徒然なる猫日記:作品品評
2010-07-04T10:54:33+09:00
zattoukoneko
本・映像・ゲームの紹介がメイン。でも他のことも扱ってます。
Excite Blog
『甘いくちづけ』山本様への回答
http://zattou.exblog.jp/13547158/
2010-07-04T10:54:30+09:00
2010-07-04T10:54:33+09:00
2010-07-04T10:54:33+09:00
zattoukoneko
作品品評
①の結末について
プロットで述べたようにこの作品では「課題」を与えることができませんでした。ヒロインである橘さんの抱えている病気は相当重いわけですから、それを克服するのに必要なものとなるとそれだけ大きくなります。単純に「これが課題です」と出すだけであれば簡単かもしれませんが、それへの挑戦と成否を描いていくとなるとそれはかなりの分量を食うはずです。(そしてだからこそ長編用でした)
以上の理由から結末はどうやってもバッドエンドになるわけですが、これを2,000字であればぶち壊すこともできたわけですね。まさに「オチ」を入れて一転してギャグで終わらせるのも可能だったかと思います。
ただテーマがかなり重く難しいものである。そしてそれにヒロインの性格・気持ちは大きく影響を受けてつくられています。となるとこれを壊すものはテーマを壊すことになるし、何よりヒロインを“殺してしまう”だろうと。なので「オチ」も「インパクトのある結」も入れず、ヒロインを守ることを最優先にしました。なので応募時のコメントが「オチは何通りか考えたのですが、ヒロインの純心を傷つけてしまいそうで結局特別なオチはつけませんでした。」となっています。
あと結末部分だけではなく全体をもう少し見てみると、今回は起承転結として四つに分けてはいますが、その中にさらに起承転結などは入れていません。結がバッドエンドと決まっていましたし、ヒロインをひたすらかわいく見せる努力をしないとただの我が侭な子になってしまうということで、彼女の気持ちを表すような描写をひたすら入れていった感じです。たとえば――
「でも私、病気なの。そのせいであなたのことをがっかりさせてしまうかもしれない。それでもよかったら付き合って」
なんていうのは、『本当は付き合いたい』という意思の表れですし、
最後に何に乗りたいかと訊くと、橘さんは観覧車がいいと答えた。
というのは、とても順当なデートに憧れを抱いているのを表現したかったとこですね。ロマンチックなものに憧憬を抱いているとなるとやっぱり最後は観覧車だろうと。
(ちなみにここ「最後」≒「最期」なのですよねえ。主人公が死ぬための後押ししてあげちゃってます。この後の観覧車の中での描写もそういう意味です)
という感じで、この辺りはひたすら描写に力を入れることを優先してます。なので他作品と比べると構成の面ではかなり落ちています。(これは③の回答にもなりますかね。カラーの説明はしてますから)
②の設定について
今回のヒロインの持つ病気に関してですが、これは架空のもので、一応他に似たような病気がないか探してはいますが厳密には決めていません。
ですが「遺伝的なもの」とは確実にしてあって、なのでお姉さんの描写は抜かずに入れてあります。またここはちょっと重要なのですが「遺伝的」ということは何らかの方法でこの病気を持っていても現代まで子孫を残してこれているということでもあります。
ちなみにSFとかで致死率100%のウイルスなんていうのがたまーに出てきて世界中が大恐慌に陥るなんて話がありますが、これ笑い話の何物でもありませんw 仮に致死率100%のウイルスがどこかの町で発生した場合、国の対応はそこを「完全隔離」することです。そこの住民には悪いですが、そこの人たちが全滅すればもうウイルスは宿主を失うので絶滅します。これで解決。世界中が大恐慌に陥るなんてことはあり得ませんww
このウイルスの話と照らし合わせてくれればわかると思いますが、もしヒロインの橘さんの病気が致死率100%だったり、生存競争によって淘汰されるようなものであればなくなっているはずなので、つまりは……何らかの方法で橘さんは救われます。ただ今回は2,000字制限ですし、こんな生物学の話を詳しくしていたらとてもではないですが収まるわけがないので破棄せざるをえませんでした。それと同時に「課題」の提示もできなくなったという流れです。
キャラの設定に関してですが、橘さんのほうは細かく設定してあります。これはテーマからしてこの子がメインだから。一方で主人公の方はこのヒロインの橘さんに付随するものとしてつくられています。ようは橘さんのためだけに存在していたキャラで、なので彼は橘さんに“死ぬ方向でしか”影響を与えることができません。本来なら二人のキャラを並べてお互いに影響を与え合うようにしながら「人として生み出す」ように心がけているのですが、今回はそれをしていないので“薄っぺらい”キャラだと私は思っています。彼にある厚みは橘さん分しかありません。
まあ、リライトする気も少し出てきましたし、「課題」に関してもちょっとアイデアが出てきたので少し考えを進めてみましょうか。
あとは余談のとこですが、私の提出は4月28日となってます。穴埋めも先に述べたようにすぐに決まってしまったので、早いほうだったのではないでしょうか?
その後新しい作品を書こうと締め切りぎりぎりまで考えていましたが、テーマが気に入っていたせいか、それ以上のものを結局出せませんでした。
以上で回答になったと思うのですが、どうでしょうか?]]>
『最初で最後の甘いくちづけ』説明
http://zattou.exblog.jp/13547157/
2010-07-04T10:53:41+09:00
2010-07-04T10:53:44+09:00
2010-07-04T10:53:44+09:00
zattoukoneko
作品品評
これ、第4位でしたね。117票。今でもきちんと数字を覚えています。投票してくれた方、ありがとうございます。改めてこの場を借りてお礼を述べますね。(ちなみに私はアンケートハガキを切り離したくなくて投票してませんw それに投票するとしたら別の方でしたw)
さて、では作品の説明に入りましょうか。
そして投票してくれた方に謝らなければなりませんねえ。
すいません、これ書いたとき大スランプです。まともなもの書けてなかった。応募はしたし、そこそこの票は集まるとは思いましたが、一位は確実に無理だと思いながらメール送信してます。
で、どういう風に話をつくっていったかですが、正直ここ本当にぼろぼろだったのですねぇ。精神的に。本気で筆を折ろうかと考えてたくらい。
まずこれ穴埋めですね。ここを埋めなければ何も始まらないのですが――そもそもこの形式が私一番苦手です。一見自由に埋めていい課題に思えますが、他がすでに決まっているのですよ。これを活かさないとならない。そして編集部の方(メジャーリーグでは投票してくれる読者)の好みや求めているものを提出する、あるいはその予想を超えて仰天させなければならないのです。
ですが、私はこれを埋められなかった。結局○がよっつ並んでいたから、「くちづけ」と入れました。最終的に語感を整えて「甘いくちづけ」にしましたが、口付けなどとなっていないのはその名残です。(一応変えてみて、見た目がよかったという理由もありますが)
この「最初で最後のくちづけ」と入れてしまった瞬間に話が一個思いついてしまいました。
これ、よくない傾向です。普段からそうですが、私は可能な限り案を出して、そこから一番よいと思えるものに着手します。倍率としては10倍ほど。このくらい案を出さないと、本当にそれがよいものかわからないのですよね。でも私は一つに決めちゃったわけです。
で、どうしてそうなってしまったかというと、すでに長編用で簡単に案を練っていた小説がありました。タイトルは『死に至るキス キスに至る病』で、当然キルケゴールの『死に至る病』から来てます。
ちょっとこっちの説明ですが、純愛物ですね。ただしキスをすると死ぬという病気を持った少女が主人公です。話のあらすじは『最初で最後の甘いくちづけ』とほぼ同じです。途中とかきちんと決めていませんが、きちんと何か解決策も用意しようとしてました。
テーマは「負のエントロピーの増加」で、これを知らない方は以前にこれについて書いた記事があるので参考にしてください。負のエントロピー
この記事を見てきてくれたら大体わかると思いますが、ようは「そんな簡単にキスとかしていいもんなの?!」というのを訴えてみようという話です。キスによって死んでしまうという重い病気=負のエントロピーを抱えた女の子が、それでもキスに憧れ、ジレンマに苦しむというお話です。
