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更新が遅くなりました……

今回紹介するのは、
ゲーム『FINAL FANTASY Ⅹ』
です。

何をいまさら、と言われそうなビッグタイトルですが、
今回はちょっと普通とは違った見方をしてみたいと思います。


かなりのネタバレとなってしまいますが、ここでこの作品の骨格を抜き出してみたいと思います。
物語の世界には「シン」と呼ばれる強大なモンスターが存在します。
シンは度々人の街を襲い、築き上げた文明文化を灰燼に帰します。
人々は抵抗を試みるも、通常兵器ではまったく歯が立ちません。
シンを倒せるのは召喚士となった人たちのみ。
その人たちの命の犠牲によってのみ、シンを倒すことができるのです。
……それ以外に方法はないと、宗教によって広く教えられています。

どうでしょうか? 勘のいい人なら「ああ、あのことか」と気づかれたことでしょう。
この世界観、似ていませんか? 9・11テロ事件の構図に。

シンはアメリカという巨大な国家のことです。
それに立ち向かうは、中東諸国の人々です。
召喚士は自爆テロという行為を行う若者たちです。
彼らはそれ以外に自分たちの文化を守る術はないと考えています。
そう教えられているでしょうし、実際普通の方法ではアメリカに対抗できません。

FINAL FANTASY Ⅹはテロを行う側の人間たちが主人公としてライトアップされます。
シンは強大であり、召喚士の犠牲なしには倒せないように思えます。
(物語の半ばから、その犠牲なしに倒そうと他の方法を探しますが……結局見つかったのも、ある人を犠牲にする方法でした)
ゲームのプレイヤーは、物語に引き込まれるにつれ、犠牲を受け入れるしかなくなっていきます。
誰かの犠牲をなくしての物語の終了はないように思えてきます。

いわばFINAL FANTASY Ⅹはテロ行為を正しいものと認めた作品です。
テロを行う側の気持ち、周囲の人々の期待と悲しみ、それらに共感させられる作品となっています。
実際、私たちも共感できるのではないでしょうか?
テロは許されない行為とされています。ですがテロをする側に置かれれば、それ以外に方法はないと思うのではないでしょうか。
もちろん製作スタッフもテロを完全に擁護するつもりではないと思います。
物語にはテロを行う者の周囲の人々の悲しみが描かれていますし、
また物語半ばから犠牲なしの他の方法を探そうとするのも、スタッフのテロへの抵抗を表しています。
それでも結局犠牲を出してしまった。そうして話が終わってしまった。
それはテロには抵抗感を覚えるものの、それをする側の人間の気持ちもわかるんだ、
そういうスタッフの心理を如実に表しているように思われます。


ただ気をつけなければいけないのは、FINAL FANTASY Ⅹの発売は2001年の7月だったということです。
9・11の二ヶ月も前のことでした。
製作はそれよりずっと前から始まっているでしょうし、
ここからスタッフは9・11を直接取り上げたのではない、とわかります。
ただ意識的にか、無意識的にか、とてもタイムリーなテーマを取り上げたのだということになります。

これは私の推測ですが、9・11の事件を受けて、スクウェアのスタッフは焦ったことでしょう。
自分たちの作ったゲームが、現実のものになってしまったのですから。
スタッフは自分たちにできることを考えました。そしてFINAL FANTASY Ⅹ‐2を発売します。

これは当時異例のことでした。FINAL FANTASYシリーズは一作品ごとに物語が完結しているのが通常でした。続編というのは初めてだったのです。
きっと続編への要望も高かったのだと思います。
けれど最終的な決断は、9・11を受けて、改めて自分たちは何を伝えるべきなのか、
それをスタッフが考えたからだと私は思います。

そして実際、Ⅹ‐2ではテロを行おうとする者たちがいる中、それに主人公が反対する。
方法はわからないものの、何か手があるはずだと主張する物語となっています。

私はⅩ‐2はやや蛇足だと思います。
Ⅹの内容をきちんと読み取り、プレイヤーがきちんと考えれば、Ⅹ‐2のテーマは自ずと導かれたと思うからです。
それでもⅩ‐2が発売されたのは、それだけ9・11から受けたスタッフの衝撃が大きかったということなのでしょう。


さて、今回も長くなりました。この辺にしておきましょう。
FINAL FANTASY Ⅹは現代に生きる私たちに重要なテーマを見せてくれています。
テロはいけないこと。そうかもしれません。
でもテロをするのも同じ人間。その気持ちはきっと理解できてしまうのです。
テロはいけない――こう言うだけでは問題は解決しないのかもしれません。
Ⅹ‐2で述べられたように、「何かわからないけど他の方法」を探さないといけないかもしれません。
それを模索していくのが、現代の私たちの課題ともいえるでしょう。

ということでFINAL FANTASY Ⅹ、やっていない人はぜひやってみてください。
上で語ったテーマを抜いてもいいお話です。
やったことあるよ、って人は、「ときどきでいいから思い出してみてください」


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by zattoukoneko | 2007-11-20 07:04 | ゲーム | Comments(1)