次第に増え始めました。そして今では当時と同じくらいの猛威をふるっています。今年の夏には水も枯れ、村からは半数の人が消えました。田んぼの稲は黄金色になる前に茶色く日干しされました。今年の冬は食べ物がほとんどありません。さらに何人もの人が亡くなられるでしょう。
 厄災の原因は何なのでしょう。最初の犠牲者は父でした。
「確かに経は若くして死んだ。旅を続けていた丈夫な男が、いとも容易く病に伏した。それが本当に厄によるものだったのかどうかはわからない。けれどそれまで何事もなかった村に異変が生じ始めたのがその頃だったから、原因はその近くにあると考えられたということか」
「はい。父が他界したのは私が生まれて間もない頃のことでした。そして生まれてきた私は常人とは異なる髪の色をしてました。ですから村の人たちの目が向くのは自然なことだったと思います」
 それを聞いた楓様は大きく嘆き、首を振られました。
「あまりにも馬鹿げている。髪色こそ違えども、舞はただの人ではないか。経も呉羽も人だった。どうして村に厄など齎すことができようか」
 それは正しいかもしれません。私も何ら特別な力など持っているようには感じませんし、使っている覚えもありません。
 けれどこの話をしてくれたのは他ならぬ楓様ではありませんか。
「人は他とは見た目の異なるものに、何らかの不思議な力が宿っていると考えてしまうものなのでしょう? ならば真偽はどうあれ、私が厄災を引き起こしているのではないかと想像するのは自然なことかと思います」
「……」
 私の言に楓様は押し黙ってしまいました。そして額に拳を押し付け、絞り出すように呻き声を上げました。
「初めてわたしと出会ったときも、この前髪が乱れていたときも、舞は村の者から虐めを受けていたということか。おそらくはそれ以外の日も辛い目に遭わされていたのだろう。だからお前はいつも一人でここにやって来た」
 理由はそれだけではありません。けれどその通りでもあります。私が誰かを誘ったとして、一緒に来てくれる人など村にはいなかったでしょう。
 私は淋しい笑みを返すことしかできませんでした。そして楓様は無言でそれを受け止めました。
 ただ一つだけ疑問がありました。何故村の方たちはここでそのような話をしたのでしょう。楓様は私以外の方の前には姿を現しませんし、そうなれば言葉が通じるかなどわからないはずです。
「舞は毎日のようにわたしのところに通っていたからな。御神木様を除けばこの里山で最も古い木だ。だからその力を使って村に危害を与えているのではないかと想像したようだよ」
 そんなこと私はしていません。お願いしたこともありません。楓様もそのことは重々承知しているはずです。
 けれど村人たちは楓様と話をしたことがありません。私たちの交流や出会いを知る由もありません。村の方たちの想像は間違っています。けれどその思い込みを強くしていたとしたら?
 その私の疑問に楓様が答えます。
「彼らはわたしを切り倒そうと考えていたようだよ」
 聞いた瞬間目の前が暗くなりました。楓様が抱き支えてくれたようですが、それにも気が回らないほどでした。
 耳元で優しい声音が響きます。
「もしくはわたしに新たな神木になってくれないかと頼んできたよ。そうすれば舞と引き離せるし、それだけでなく自分たちの力になってもらえるだろうからと」
 そこまで告げると、しばし楓様は沈黙されました。その胸に私を抱きながら、何事かを考えているようでした。
 やがて楓様はぽつりとその言葉を漏らしました。
「わたしも変わるべきなのかもしれないな。自然に存在するものとしてそれは当然の義務とすら言える」
 そう口にしてから、次に発せられたものは決意でした。
「わたしは神木となろう。自ら望んで変われるというのなら、それは本望というものだ」


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by zattoukoneko | 2012-06-27 17:52 | 小説 | Comments(0)