本文の途中に「絶望……それは死に至る病だ」なんてありますね。これはこの元のタイトルから来てます。ちょっと説得力も持たせないとヒロインの子がわがまますぎる感じにもなると思いましたし。
ところで元々の『死に至るキス キスに至る病』ですが、これがお蔵入りしてたのは、案が思いつかなかったというのもありますが、それ以上に少女向けになりそうだと判断したからですね。仮にこれで受賞してプロになれたとしても、私はその後少女向けの話を書ける気がしませんでしたから。ですので保留としていたわけです。(出すとしたらプロとしてきちんと売れたら、どこかに「一本だけですが」と持ち込もうかと)
とまあ、そのような背景がありましたので、いきなり一つに決まっちゃったわけです。
そして最悪なのは、これ“長編用”なのですね。テーマから考えてどう少なく見積もっても原稿用紙250枚くらい使って丁寧に描いていかないといけないなと考えてました。
案は埋まってないとはいえ、それでも(駄作になるの覚悟でやれば)書けちゃうくらいには決まってたんですよね。これをようは2000字にしろということです。
さてまずやるべきことはプロットの圧縮です。必要最低限のとこしか持ってこれません。
まず始まりの「起」は付き合いはじめることとヒロインの背負っている病気の説明にしないといけない。
「承」ではそれを解決する課題を与えるはず。ですが容量的に入るわけがない。元々長編のために用意してた案ですし、それもうまくいく自信がないところで止まっていましたから。だからこれは破棄するしかなかった。
となると残ってるのはヒロインがキスへの憧れを増していって、最終的にキスをしてしまうという結末しかない。
以上が骨格です。
あとは起承転結としてこの流れをいかに説得的に見せるかの伏線を整えていきます。またヒロインへ感情移入してもらわないと納得してもらえない。そもそもわがままで自分勝手な子に見える可能性が高いので、これを可能な限り回避しないといけない。
したがって書き込んでいったのはこれらです。プロットやキャラクターノートからの指示とかは一切なし。ざっと考えたらあとは実際にどこまでかわいく、そして自然に見せるかの試行錯誤です。また文字数は当然2000なんて軽くオーバーしました(4300とかです。第一稿目は)のでひたすらどこを削って、そして残す、あるいは修正して短くするかの格闘です。
したがってこの作品にはプロットと呼べるほど大したものはないのですね。ただ起承転結を表面に並べて、文字数を調整しただけ。しかもその文字数の調整も失敗してます。見てくれればわかると思いますが、四つのパラグラフで分量バラバラです。
プロットとして説明できるのはこのくらいでしょうか? あとは起承転結に合わせつつ、ヒロインの感情を変えていくような描写をいれていっただけですね。この辺は自分のバランス感覚を信じて、かつ後で調整して書いただけです。
さて、キャラクター設定などです。
ここもぼろぼろですね。もうすでにほとんど入れられないだろうと思ってましたし、書いてみないとわからなかったので穴だらけです。
ヒロイン
名前:橘(たちばな) 名は未定
音が四つのものにすることで、読むペースを落とす目的。かつ一文字の漢字。また後でいいますがカラーがそれなりに近かったので。
一人称:私 文字数が一番の理由。また大人しめの印象も出したかったのでなるとしても「わたし」がぎりぎりかと。
年齢:高校一年生くらいでいいんじゃないだろうかと、そこで放置。
身長:高めを想定。主人公と並んだときに同じくらいの背丈がよかったので。今仮に入れていいと言うのなら168とかにします。
髪:長さは指定なし。色は濃い茶か藍色。これに関してはカラーの設定を参照。
服装:指定なし。入れる余裕はないと判断して破棄。
家族構成:父、母、姉(他界)、ヒロイン
特殊な遺伝的な原因によりキスをすると死ぬいう病気を姉とヒロインは持つ。極度のアレルギーなどを想定していましたが、これは長編の方でも未定。応募作でも未定。
癖など:これは書いていきながら決めていこうかと思っていて特にノートには記載なし。ただ指は長い方が印象的な描写ができるかもしれないと考えていて、それだけ決めてあります。文中に「手」とか「指」と多く出てくるのはこのためですね。
主人公
名前:なし。紹介すると文字数オーバー、かつ話が回転しなくなることが目に見えていたので。
一人称:僕 大人しめ、というか人の話を聞くような印象の呼び方にしたかった。
年齢:ヒロインと同じ。
身長:平均かそれより低めで。ヒロインより少しだけ高い身長を想定。キスをするには10センチの差が一番なんて話を聞いたことがありますが、そこまでの差はないですね。抱きついてきたときとか、ゴンドラで並んだときに少しだけ高ければ問題ない程度でイメージ。
髪・服装・家族:一切指定なし。
性格:恋愛に対してとても純粋。また人をとても大事にする性格。相手の意見にも耳をよく傾ける。ここまではヒロインの行動(必須項目)から決めてきましたが、この背景とかまでは考えていないです。なので薄っぺらいキャラですね。今はもっと大事にしてあげたかったと悔やんでます。
さて最後にカラーの設定。
色は茜色(夕方)から藍・紺(夜)へと推移していく形に。
デートのイベントがありますが、時間の表記がないことやシーンもすぐに切り上げているのはここで昼をイメージさせるのをできるだけ回避するためです。橘(タチバナ)は柑橘系の植物ですね。実の色としては明るすぎるのですが、絶滅危惧種に指定されてたと思います。そんなこともあって採用です。
カラーの推移は死のイメージです。課題を設定させられなかった以上、ヒロインの女の子は死にます。これは避けようがなかったのでどうしようもなかった。
という感じです。
この話、バッドエンドなんですよね。せいぜい女の子がかわいく見えるかどうかという、それだけの話。
んー、説明しててちょっと後悔してきたかも。かわいそうすぎますね。
一回世に出しちゃったからもう破棄しようかと思ってましたけど、彼女たちを救ってあげたいですね。もう一度長編を前提として保留にして取っておきましょうかねえ。
――と自己嫌悪に陥っておしまいです。助けてあげたら私も救われるのかなあ?]]>
『甘いくちづけ』への質問リスト
http://zattou.exblog.jp/13529098/
2010-06-30T08:35:00+09:00
2010-06-30T09:12:34+09:00
2010-06-30T08:36:01+09:00
zattoukoneko
作品品評
なお今回も参加希望の方は以前に出した意見交換を始めるにあたってを読んでおくよう、お願いします。
以下、山本様からの質問のリストとなります。
***
第1回電撃メジャーリーグで第4位を獲得された『最初で最後の甘いくちづけ』への質問リストです。私の方も長くなってしまいましたので、メールで先に送らせていただきます。
意見交換も今回で最終回ですね。大変、名残惜しいです……。最後の作品についても、前回の意見交換同様に物語の構成・カラーなど小説としての共通の問題と、この小説特有の疑問についての聞いてみようと思います。
①結末について
まず、この小説を読んだときに感じたのは、以前意見交換をした子猫さま作の2つの作品と結末の描き方が違うなと感じました。もちろん、ハッピーエンドではないという点もありますが、「好き好き大好き、だから嫌い」「卒業宣言」の場合、インパクトのある結末を用意されていました。しかし、今回は結末としては、直球ストレートで、話の雰囲気を崩さないような順当な結末だったような気がします。また、子猫さまの作品へのコメントを見ると、「オチは何通りか考えたのですが、ヒロインの純心を傷つけてしまいそうで結局特別なオチはつけませんでした。」とありますので、恐らく別の結末なども用意されていたと思いますので、それらのオチ候補の中からなぜこの結末を選ばれたのか教えて下さい。
また、この作品はオチで魅せる作品では無いと思っています。これも子猫さまがのテーマである「心の葛藤」を表現した作品かと。上の結末を選ばれた理由と重なる部分があるかもしれませんが、この作品で描きたかったことについて教えていただければと思います。
②設定について
今回の小説は、キスをされると死んでしまう女の子の話です。子猫さまの小説の場合、緻密に世界観を設定されており、小説に現れるのはその中での必要な部分となっているような気がします。そして、設定の部分には、科学的な裏打ちが必ずといっていい程、されています。そんな中気になったのは、今回のキスをされると死んでしまう病気ですが、これはどのような設定をされていたのでしょうか?(ウイルス、もっと精神的な何かでしょうか?)
また、それと併せて、主人公、橘さんの設定、世界観についても教えていただければと思います。
③小説の構成とカラーについて
今回の小説についても、起承転結が整っていると思います。(恐らく、行間が空いている部分で区切られると考えていいですよね?)小説の構成は私にとって大きな課題ですので、今後の勉強のためにも、各部分の分け方とそこに何を詰め込んだのか教えていただければと思います。
また、カラーについてですが、今回の小説も「卒業宣言」と同じく「死」が取り扱われているので単純に「黒・白」を連想してしまいますが、実際はそのようにはなっていないと思います。ここの解説もいただけたら嬉しいです。
以上が、山本からの質問となります。
余談ですが、お題の「最初で最後の○○○○」は思った以上に難しかったです。子猫さま今回のお題を頂いてすぐに閃きましたか?(私は締め切りギリギリまで考えていましたw)]]>
第1回電撃メジャーリーグ応募作品『最初で最後の甘いくちづけ』
http://zattou.exblog.jp/13529095/
2010-06-30T08:34:40+09:00
2010-06-30T08:34:45+09:00
2010-06-30T08:34:45+09:00
zattoukoneko
作品品評
電撃メジャーリーグ(当時は「グランドチャンピオン大会(仮)」となってましたね。懐かしいw)とは大体1年間の電撃リトルリーグ受賞者に参加依頼が来て、2,000字の掌編作品を応募。読者投票によって順位を決めるというものです。
(ちなみに現在第2回が開催中ですが、第1回は電撃文庫MAGAZINEのプロローグ1.と2.も含まれてるので、全16作品集まるという大激戦でしたw)
以下、お題と私のコメントを掲載しておきます。
課題:タイトルを『最初で最後の○○○○』とすること(○の部分は文字数フリーで穴埋め)
タイトル:最初で最後の甘いくちづけ(2,000字)
コメント:オチは何通りか考えたのですが、ヒロインの純心を傷つけてしまいそうで結局特別なオチはつけませんでした。(50字) ← メジャーリーグのときは文字数が「50字程度」と増えます。
***
その日、僕は橘さんに告白をした。
夕暮れ時。茜色に染まった地面に二人分の影が長く伸びている。
告白を受けた橘さんは、夕陽に負けないほど頬を朱に染めた。
「ありがとう。私もあなたのことがずっと好きだった」
橘さんは嬉しそうにそう言った後、しかしすぐに表情を曇らせた。
「でも私、病気なの。そのせいであなたのことをがっかりさせてしまうかもしれない。それでもよかったら付き合って」
彼女は真っ直ぐな瞳を僕に向けると、苦しそうに言葉を搾り出した。
「私、キスができない。キスをすると死んでしまうの」
そんな病気聞いたことない。でも彼女のお姉さんは、赤ん坊の頃に両親からのキスを受けて亡くなってしまったそうだ。そしてその後生まれた橘さんにも同じ病気があることがわかった。
キスができない――僕はそんなの構わなかった。僕は純粋に橘さんのことが好きになって告白したのだから。
それを聞くと橘さんは安堵の表情を浮かべた。
「嬉しい。これからよろしくね」
そう言葉を返す橘さんの顔には、どこか憂いが潜んでいるように見えた。
初めてのデートは遊園地に行くことになった。
待ち合わせ場所の駅前に着くと、橘さんはすでに待っていた。
橘さんが微笑んで言う。
「早いね」
そう言う橘さんの方が僕より早いではないか。
そう指摘すると橘さんはくすくすと笑った。「そうだね」なんて言いながら。
橘さんは一通り笑い終えると、片手を僕の方に差し伸べてきた。
「キスはできないけど手を繋ぐことはできるから」
僕は喜んでその手に自分の手を重ねた。その手は遊園地に着くまで離れることはなかった。
遊園地では色々な乗り物に乗った。ジェットコースターはもちろん、コーヒーカップにもメリーゴーラウンドにも乗った。
そうして色々なアトラクションを楽しんでいるうちにすぐに陽は暮れてしまった。最後に何に乗りたいかと訊くと、橘さんは観覧車がいいと答えた。
ゴンドラの中から見る夜景は本当に綺麗だった。向かいの席に座る橘さんが、目を輝かせながら外を眺めていた。
その橘さんが、ゴンドラが頂上に辿りついたところでつぶやいた。
「……本当だったらここでキスとかするのかな」
だけどキスはできない。どうやら橘さんは自分の病気があるせいで、余計にキスに憧れがあるようだった。
僕は席を立ち、橘さんの隣に座った。そして肩に手を回す。
橘さんは驚いて僕の顔を見る。そして一瞬物欲しげな顔をしてすぐに諦めた表情になった。ゆっくりと頭を僕の胸に預けてくる。
そうやって二人寄りそったまま観覧車は一周を終えた。
別れのとき、駅前で橘さんは急に僕の方に振り返った。
「好き」
そしてそのまま僕の胸の中に飛び込んでくる。
橘さんは言葉を続ける。
「好き、好き、大好き」
僕の背中に手を回してくる橘さん。僕もそれに応えて彼女の体を腕で包む。
橘さんの言葉は止まらない。
「大好き、大好き、大好き」
異変に気付いたのはそのときだった。僕の背中に回された橘さんの指に、異様に力が入ってきたのだ。すぐにそれは痛みを感じるほどに。
「好き、好き、好き!」
橘さんがばっと顔を上げる。
彼女は、泣いていた。
「好きなのにどうして!」
橘さんが悲鳴を上げる。
「こんなに好きなのに、どうしてキスすらできないの!」
そう叫ぶと再び僕の胸に顔を埋めてわんわんと泣き声を上げ始めた。
橘さんのキスへの憧れは僕が思うよりずっと強いのだろう。キスができないということが、彼女をずっと苦しめてきたのだと思う。
僕は何もできないまま、橘さんを抱きしめ続けた。
やがて泣き声は止まった。橘さんは胸から顔を上げた。言う。
「ねえ、キスして」
僕はその申し出を断った。キスしたら橘さんが死んでしまうではないか。彼女を亡くしてしまうことが、僕には耐えられなかった。
でも橘さんは頑なだった。
「キスができない私に、あなたはいつか愛想をつかしてしまうと思う。そうなるくらいならキスして死んだ方がいい」
そんなことにはならない。キスできなくても僕はずっと橘さんを好きなままでいる。そう伝えたのだが橘さんは首を横に振った。
「あなたなら本当にそうしてくれるかもしれない。でもそれじゃあ私の望む彼氏彼女の関係になれないの。キスができない。その先にあるのは絶望なの」
絶望――それは死に至る病だ。橘さんが考えるに、キスは恋人にとってなくてはならないものなのだろう。キスできなければ本当の彼氏彼女になれない。そう思ってしまっているのだ。
僕は何とか橘さんを説得しようとした。けれど無理だった。
「今日一緒にデートしてわかった。これが私に許された距離なんだって。私はあなたとの距離をもっと縮めたい。そのためにはキスするしかないの」
そう言われてしまっては仕方がない。僕にできることはもう彼女の望みを叶えてあげることだけだった。
橘さんが瞼を閉じ、唇を突き出してくる。それに僕は肩を抱き応えてあげた。
最初で最後のキスは、どこかほんのりと甘い香りがした。]]>
またお邪魔してきますー。
http://zattou.exblog.jp/13515357/
2010-06-27T10:54:04+09:00
2010-06-27T10:54:16+09:00
2010-06-27T10:54:16+09:00
zattoukoneko
作品品評
意見交換はやはり今日一日で終わるでしょうね。お互いに連日で都合があくことなどまずありませんので。ちょっと駆け足過ぎる気もしますが仕方ないですかね。