【小説連載】【短編小説】『紅ひらり』第四話


 連れて来られたのは御神木様のところでした。
 長い歳月を耐えてきたその幹は、周りの木々よりも太く、よじれ、力強さを感じさせます。威風凄まじく、巻かれた注連縄が私を近付かせまいとしています。
 正直に申せば、私はこの御神木様があまり好きではありません。
「どうして好きではないのだ? 何か嫌な思い出でもあるのか?」
 問いかけてくる楓様は、けれど質問でありながらすでに答えの予想がついているような口ぶりでした。ただそれを言ってくれる様子もありませんでしたし、私も明確な何かを手にしているわけではなかったので、感じていることを素直にそのまま伝えることにしました。
「御神木様もカエデです。けれど周りの木とは全く異なっています。神様としてはそれが当然のことなのかもしれませんが、どうしてもその違いが気になって……怖くなってしまうのです」
 そこまで述べて、はたと気付きました。
「御神木様は人の姿を取ることはないのでしょうか? 楓様よりずっと高齢かと思います。ならばその力も大きなはずで、私たちの目の前に現れることも可能なのではないでしょうか? 今まで私はその御姿を目にしたことがありません」
「確かに舞の言う通りだな。能力としてはそれだけのことができるし、神木になられる前は人の姿を取って里山の様子を実際に見て回られていたよ。御神木様は女性で、非常に見目麗しく、優しい方だった。里山の木々はみな御神木様に惚れていたよ。けれど今では舞どころかわたしたちの前にもその姿を現さないし、声をかけられることもない」
 楓様の言葉と口調、昔を見つめるその眼差しから、御神木様はとても親しみやすい優しい方だったのだろうと想像できました。
 けれどそれは私が感じているものと違います。私にとって御神木様は近寄りがたい存在です。何故そのように印象が異なるのでしょうか。そして何故今では周りの方々にお声をかけることをしなくなったのでしょうか?
「神木となられたからだよ」
 私の疑問に楓様は端的に答えられました。
 楓様はしばし御神木様を眺められた後、私に向き直って話し始めました。
「御神木様は以前はただのカエデの木だった。違いといえばこの山に数百年おられ、周りの木々や動物たちに優しい言葉を投げられる方だったというそれだけだ。けれど村が厄災に襲われたことがあった。呉葉が死んだあの頃のことだ。村人たちはここに来てお願いをした。神となることで村を救ってくれと」
 母が死んだとき、村が厄に見舞われていたことは知っていました。幼かったのでよくは覚えていませんが、数日に一人は亡くなられていたように思います。
「わたしもそうだが、御神木様も人間の前に姿を現すことはなかった。カエデと人は違うからな。そしてわたしたちが御神木様に抱いていた印象とは別のものを村人たちは持っていた。すなわち神々しい存在であり、敬うべきものだと考えていたのだよ」
 楓様は御神木様の注連縄に、そっと細い指を乗せました。太い幹を見つめるその瞳は、どこか淋しさを映し出しているように思えて仕方ありませんでした。
「舞が怖さを覚えるならそれは自然なことだ。何故なら舞はわたしたちカエデとは違って人なのだから。寿命の長い木々からすれば、高齢で尊敬されるべき存在であっても、同じ樹木と見ている。けれど長く生きることのできない人間は、同じカエデであってもそこに畏敬の念を覚えるものらしい。そして神になるようにお願いするということは、より特別な存在になってくれと言っているということだ」
「それが注連縄なのでしょうか。それを巻くことによって特別な存在だと知らしめる」
 私は楓様の様子を窺いながら、そのような仮説を立てました。実際、それがあることで御神木様にはより一層近寄り難い気配が纏われることになっているような気がします。
「それは手段でしかないが、効果的なものでもある。生き物は見た目が変わるとそこに何かを感じ取るものだからな。殊更に人はその傾向が強く、そして意識的にか無意識的にか、自らの手で容姿を変えることができる」
 つまり村の人たちはすでに見た目を他より異にしていた大木に、注連縄を結い付けることでより神に近付けようとしたということなのでしょう。
 そこまで考えて、私は一つの重大なことに気が付きました。
「待ってください。ということは注連縄を巻こうと、その木が神木となるとは限らないということではないですか?」
 注連縄がただの手段であり、そして人が自分たちを思い込ませるためにやっている行為なのだとしたら、当の木が実際に神になるか否かは別の話となります。
 楓様は私の推測に首を縦に振って肯かれました。それから御神木様を見上げながら言葉を続けられます。
「人のしたことに従う必要も義理もない。けれどこの方は村人に懇願され、熟慮した末に神木となることを決意された。だから御神木様は人の姿を取ることをしなくなったし、声を発することもやめた。そうすることでわたしたちカエデとも距離を置き、特別な存在となることにしたのだ。自らを捨てることで村の厄災が収まるならと、そう願ってな」
 どうして御神木様は村のために自らを犠牲にすることを選ばれたのでしょう。楓様もその心の内までは存じていないとのことでした。
 それから楓様は私に向き直りました。ここに連れてきた理由を話し始めました。
「舞はわたしやわたしの思い出を特別なものとしていないか? その理由はわからない。ある程度は母である呉葉が他界したことが関係しているのかもしれないとも思う。けれど極端過ぎるようにも感じるようになってきたのだ。形見の櫛もそうだし、古着となった着物もそうだ。舞はわたしとの他とは異なる思い出をそれらで締め、縄とすることで神格化していやしないだろうか?」
 楓様の追求に、私は何も返すことができませんでした。その通りだったかどうかまでは今の私にはまだわかりません。けれど相手が楓様であろうと、そして楓様であるからこそ話せないこともあるのです。
 二人を包む秋はとても静かでした。
 そしてこれが最後の静けさになるとは想像もしていませんでした。