とかくもう折り返してるんですね。何やらやたらと早かった気がします。そして大変だった……。
が! その分実りも大きい気がします! ということで頑張れ自分、いってらっしゃい自分!!]]>
プロットの初期
http://zattou.exblog.jp/13470060/
2010-06-17T15:53:24+09:00
2010-06-17T15:53:50+09:00
2010-06-17T15:53:50+09:00
zattoukoneko
作品品評
内容は、私が研究発表用にノートに計画をざっと書いていったもの。これは一冊の本を読みながらポイントポイントを押さえていって、繋がる部分を線で結んでいったものです。
(あ、なおここでは「ノートに書いた」と言ってますが、制作技法と「プロット」と「ノート」は別物なので。紛らわしいですねえ。書く場所がばらばらなんですが、見た目は同じものですから……)
発表の計画書と小説のプロットとは違う部分も多いのですが、でも最初は思考はぐちゃぐちゃで、理路整然としているわけではないということはわかるかと思います。
文字も悪筆ですね。思いついたことをどんどん書き込まなくてはならなかったので、速度重視です。最初からまとめようとすると無理矢理になってしまいますので。とりあえず大事だと思ったことを取り上げ、ちょっとだけの整理と繋がりだけ書き込んだもので、「地図」に近いことがわかるかと思います。ここから最後の稿へと整理していきます。
途中である程度の構成は考えながら進めますけど、最初ってこんなものかと。小説も起承転結がプロットの中に入るのは最後の方ですしね。
とりあえずそのときのやつはいつでも出せるようにスキャンしておきました。以下に掲載しますね。
内容は味の素で有名な「池田菊苗の背景について」です。これは一冊のみでのまとめです(ただしいくらか予備知識はあったので、思いついたのはちょっと加えてますから完全な一冊ではないですが)。文字が汚いこともある上に、それなりに専門的な内容なので見ても意味はわからないと思いますが(汗) とかく、最初ってこんなにごちゃごちゃしてるんだってことだけはわかるかと。
(ちなみに山本様のブログへのリンクとか今回入れてないですけど、急ぎで書いたのでそこはご容赦を)
pp. 1-2
pp. 3-4
pp. 5-6
pp. 7-8
それぞれの画像はクリックすると大きくなるかと思います。……字が読めませんが(汗)]]>
山本様への回答②
http://zattou.exblog.jp/13469171/
2010-06-17T11:04:36+09:00
2010-06-17T11:05:01+09:00
2010-06-17T11:05:01+09:00
zattoukoneko
作品品評
今回パラグラフが10個もあって、そうなるとそれぞれは200字前後しか書けなくなるわけですが、実は無謀にもここにさらに起承転結を入れてます(笑) ということなので実は40分割されてます。
…………アホだ、私はorz
まあ短すぎて見えにくいですし、当然のように盛り上がりもほとんどないわけですが(汗) ただこれをやったためにばらつきが出たという感じでしょうか? エピソードやなんかについては先に述べたように適当に入れていっただけで、試行錯誤ですが、当然のことながら収まった後は文字数の調整に入ります。ここからはもう話は動かないわけですよね? なのでただ文字数を合わせるだけであれば思いつくまま削ってしまえばいいわけですが、その中に見えにくいとはいえ起承転結が入っているならそれを壊すわけにはいかなかったのです。それを維持しながら削っていった結果が最終稿となります。
簡単に説明すると、
起:イベントの発生や説明
承:そこで何があったか
転:承を受けての主人公の動き(体だったり心だったりします)
結:転を受けての最後の変化・成長(ここは儚さを重視)
という感じです。
ただし最初の二つのパラグラフは「序」なので始まらないといけません。なのでここは出会いがイベントの代わりですし、「急」のところはそれまでの話を受けての収束部分ですから、その“受け”の部分が起に相当するような形になってます。
他にはイベントの順ですが、一応一年の季節を巡るように考えてますが、学校のイベントって学校ごとに違うだろうし、そうなると人によって感じる印象は変わるかと。直接「春夏秋冬」と入れてみてもよかったのですが、ちょっと直接的過ぎて学校行事というところから離れるかもしれないと思ったのでそこまできちんとはやっていないです。話の流れも大事でしたし。
一応修学旅行のところでは「紅葉」と書いていますし、結局削りましたが球技大会のところでは「入道雲」なんて入ってたりしました。
今思えば削りすぎな気がしますが(汗)
補足するとなるとこんな感じでしょうか?
他に質問・疑問がありましたらよろしくお願いします。]]>
『卒業宣言』プロット②
http://zattou.exblog.jp/13469168/
2010-06-17T11:03:00+09:00
2010-06-17T11:31:21+09:00
2010-06-17T11:04:19+09:00
zattoukoneko
作品品評
どうでもいいですけど、ブログってどんどん上に積み重なるのですよねえ。文章は下に読んでいくのに……。
と愚痴ってみました。一つ目は下にありますので、見てない人はまずはそちらから。
さてプロットについて話をしようと思うのですが、とりあえず受賞時にいただいたコメントを紹介。
すおさとトミ様よりは、結末がやや中途半端(「オチ」と言っていないのに注目ですw)と、トリノミヤツチノスケ様からは全体的に淡々とした印象と、アドバイスをもらってます。
これ、まさにその通りだと思います。そして、それに関しては私もすでにプロットの時点でどうするか考えていたりします。ようはお二人のアドバイスしている部分を改善したものを出すか、私の最終的に出した形で出すか、きちんと考えています。
で、今回幽霊の女の子との話なのですよね。そして「卒業宣言」というお題。この話から私は儚さを一番重視することにしました。一応最後でこれをある程度まで壊すわけですが、完全に壊してしまってはこの穂波という幽霊の子への感情移入が途切れてしまうのではないかと危惧しました。
だから私は「オチ」を使っていませんし、多少「微笑ましい」と思わせるためにやや笑えるようにしましたが、完全なギャグにもしなかったのですね。
これに関してはとても反響が大きかったようです。この続きを希望と何人からもメッセージをもらってます。かなり多くの人が犬代穂波と主人公の関係に感情移入し、それを大事にしてくれたようです。
また全体的に淡々とした印象にしたのも儚さを出すためですね。物語ですからある程度の変化は必要ですが、劇的変化はこの作品の場合合わないと考えました。儚さって脆いので慎重に扱わないと簡単に砕けちゃうんですよね。
(でも編集の方から改めてコメントをもらえると、もっとバランスが取れたのかもしれないと思いますね。ここは難しい気がして、すぐには「これだ!」というアイデアが出てきません)
ともかく儚さを重視しようという考えがまず最初です。
したがってプロットの作成では、「卒業宣言」というお題から、幽霊とほのぼのとしたラストシーンを最初に思い浮かべ、その間を埋める儚さを入れていったものがプロットとなります。
で、儚さを出しつつ、でも大きくはないけれど確実に話のターニングポイントをどう入れるか?