   『紅ひらり』第五話へ
by zattoukoneko | 2012-06-26 04:39 | 小説 | Comments(0)

【小説連載】【短編小説】『紅ひらり』第三話


「私、木々が紅葉するこの季節が一番好きなのです」
 そのようなことをとある大きなカエデの木に触れながら口にしました。大きいといってもあまり太くはならない樹木です。ただ威風堂々としていて、そして厳かな雰囲気を感じさせるから『大きい』のです。
 その木は楓様の本体でした。里山に最も古くからあるカエデです。
 けれどそれは勘違いだったようです。楓様が苦笑しながら訂正されました。
「最高齢はわたしではないよ。ずっと前から林を見守ってきた方が別のところにおられる」
「あ、そうでした。御神木様もカエデの木ですね」
 ここよりもう少し奥へ進んだところに、注連縄の巻かれた一本の御神木があります。ただ私は敬うべきものという意識が強かったので、それをカエデだとはあまり意識していなかったようです。
「神木となられたのは舞が幼い頃だったからな。それも致し方のないことだろう」
「その当時のことはよく覚えているのですけれどね……」
「そうだな。呉葉が死んで舞が一人取り残されたのもその頃だった」
 一人で取り残された私は守ってくれる人を失い、紅い髪のせいで村の子供たちにいじめられてしまいました。里山の中に逃げ込み、泣いていた私の目の前に現れたのが楓様でした。
 御神木様とは異なりますが、私にとって、楓様はそのときから特別な存在になりました。そもそも他のカエデの木には人の姿で現れる方はいません。それに楓様も私だけに特別その御姿を見せてくれるようです。
「他の木々には人の姿を作り出すほどの力が備わっていないというのもあるけれどもな。ただ幼子が泣いているのをわたしは放っておけなかったし、それに舞のその美しい髪色に惹かれたのだ。気付いたら人の姿を取って頭を撫でていたよ」
 ちょうど色付いた葉々が宙を舞うこの季節のことでした。楓様と出会ったときの驚きと安らぎを覚えているから、この時期が一番好きなのかもしれません。
 そんなことを考えていたら、ふと母から聞いた話を思い出しました。
「花や木に何かしら意味のある言葉を付ける風習があるのだそうです。カエデだと『大切な思い出』、『美しい変化』、『遠慮と自制』だとか。いくつかの言葉があるのは地域によって異なるから。母はそこまで教えてくれませんでしたが、先日楓様から聞いた話と合わせると商人をしていた父から伝え聞いたことなのでしょう。この村には花言葉や木言葉はありませんし。でもどれを取ってもよく合っているなと感じます」
「そのようなものがあるのか。美しい風習だ。だがカエデそのものであるわたしには合っているかどうかわからない。あくまで人が受けた印象を言葉にしたという気がする」
「そうかもしれません。ですがそれこそが大事だと私は思います」
 カエデは紅葉することによって、その色を美しく変化させます。けれど儚いものではなく、見る人に強い印象を残します。燃えるようなその色は、しかし自制されて攻撃的な感じではありません。だから人は、秋の景色として紅葉した山を大切な思い出の一幕とするのではないでしょうか。その様子を林の中にいるカエデそのものは見ることができません。人だけが眺めることのできるものです。
 それに私の身近にはより印象的な存在がいました。楓様には木言葉がそのまま当てはまるように思えたのです。
「楓様は幼い私の前に突然姿を現されました。まさか木が人となるなんて思ってもいませんでしたし、だから最初は本当に驚きました。けれど神に近しい存在であるはずの楓様は、子供の私に丁寧に話しかけてくれました。艶やかなその御姿と、その遠慮深いとも思える優しさが、いじめられて傷付いていた心を穏やかなものに変えてくれました。今でも楓様はこうして私のそばにいてくれます。すべての始まりはあの出会いだった。だから大事な大事な思い出です」
 言葉を紡ぎながら、自然と頬がゆるんでいくのを感じます。どうして笑みを浮かべるのか自分でもわかりません。ただ心がぽかぽかするのです。
 そうして視線を上げた先、楓様は眉間に皺を寄せていました。
 首を傾げて見上げると、こちらに気付いた楓様が訊いてきます。
「舞はわたしとの出会いを大切な思い出にしているのだな?」
 その通りです。それは先程も述べたことのはずです。だからこそ楓様が厳しい顔をしている理由が皆目わかりませんでした。
 戸惑う私に説明してくれます。
「カエデは自分たちの様子を外から眺めることができないから木言葉がわからないのではないかと舞は考えた。ならばそれは人にも当てはまることではないか? 人は人言葉というものを自分たちに用いておるか?」
「それは……」
「あのな、舞。わたしからすれば美しい変化をするのは寿命の短い人間の方なのだよ。事実舞は齢十六となり大人となった。一方でわたしは何も変わっていない。そういうことなのだよ」
 楓様はそこで一度言葉を区切られました。そしてより一層難しい表情になって続きを口にされます。
「けれど最近ふと思うのだ。舞は年齢や見た目の割に、その実何も変わっていないような気がすると」
 私は何も言い返すことができませんでした。母が死んでからは日々の糧を得るだけで精一杯でしたし、正直に申し上げれば変わる必要も感じていませんでした。
「それは妙なことだよ。すべてのものは変わるのが自然なことであり、変わるべきでもある」
 話し終えた楓様は私をとある場所に連れていくことにしたようです。促されるがまま私はそれに従います。
 歩き出す私たちを、周りの木々が何も言わずに見送ります。ひらひらとその美しく色付いた葉を宙に舞わせながら。