案の一つとしては、全体をゆったりと進めるというものですね。ただこれは読む人を飽きさせる可能性がある。特に話の起伏を減らすとダメですね。でも儚さ重視だと起伏は大きくできない。
案の二つ目としては、エピソードをばら撒く。それぞれをとても短い話にして、話の転換点をごまかす。こっちは読んでて目が痛くなる可能性がある。そうすると読む人の負担ですね。儚さを感じるどころではない。
まあこの二つを私は考えたのですが、最終的に二つ目のエピソードをたくさん入れるほうを採用しました。
でこの採用の理由について。
私は大抵は起承転結で話を分割します。『好き好き大好き、だから嫌い』もそうですし、第1回電撃メジャーリーグに応募した『最初で最後の甘いくちづけ』も四つに分割です。もっと長い話を書くときも大体これで整えますね。プロローグやエピローグが入るくらいですか?(ただしキャラクターが増えた分、裏にあるプロットは多重になってますし、物によっては起承転結だけしか見ないと意味がわからない、なんてのにもチャレンジしてます)
ただ今回はエピソードを増やしたい。四つじゃ全然足りない。
そこで考えたのが、序・序の序・破の破・破の急・急という構成。これで一個エピソードが増えます。またこれに則ればきちんと話も折り返してくれるはず。
で、いくつかイベントを考えていきました。学校行事として自然に思いつくものはほぼ全部出したんじゃないかと思います。30は軽く出したんじゃないかな?
ただそうなるとプロットは5分割なのに、イベント数がはるかに多い。これ、どうしようか考えた末にやったのが、それぞれをさらに二つに分けるという暴挙w
元々2,000字制限です。これ10個にわけると、一つのイベントは200字で収めるしかないww 文庫の5行とかしないのですねえ、これ。これはうまくいくかは賭けです。とりあえずやってみることにしました。
でリストにした学校行事から、儚さを出せるようなものをピックアップ。いくつか入れては外して替えて、ということをやってます。
最初は出会いとキャラの紹介が必要だし、ラストはもう決まってます。なのでここの部分の2~4は固定されている(最終的に話に入り込みやすいように、出会い・紹介&今後、急1・急2と全部埋まってしまいました)。で、残りにどれがいいのか埋めていくという感じです。これ、季節も考えなきゃならないので(ぱっと読んだら一年しか経っていないような錯覚をしてもらいたかったのですね。実際には最初は入学したてという設定で、この文は削りましたが、ようは三年経過しています)、順序はかなり大変でしたね。当然文字制限というのもあります。
ただここはひたすら埋めていくだけ。気にすることは二点のみ。
序・序の序・破の破・破の急・急という大きな構成に従う。
各エピソードのラストに儚さを感じさせる短い文を入れる。
ということだけ。
これ二つを同時進行なので、儚さはゆっくりとですが、大きくなっていくようにしてますね。またラストも「微笑ましい」文にしなければならないと最初に決めてあったので、そこからも二つ目の各エピソードのラストに印象的な文を入れる、という形にしてます。
プロットはこのくらいです。
あとは実際に書いてみて儚さがきちんと出るか確かめていっただけ。書くといっても「頭の中で書いてみる」こともありますし、「実際に文字にして書いてみる」こともあります。ここはもうやるだけなので「プロット」という計画とは呼べないですね。自分の感性と筆力を信じるのみ。プロでない私にそんなこと自信があるわけないのですし、実際試行錯誤してますが、結果として受賞して反響も大きかったから成功したのでしょうね。
(ただし見てくれればわかりますが、各エピソードの長さが揃ってません。これは余裕なかったことがモロバレw 本当にテキトーに書いていって、たまたま2,000になった辺りで語感を調整しておしまいです)
さて、キャラクター設定にいきましょうか。
こっちも手抜きです。大して語ることなどないw
まずはヒロインから。
名前:犬代穂波(いぬしろほなみ)
名前は音が三つで文字は二つが儚さが出るかなと。また「はひふへほ」などは結構儚い印象を出しやすい音なので(息を吐いて出す音ですから)、ここから穂波と決定。漢字はこちらも儚い感じを出すためになびくものをチョイス。(これ、最初のほうで「髪と白装束がなびく」という文に出してますね)
名字の犬代は本来なら主人公が持つはずのもの。「犬」の「代」わりですから。ですが後述するように主人公には名前を与えられないのでこちらに持ってもらいました。
性別:女
一人称:私(文字制限のため)
年齢:死亡時は15歳(高校入学した直後)
身長:特に指定はなし。
ただ主人公と並ぶくらいだと思っていて、地面から浮いているとなると160くらいだろうな、とは思ってました。
服装:白装束
これは死んでいるからというよりは、儚さを表すカラーで選んでます。
髪:腰まで届くくらいの長髪。真っ黒。
長さは風でなびかせるため。髪も細くて軽い。色が黒なのは白装束とのコントラスト、かつ死のカラー。
主人公
名前:指定なし。
文字数とイベントの数から判断して紹介する余裕はないと判断したので決める気なし。
性別:男
一人称:僕 文字数稼ぎでもあり、かつ大人しめの印象にするため(儚さより)
年齢:15→18 こちらは成長しますからね。
身長:165くらい。まあ、背は高くないよなあ、儚さ消えるし。以上。
服装:黒の学ラン(黒なら別にブレザーとかでもいいんですけど、あまり見かけないので)
この黒は穂波との対にしてるだけ。特に深い意味はなし。
髪:指定なし。でも多分黒じゃないですかねえ?
と、これだけ。
前回の『好き好き大好き、だから嫌い』と比べてもらえればわかると思いますが、ほっとんど何も考えてないです。
また今回は話の分割が先だったので、キャラクター設定はほとんど書きながらその場で決めて、後で調整してます。ですのでこの話はキャラクターのノートとかつくってません。
ひたすら思いつきを書いて、上書きして、文字数減らして、そして提出。以上でおしまいです。
という感じなので実はこの作品は手抜きの産物ですw 気に入ってくれた人いっぱいいるけど、申し訳ない。私はこれより『好き好き大好き、だから嫌い』のほうに評価がほしい(苦笑)
構想期間も短いですね。『好き好き大好き、だから嫌い』はお題を見てから様々な話の案を出しては捨て、出しては捨て、を繰り返して一週間後くらいで30ほど出した中の一つを形にしたもの。出来上がるまでさらに一ヶ月とかかかった気がします。(えっと、ファイルの保存日時が2007/05/16 8:35となってますね)
一方で『卒業宣言』は一応いくつか案を出してますが、すぐにこれ一本に決まりましたね。(ファイルの最終保存日時は2008/01/24 4:17です)
まあ、と言いますか……タイトル縛り厳しすぎます、電撃さんorz キーワードのときはいくらでも自由にできましたけど、タイトル固定って望まれてるものをまず読み取って、それを網羅するか、編集部の方が想像もしてなかったようなとんでもないやつ出すかの二択ではないですか……。
ということで、
リトルリーグになってから厳しすぎるよ!