   『紅ひらり』第四話へ
by zattoukoneko | 2012-06-26 04:38 | 小説 | Comments(0)

【小説連載】【短編小説】『紅ひらり』第二話


 その日私が里山を訪れると、楓様は怪訝そうな顔をされました。
「髪が乱れているように思えるのだがどうかしたのか?」
 私はきちんと直したつもりだったのですが、どうやら手入れが行き届いていなかったようです。
「里山の周りにあるススキの背がとても高くなっておりまして、そこを通る際に尾花が髪に引っかかってしまったのです。付いたものは取り除けたと思うのですが、如何せん髪が長いものですから少々乱れが残ってしまったのかもしれません」
「なるほどな。ススキはすぐに背丈が高くなる。あまり育ちすぎると他の草が育ちにくくなるから、過ぎるようであれば手入れをしてくれまいか。里山から出られないわたしにはできないことであるし」
 楓様は私の言葉に納得すると、そのようなお願いをされました。里山と人は共に生きているのですし、手入れは食べ物や木々をもらっている村人の当然の務めです。
 それからそのやや細めの指をこちらに差し出しながら述べられました。
「今日も櫛は持っているか? あるようならわたしが梳いてやろう」
 櫛というのは母の形見の品です。袂から黄褐色のそれを取り出すと、楓様に手渡しました。
 髪を手入れしやすいよう、私は背を向けるとその場に座ります。そして楓様にお願いをしました。
「やってくださっている間、母と父の馴れ初めを聞かせてください。私、その話が好きなのです」
 形見の櫛は鼈甲でした。私の村は山の麓ですから海のものはなかなか手に入りません。それは父が贈ったものなのです。
「呉葉を娶った経という男はあちこち旅をして回っていたからな。鼈甲櫛もその途中で手に入れた物のようだ」
「物心付く頃には父は他界していましたから、私はどのような人だったのか存じておりません。母からはとても知識が豊富だったと聞いていますが」
「呉葉も頭の良い娘だったが、この小さな村では知識の量はどうしても乏しいものになる。その点多くの土地を訪れたことのある経は物事をたくさん知っていたようだ」
「私にとっては母も博識な人でしたけれど。どれだけ多くのことを学んだかわかりません」
「舞の聞かせてもらった話も元を辿れば経の持っていた知識だ。ただ経は旅先で訪れた土地を別物と見做していたためにその豊富な知識を繋げていくことができなかった。一方の呉葉は耳にしたことを鵜呑みにするのではなく、自分なりに纏め上げる能力に長けていてな。この村を訪れた経から聞いた話を独自に解釈し、そこから本質を見い出した。そんな呉葉の姿に驚いたのだろうね、結果経が惚れ込んだのだよ」
 それは初めて聞く話です。この村を訪れた父が母に求婚し、その際に鼈甲の櫛を渡したことは知っていましたが。
「舞も大人になったからな。いつもと同じままに話すのではなく、それなりの内容に変えようと考えたのだよ」
 楓様はそう一つ断りを入れると続きを語り始めました。
「告白をされた呉葉は戸惑った。どうやら自分には不釣り合いだと感じたらしい。小さな村の中では彼女の頭の良さは浮いていたせいもあるだろう。それまで呉葉に想いを寄せる男は誰ひとりとしていなかった。けれど次第に自分の価値を見つけてくれた経に惹かれていき、ついには承諾の返事をしようと考えた。それでもまだ呉葉は己には何もないと思い込んでいたし、経からは貴重な鼈甲をもらっていたしな」
「母は櫛の代わりになるものを探したのですよね。この里山で」