と叫んでおしまいでーす。]]>
『卒業宣言』プロット①
http://zattou.exblog.jp/13469166/
2010-06-17T11:03:00+09:00
2010-06-17T11:03:25+09:00
2010-06-17T11:03:25+09:00
zattoukoneko
作品品評
が、実は前に紹介した第8回の電撃掌編王『好き好き大好き、だから嫌い』よりプロットもキャラ設定も薄っぺらいのです、これ。今回書いたものを前のと見比べたら一目瞭然かと。
まず、この作品は「確実に獲る」と考えて送ったものです。そして実際に受賞しましたね。これある自信があってそう思っていました。(もちろん実際に受賞報告をいただいたときは小躍りしましたがw)
で、実はこれここで流すと見た人は一気に掌編の応募のレベル上げてくるんでしょうねえw それはそれで面白いからばらしちゃいます。私自身がまた戦いたくなるのでww
実は掌編の応募時にくっつけるコメントって結構大事なのです。
もちろん本文が一番大事でしょうが、同レベルで並んだらこのコメントで評価するでしょう? またこのコメントでうまく選考してくれる編集者を“釣って”みせれば、物語本文がもつ魅力以上の評価をもらえたりするのです。
すなわちこのコメントって――『得点つけられるんです』よ。
私がやったのはまさにこれです。編集者の方を“釣り”にいきました。そしてその餌に食いつかせることができるような作品でもあったので、「受賞確実」と思っていました。
これに関して少し詳しく見ていきましょうか。
まずトリノミヤツチノスケ様のコメントを見てくれればよいかと思います。私の「微笑ましいと思えるオチ」というコメントを高く評価してくれていることがわかると。(ここへは転載しませんね。文章書いてるの私ではないですから。電撃様のHPにて確認をお願いします)
次に他の最終選考に残っている方の作品を読んでみてください。青猫様、兔希栄祐様、yuto様と三人いますね。これと私の作品を比べて、コメントを抜きにしてどれを受賞させたいか考えてみてください。
これ、私コメントなかったら他の方が受賞してたと思います。とくに兔希栄祐様はかなりの実力者。後にきちんと受賞していますね。また第1回の電撃メジャーリーグでは第5位にランクインしています。(なお、参加された方の全作品はきちんと読み、その上で順位の予想を立てています。また他の人にも読んでもらって順位予想してもらいました。私自身は自分を4位としました。少なくとも1位では確実にないと思いました。で、まさに私の順位は4位だったのですが――私の予想では兔希栄祐様が私の上に入っていたのです。それだけの実力者だと私は考えています。また他の方も私より上にランク付けしてました。ありがたいことに私のことも1位ではないですが上位にしてくれてましたねえ)
さて、どうせだからオチの話でもちょっとしましょうか。
私自身「微笑ましいと思える“オチ”」と書いていますが、私はこれをオチと考えていません。これは『好き好き大好き、だから嫌い』の方でもそうでした。
オチというのは話の終わりの部分ですが、結とは異なります。オチは物語を「終わらせる」のですね? 一方でただの「(インパクトのある)結」は物語が終わりません。
もっと具体的にいきましょう。一番イメージがつきやすいのは小噺です。最後にいきなりくだらない駄洒落で終わらせたりすることありませんか? それまで語られていた話ですごい聴衆を魅了していたのに、どうしてこんなもの入れるのでしょうか? 興醒めしてしまうとは思いませんか?
実はこれには重要な役割があります。
それまで聴衆は物語の中に「入ってしまって」います。つまり物語世界という非現実世界に迷い込んでいます。これを現実世界に引き戻すのがオチです。つまり「これは物語だからね? きちんと現実に帰ってね?」というのがオチです。ただ(話のテーマにもよりますが)物語を全部忘れられてしまうのももったいないところ。その場合には現実の社会の風刺などを入れると物語世界(非現実世界)と現実世界と比較して、これからどう生活していこうかと考えるきっかけを与えることも可能です。
またこれはハリウッドの映画でも同様な手法が使われています。オチとは当然言いませんがw これに関しては以前『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を取り上げて、ハリウッド映画のシナリオの構成というのを紹介しています。日本のように起承転結や序破急ではなく、スリーアクト・ストラクチャーと呼ばれるものを用いています。知らない方はまずそちらの記事を。ハリウッド映画のシナリオ構造
で、ここにアクト1・アクト2・アクト3の図がありますが、最後にちょろとだけ伸びていると思います。ここがオチに近い役割を果たします。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』では最後に未来に行ってきたらしいドクがマーティに会いにくるのですよね? これは(どうやら次回作の予告と受け取られてしまったらしいですがw)オマケのエピソードで、ここでそれまでの物語とはほとんど関係のない話をして観客に余韻を味わってもらいながら劇場から「帰って」もらうために挿入されています。
これらのオチ(と総称してしまいますが)と「インパクトの大きい結」はまったくの別物です。
「インパクトの大きい結」はむしろ物語の世界へ見る人を引き込んでしまいます。ようは物語世界から帰れなくなる。よく感動的な映画を寝る前に観て、それがなかなか頭から離れないで眠れないなんて経験をするかと思います。これは大体はこの「インパクトの大きい結」が最後だからです。あるいは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のように観客が続きがあると“誤解”してしまう場合ですね。ストーリーの展開から見てどう考えても終わっているのに、そこを誤読する人によって続編希望が出ることがままあります。これはこれで作り手としては嬉しいことでしょうが、戸惑いもあるでしょうね。(なおこれに関しては、『クレヨン王国 月のたまご』紹介というので触れています)
したがって、作り手は現実に引き戻させる「オチ」を入れるのか、物語世界に長く浸ってほしいと考えて「インパクトの大きい結」を入れるのか、それを意識しなければなりません。ちなみにまだ紹介できていないのですが、あかほりさとる著『セイバーマリオネットJ』という作品で見事に「オチ」を入れています。長編になればなるほどオチをつけるのは難しいはずなのですが、あかほりさとるは明確に意図してこれをやってますね。これを読んだときに身震いしたのを未だに忘れられません。
なお私はこのオチと「インパクトの大きい結」を知っています。完璧に使いこなせるかと問われると自信がありませんが、意識はしてます。
で、私はオチのないこの『卒業宣言』に「オチを入れました」とコメントしているのですね? これは第8回の電撃掌編王で受賞したときに、なおちゃん様が「オチ」ではなく「最後の一行のインパクト」とコメントしてくれているのですよね。これをもらったときに「電撃の編集部様、少なくともこの人は確実にオチが何なのか知っている」と思ったから。今でこそ「掌編なのでオチを」とHPや雑誌の方で言っていますが、おそらく読む側はこれを知ってると思いますね。ですので私はそれに乗っかって「微笑ましいと思えるオチを」と安心して入れさせてもらいました。あとは編集者様のほうで判断してくれるはずですから。
というのが私のコメントがああいう形になっている理由です。
――と、予備知識が長くなってしまいました(苦笑) コメントの説明しかしてないw
ここのブログ記事の掲載できる文字数の都合上、ここでいったん区切ります。キャラとプロットに関してはまとめて紹介しようと思うので、ここが一番切りがいいでしょう。
ということで連投します。]]>
山本様への回答①
http://zattou.exblog.jp/13469162/
2010-06-17T11:02:04+09:00
2010-06-17T11:02:29+09:00
2010-06-17T11:02:29+09:00
zattoukoneko
作品品評
「序、破の序、破の破、破の急、急」の構成に関してですが、受賞時に出したコメントに書いてある通り、「×2」しているので、単純に2個ずつ数えてもらえればいいかなと思います。
ただこれは山本様もわからなくて仕方ないかなと思います。『好き好き大好き、だから嫌い』でもそうでしたが、かなり無理矢理「起承転結」を入れていて、また今回は後で見せるように“ある程度”の意識しかしてないということになります。
「起承転結」や「序破急」というのは明確な意味があってつくられているもので、ただただ事件の発生やストーリーの盛り上がりを入れればいいというものではなかったりします。もちろんこれを必ず守らないといけないというわけではないですし、そればっかりやっていては似たような話しか世に出なくなってしまいます。ただこれまでの歴史(物語というのがいつできたか知りません。神話だって物語といえるだろうし、口頭で何かを伝える事だって「物語り」なので、相当な長さになることは必至)を考えるとそれが成立してきたのにはやはりきちんとした理由があると考えた方がいいかと。それを踏まえた上でそれをどう壊すかが課題な気がします。私としてはどんな天才(Giftの方)であろうと無から新しいものを創造するのはできないであろうと感じますし、仮にできたとしても世に受け入れられないのではないかと。
…………何やら哲学っぽい話に?