「そうだ。それこそ何日も何日もこの林の中を歩き回った。そして努力の末に琥珀を見つけたのだよ」
「カエデの木は樹液が豊富ですものね。琥珀は樹液が長い年月をかけて固まってできるのだと母に教わったことがあります」
 私の言葉に頷かれた楓様は、朗らかな笑みを浮かべてこのようなことを述べられました。
「鼈甲の櫛と琥珀の交換は契りとなった。さすがに件の琥珀はわたしからできたものではないが、長く生きている者としてこの山が二人の役に立てたことを嬉しく思うよ」
 今日お話をしてもらうことで母のことを詳しく知ることができました。
 この小さく、閉鎖的な村の中で母は孤独に暮らしていたようです。けれど父と出会うことでその才覚を見つけてもらい、そして里山に祝福されながら恋仲として結ばれたのです。
 物心つく前に父は他界していましたが、母が気丈に明るく私を育ててくれた理由がわかったような気がしました。
 幸せになった両親の話に、私は漏らさずにはいられません。
「私もそのような素敵な出会いをして、恋に落ちてみたいものです」
 そのつぶやきに、どうしてか楓様は私の髪を梳く手を止めました。けれど何事もなかったかのようにすぐに再開されます。
「そうだな。わたしも舞が良き男性に巡り合えることを願っておるよ」
 先程までと少し様子の違う楓様の声音を、私は訝しく思いました。ですが背中を向けているためにその表情を知ることはできませんでした。


   『紅ひらり』第三話へ
by zattoukoneko | 2012-06-26 04:37 | 小説 | Comments(0)

【小説連載】【短編小説】『紅ひらり』第一話


 赤と黄が木々の合間を縫うこの季節、楓様は一番美しくなると思う。
 そのようなことを私が口にしたら、楓様は小さな笑窪をつくりながら返されました。
「わたしは男だから美しいという言葉をもらっても褒められているのかどうかわからないよ」
 しかし錦の衣に身を包んだその御姿には確かに紅葉がとてもよく映えるのです。ですから美しいと形容することは自然なことに感じました。
 それに楓様も実は喜んでくれているように思えます。表情も豊かで、嬉しいと思われたときにはきちんと笑みを浮かべてくれました。ただ奥ゆかしい方ですので、賛辞を呈されても自分のことばかりを主張することがないだけなのです。
 楓様が他の方々を気にかけるのも仕方のないことでしょう。言葉を交わすことはありませんが、この里山には私たち二人だけではないのですから。
 代わりとなるのでしょうか。舞い散る葉々の中では私の方が綺麗に見えると楓様は仰ってくれました。
「舞の紅い髪は秋の山の中でも鮮やかだ。かといって目立ちすぎることもなく、景色に馴染んでいる」
 それこそ私にはよくわかりません。この髪色は珍しいために、褒められるより奇異な目を向けられることが多いのです。
 物思いに耽ってぼんやりとしていた私は、細い山道で足の踏み場を間違え大きくよろけてしまいました。それを楓様がすかさず抱きとめてくれます。やや痩身でありながらも堅強な体躯に支えられ、肌理の細やかな指が肩に回されます。
 幼い頃から何度そのように腕の中に入れてもらったことでしょう。穏やかな気持ちになりながら頭を胸に預けます。
 私ももう大人になりましたが、その心地の良い場所は変わらぬままに思えました。実際雰囲気だけでなく、姿かたちも出会った頃そのままです。
 楓様は人ではありませんでした。この里山にあるカエデの木の精だったのです。

 里山が鮮やかに色付くのは実りの季節の到来を知らせるものであり、それと同時に間もなく食べるものが少なくなることを伝えてもいます。
 見つけたトチの実を拾っていると、楓様が頭の横に手をやりながら述べられました。
「人やその他の動物には申し訳ない気分になるな。我々が一年中木の実をつけられていればいいのだが」
「それは難しいことなのでしょう? 村では稲作もしておりますが、コメも水を与え、陽の光を浴びせる時季を経て実ります。山も同じように実を作る時間が必要なのでしょうし、そして冬には休まなければならない。私たちはそのことを十分理解しておりますよ」
「そう思っていてくれているのは素直に有り難いことだ。けれどこの里山だけでは村に住むすべての人々の腹を満たせないのもまた事実だと感じる」
 確かに私の住む村は豊かではありません。田畑の耕作にも適してはおらず、小さなまま発展することができないでいます。ただ山の麓にあるため、商人や旅人の中継地としてなくてはならない場所なのでした。
 深く悩まれている楓様に、私は笑みを向けます。
「このようにして里山があることだけでも幸せなことです。むしろ富があれば争いの元になる、そう母は言っておりました」
「……呉葉の言うことも一理ではあるな」
 呉葉とは私の母の名です。もう、この世にはいませんが。
 楓様は少し寂しそうに目を細めます。そして私の着ているものを見て述べられました。
「その服は呉葉が身に着けていたものだと記憶している。新しい服を仕立てるだけのゆとりが舞にはないということだろう?」
 体を包む薄紅色は、母が今の私と同じ歳の頃に纏っていたものです。
「舞は今年でいくつになる?」
「数えで十六となりました」
「十六か。人が成長するのは早いな。わたしら樹木にとってはとても短い時間だが、人間や衣服にとっては十分長い年月だ」
「そうかもしれません。この服の色も大分褪せているように感じます。けれど着る分には何ら問題はありませんし、母のものだから大事にしたいと考えているのです」
 私の言葉を聞いた楓様は、少し考える素振りを見せました。それから次に投げかけられた問いは意表を突くものでした。
「舞は村で頼る者がいないのか?」
「……え?」
「気分を悪くしたのならすまない。しかし十六ともなれば恋仲の相手がいてもおかしくはない年頃だ。別に恋仲でなくともよい。友人や助けてくれる人に恵まれていないのか? 舞はいつも一人で来るから気にはなっていたのだよ」
 言われてみればその通りです。私は里山を訪れるときは必ず一人でした。ですが村では私だけで暮らしを成り立たせているわけではありません。母も父もすでに他界しておりますし、ここで集めたものと交換でお米などを譲り受けたりしています。
 では何故一人で来るのかと問われれば、私はこう答えるほかない気がします。
「楓様は他の人には御姿をお見せになりませんから。食べるものを集めるのも大事なことではありますが、私にとっては楓様にお会いできるのも楽しみの一つなのです」
「そうなのか? しかし同じ村の娘たちと話でもしながら採集したほうが楽しいのではないかと思うのだが」
「そうかもしれませんね。では『自然なこと』と替えておきましょう。私が里山に来て、その際に楓様に挨拶をしなければ気が済まないのです」
 母がいなくなってすぐに私は楓様に出会いました。まだまだ小さな子供のときのことです。それ以来の付き合いですから、二人でこうして山の中を散策するのが日課となっていたのです。
「確かに舞の姿を見かけたのに話し掛けられないとなると、わたしも残念に思うかもしれない。毎日のように言葉を交わしているのだから気にすることもないのだろうにな」
 それはむしろ逆ではないでしょうか。毎日のように顔をあわせているからこそ、言葉をかけられなければ落ち着かなくなってしまうのです。いわば幼馴染のようなもの。もちろん楓様と私は生まれが大きく異なりますが。
 私はそのようなことを伝えようとして、少し先の地面にシイの実と一緒にクリが落ちているのを見つけ、まずはそれを取りに行くことにしました。
 大きな収穫を楓様に見せながら、この変わらぬ日々が楽しく安らぐものだと感じていました。
 周りではひらひらと赤や黄の葉々が舞っています。秋も深くなり、里山の景色は急速に変わっていこうとしていました。


   『紅ひらり』第二話へ
by zattoukoneko | 2012-06-26 04:35 | 小説 | Comments(0)

小説の連載をするかもしれません?