まー、いいかー。このペースで行っちゃうべし。(←この時点で本当は切り替えられると思われ)
起承転結や序破急の話はざっとこっちでしてますね。ハリウッド映画のシナリオ構造
これを見てきてくれればわかるように、私の掌編は一応これを踏まえつつ、でも崩さざるを得ない感じのものになっています。最初にキャラの紹介くらいはしてますが、「課題」はきちんと与えられていないですし、そうなれば転での盛り上がりも少ないですよね。
話は『卒業宣言』に戻りますが、こちらは「序、破の序、破の破、破の急、急」を使ってます。これなかなかに説明が難しいのですが、簡略化すると破の中に序破急が入ってる、入れ子式みたいなものです。破って時間的に長いのでここでまた話に盛り上がりを作っているのだと思ってくれればいいかと。
なお五段構成としては、起承鋪叙結なんてものもあります。中国の散文なんかで使われているようですが、「序、破の序、破の破、破の急、急」とそんなに変わらないですし、日本人としては馴染みが薄いような気がします。ハリウッドのスリーアクトストラクチャーなんてのは(やりたいことは同じですが)かなり日本の手法と違うので取り入れてみたいところですが、起承鋪叙結はどこまで価値があるのか私にはよくわからない感じです。ハリウッドの映画は結構見られてるから、うまくやれば小説に落として受け入れられる気もしますけど、中国の散文なんて読む人は少数派でしょうから。(が、その分もしかしたら意外な穴という可能性もありますけどね)
ただ2,000字という短さだと(他の作品もそうですが)うまく入らないのですよね。一応可能らしいということはわかってきましたが、これと同時に最後のインパクトを考えなければならないとなるとなかなかに難しいですね。綺麗に入れすぎるとまさに“綺麗に”話が終わってしまうので、掌編の特性が活かせてない気がします。掌編は掌編と考えて別個のものとすべきなのか、やはり同じ物語としておきつつその上で掌編を書くかではないかなあと。
…………実は長編書くより掌編の方が圧倒的に難しいんじゃないですかね? 私も毎回泣きながら書いてますし(汗)
あと、全体の分量についてですが、これは実はほっとんど適当です。これはプロットなどを見せればわかるかと。カラーも決めてあるのでそちらも書きますね。
それとオチに関しても。私自身「微笑ましいオチ」と書いているわけですが、実は全然オチだと思ってません。じゃあ、なんでそんなこと書いたのか?、ということも含めて説明しますね。]]>
『卒業宣言』に対する質問
http://zattou.exblog.jp/13464785/
2010-06-16T12:20:08+09:00
2010-06-16T12:20:21+09:00
2010-06-16T12:20:21+09:00
zattoukoneko
作品品評
また今回はさらにお互いに無理して日程調整をしました。小説の転載とこのリストの掲載が立て続けになっていますが、ご容赦ください。
なお今回も参加希望の方は以前に出した意見交換を始めるにあたってを読んでおくよう、お願いします。
以下、山本様からの質問のリストとなります。
***
質問リスト
①掌編の構成
今回の掌編の構成も、起承転結などの各要素ごとにスペースで区切っていると考えます。
前回の意見交換 で10の部分に分けられたという子猫さまのコメントをいただけたので、その数と一致します。なお、受賞時のコメント(第2回電撃リトルリーグのHP参照)を見ると「序、破の序、破の破、破の急、急」という五段構成にチャレンジしました、となっていました。私の分類では、序が第1節、破の序が第2節、破の破が第3~6節、そして破の急が第7節、残り第8~10節が急かと。。
そこで、いつもの起承転結の4段構成から今回の5段構成にとしたいきさつや、今回の掌編の序破急の構成の解説をいただければと思います。
また、各序破急のバランスについてですが、第3~6節(学校行事を主人公が穂波に説明する部分)についてですが比較的、長めにとられているような気がします。もちろん、主人公が穂波との関係をゆっくり熟成させることを表現するためには、この部分が短すぎてもいけないような気もしますが・・・・・・。この第3~6節の分量と全体のバランスについてどのように考えたのかお聞かせ下さい。
②オチについて
前回保留されていた、オチに関する質問です。今回の小説では、第8~10節がオチの部分にあたると考えます(オチの定義を私自身誤っているかもしれませんが)。この掌編の場合、第9節で止めていても話として十分に成立します。この場合「驚き」の感情を読者が持ったまま物語が終了するのですが。①の小説の構成と関係するするかもしれませんが、最後の一節は掌編の構成上では、イレギュラーのような気がします。この最後の一節はどのようなことを意図して作られたのか教えていただければと思います。ちなみに、私はこの一節がかなり好きです♪この最後の一節で、穂波の可愛らしさが倍増したように感じたし、読み終わった後の印象が微笑ましいものに変化したような気がします。
また、今回の掌編でもキャラクター設定、プロットがあれば教えていただければと思います。カラー(『好き好き大好き、だから嫌い』であれば黄色を基調としていた)の利用は、私には無かった考え方なので勉強になります。ここでも利用されているのであれば、教えて下さい。
以上]]>
第2回電撃リトルリーグ受賞作品
http://zattou.exblog.jp/13464778/
2010-06-16T12:18:43+09:00
2010-06-16T12:18:53+09:00
2010-06-16T12:18:53+09:00
zattoukoneko
作品品評
掌編王からリトルリーグに変わって、お題の出し方がキーワードからタイトル縛りへと変わりました。これは現在でも継続中。
第2回は、タイトルを『卒業宣言』とすること、でした。ただしサブタイトルはつけてもよいとのこと。私はつけていませんが。(と言いますか、最初はサブタイトルをつけてもいいと書いてなかった気が……)
文字数は掌編王のときのまま2,000字以内です。
以下に改めて課題とタイトル、応募時のコメントを記載します。
課題:タイトルを『卒業宣言』とすること
タイトル:卒業宣言(2,000字)
コメント:場面を想像したとき微笑ましいと思えるオチを目指してみました。(30字)
***
屋上に出たとき、僕はその少女を見つけた。少女はフェンスの向こう側に立ち、今にも飛び降りそうに思えた。
でも少女は飛び降りなかった。ただそこに佇んでいた。長い髪の毛が着ている白装束と一緒になびく。少女には足がなかった。
代わりに胸から鎖が伸び、フェンスに犬の首輪のようなもので繋がれていた。
少女は僕に言った。
「私、地縛霊なの」
少女は名前を犬代穂波といった。
僕は気が向くと穂波に会いに行くようになった。穂波はいつでもフェンスの向こう側にいた。
「入学したての頃、私はここから落ちてしまったの。フェンスが朽ちてたのね」