ここしばらくブログ更新が滞っています。
私自身忙しくなっていて時間の遣り繰りに苦労しているというのもあるし、それが一番大きな要因だと思うのですが、もう一つに次以降で「小説連載」をやろうと考えているのです。この準備期間がどうしても必要ということになります。……結局書いてないんでしょ、とか言わないで!

小説の連載は以前もこのブログで試みました。『絶体零度』というものです(
第一回目へはここをクリック)。有り難いことにこの小説はかなりの人気と高評価が得られたようです。
一方で「長すぎ!」とのお声も頂きましたし、「ブログだと読みにくい」との意見も。確かに最初に想定していた量より多くはなってしまって、長編小説くらいの分量となっています。また書いている間はWordなどのワープロソフトを利用しているのですが、ブログに転載すると文字が揃わないということはどうしても出てきてしまいました。また掲載するにあたって一話一話の区切りを明確にすることで飽きてしまわないようにと心掛けたのですが、そのことが以前に触れた箇所、伏線のようなもの(そこまで明確なものはこのときには使いませんでした)、全体の流れを把握しにくくもしてしまったようです。読んでくれた人の中にはわざわざ文章をワープロソフトに転載して縦書きにしてから読まれた方もいるようで。許可を貰えるかとの問い合わせもいただきましたが、どこかで本にしたり自分のものとして公開しない限りは自由に使ってくれればと思います。ただ手間をかけさせてしまったなぁと。

そうした前回の経験から、では短編小説ならどうだろうかと構想を練り、その準備を現在進めています。
ただ『絶体零度』とかなり雰囲気が変わることになりそうです。短編の話ですから登場人物などもそこまで増やすことはできないですし、私もブログで公開するものは習作と考えています。他人様に見せられる水準は保つつもりですが、書くにあたって取材をしたり調べ物をしたりという時間はかなり減っていますし、そうしたところに公開していないものとの歴然たる差を感じることもあります。
具体的にどのようなものになるかですが、各話読み切り(?)という感じではありません。区切りはある程度付けていますが、『絶体零度』のように各回で起承転結を入れて事件性を持たせるということは今回はしないつもりです。これは全体と各話の分量の関係からというのもあります。文章もやや詩的なものになるかと思っています。ストーリーもかなり穏やかなものにしようかと。
タイトルはすでに決まっており、『紅(あか)ひらり』といいます。恋愛もので当初は考えていて、その要素はなくなっていないのですが、その後設定を追加し整理していく中で少し薄れてしまったかもしれません。追加した設定に関しては伏線というより世界観を豊かにするためのものという感じで、ただし他の場所とも繋がってくる。ただし明示はしないかな、と。
更新に関しても『絶体零度』とは大分異なります。先のものは一つ書いて公開し、その後次のものを書くとしていました。今回の『紅ひらり』は全体が有機的に繋がっているので全て書き上げてから、調整を行なって各話公開することとします。この更新間隔や期間についても現在考え中です。自分のスケジュールから公開が止まってしまったら申し訳ないですし、毎日更新(あるいは一日に数回まとめて)というのも読む側の立場からすると大変なのかな、と。
そんなこんなで気付いたら結構難産なものになってしまっていて、未だに頭とお腹を抱えながらストレスでのたうち回っています。ストレスにする前に書いてしまえよとも思っているのですが(苦笑)


さて今回は小説連載の予定をお知らせしました。焦っても良いものはできないでしょうし、焦りにならない程度に私自身急かさせてもらうことにします。
ただ『他人様に見せられる』は絶対の基準としています。ですので私がこれを超えていないと判断した場合には書いた原稿は破り捨てることにします(PCではデータですが、実際にプリントアウトして手で破り捨てるということをこれまでもやってきていました)。もし次回以降が『紅ひらり』ではなかったり、そもそも小説ではなかったりしたら――察してあげてください(涙)
by zattoukoneko | 2012-06-08 06:49 | 雑記 | Comments(1)