そうして穂波は寂しそうに笑った。彼女はどうして地縛霊になってしまったのだろう。答えは彼女自身が知っていた。
「きっと学校生活に未練があるのだと思う。これから始まる高校生活、楽しみにしてたもの」
だから僕は自分の高校生活を語って聞かせようと思った。
文化祭の日には僕は色々なところを回って感想を穂波に話して聞かせた。穂波はその一つ一つにうなずき、笑って返してくれた。
でも一度だけ穂波が寂しそうな顔を見せたときがあった。それは2‐Bのたこ焼き屋について語ったときだった。
僕はできるだけ多くのところを回ろうとしていたから、熱々のたこ焼きを急いで頬張った。その結果ヤケドしてしまったのだ。その失敗談を笑い話として聞かせていた僕は、穂波が顔を曇らせたのに気付いた。
穂波は言った。
「ヤケドなんて痛い感覚、忘れちゃったな」
どうやら幽霊は痛みとか色んな感覚を忘れてしまうみたいだった。
球技大会では僕は野球に参加した。バスケとかサッカーとか他にも種目はあったけど、穂波から見えるのは野球しかなかった。
試合後に屋上を訪れた僕を、穂波は笑顔で出迎えてくれた。
「すごかったね。見てたよ、ホームラン打ったの」
そして白球が自分の目の高さまで上がったのだと嬉々として話してくれた。
その様子は普通の同い年の女の子の姿で、彼女が死んでいるなんて僕には到底信じられなかった。
修学旅行に行ってきた。穂波にしばらく会えなくなるのは寂しかったけど、その分たくさんの土産話を持って帰ってきた。
旅行先の京都は紅葉が綺麗で、それを伝えると穂波はうっとりとした表情でその様を想像していた。
でもその後寂しそうな顔をしたんだ。
「いいな。私も一緒に行けたらいいのに」
その彼女の言葉を聞きながら、僕も彼女と一緒に行けたらよかったのにと思っていた。
体育祭のとき僕はレース中に転んで膝を擦りむいてしまった。競技後屋上を訪れると、穂波は心配そうな顔をしてくれた。
傷口を見ながら彼女が言う。
「痛そう」
口にしてから穂波ははっとした顔をした。
「痛そう、なんて幽霊の私が言うの変だよね。痛みのことなんか忘れちゃってるのに」
そう、寂しそうに笑う。
でも僕は変じゃないと思った。穂波は僕の話で色々なことを経験してるんだ。痛みを思い出してもおかしくない。
そのことを伝えると穂波は難しそうな顔をした。
「そっかな。私も色んなこと経験できてるのかな?」
きっとそうだ。僕は自信を持ってうなずいた。
今日は卒業式だった。僕の、卒業式だった。
僕がクラスの女子が泣いていたことを話すと、穂波は「私も卒業したら泣くのかな」と言った。
僕は泣かなかった。でも今まさに泣きそうだった。
僕はもうここの生徒ではなくなる。穂波とはもう会えなくなる。
穂波はどうするんだろう。せっかく僕を通じて高校生活を経験できていたのに。また一人で屋上に佇む日々に戻ってしまうのだろうか。
その様を想像するといてもたってもいられなくなった。僕はそのことを問い詰めていた。
「私は……」
穂波はしばしうつむいた後、顔を上げた。その顔はある決意に満ちていた。
「うん、私も卒業しよう」
穂波が卒業する――つまりこの屋上の地縛霊ではなくなるということだ。それはきっと成仏することを意味する。
穂波の体が輝き出す。もう行くのだ。
「今までありがとう。色んな話を聞かせてくれて」
穂波が最後に礼を言った。僕はあえてさよならを言わなかった。何十年後かはわからない。でもあの世できっと僕たちは再会するから。
穂波の体からの光が増す。僕は眩しくて瞼を閉じた。
瞼を開けたとき、目の前には穂波が浮いていた。訳がわからない僕に彼女はにこやかに言った。
「あなたといると色々なことが経験できそう。今度は高校の先のことが知りたいな」
穂波の胸から出ている鎖は、今は屋上のフェンスではなく僕自身に繋がっていた。穂波は僕に憑いたらしい。
どうやらまだまだ僕と穂波の関係は続きそうだ。
……それはいいのだけれど、一つだけわからないことがあった。鎖の先の輪っかが問題だった。
そのことを口にすると、穂波は笑顔で言った。
「そこが付けるのにちょうどよかったから」
彼女は僕のことを何か勘違いしてるんじゃないだろうか。そんな疑念が一瞬頭に浮かぶ。
輪っかはペットよろしく僕の首へと取り付けられていた。]]>
山本様への回答
http://zattou.exblog.jp/13449654/
2010-06-13T11:33:00+09:00
2010-06-13T12:20:28+09:00
2010-06-13T11:33:24+09:00
zattoukoneko
作品品評
まず①に関してですが、山本様の『最初で最後の経済小説』で説明したように、私は大きく四つに分けて起承転結。これをさらに起承転結に分けます。(これ、入れ子方式とか呼ぶらしいですねえ。私は乙一の死にぞこないの青 (幻冬舎文庫)とかを読んでプロットに解体して独学で勉強したのに……)
ただプロットの最初では大まかな話の筋しかつくりません。ある程度どこに思いついたアイデアやシーンを配置するのがいいかは考えますし、ここでいくらか起承転結は意識しますが、それは大雑把なものですね。起承転結を明確に意識するのはプロットがほぼ完成してアウトラインやあらすじを書ける段階になってからです。ここで調整を始めます。
また掌編なのでこの分量を計るのは簡単ですが(と言いつつ泣きながらやってますが)、長編とかだといくらか分量がずれますね。これは書いているときに軌道修正が必要になる回数が増えるから。
ただ私は電撃hp短編小説賞に応募することを考えて原稿用紙換算で70枚換算で練習したので(すぐになくなって応募できませんでしたが(汗))、ほとんどぴったりこの枚数を狙っていけます。この中ですでに起承転結ができるので、後はこれを四つ積み重ねていくだけです。
ただし長編の場合、プロットは掌編のやつの数倍複雑化させます。
『好き好き大好き、だから嫌い』は根幹にあるプロットは湊のものだけです。彼女に三つ話がある。
が、長編ではキャラクターが増えます。またこれは私がぜひ試みたいと思っていることなのですが、漫画やアニメは主人公以外のキャラクターにも平気でスポットを当てに行きますよね? が、小説では混乱するためにこれをやるのは厳禁とされてます(と言われてるのに上遠野浩平のブギーポップは笑わない (電撃文庫 (0231))はキャラ変わりまくりですけどねw)。私としてはこの漫画やアニメのやっていることを小説に持ち込みたいと考えています。これは個人的な思いですが、一つの物語の中で成長するのは「主人公だけのはずがない」だろうと。実際にはみんなで影響しあって、そしてみんなで成長していくのが自然だろうと。これをうまく表現するのには、一人だけに焦点を絞っていては無理があるのではないかと考えています(ただし視点を切り替えすぎると読みにくくなるので、ここはバランスとらないといけないのですが)。
ということで長編の場合は一人のキャラに複数のプロット。さらにメインキャラ全員に同じだけのプロット。またサブキャラにも簡単なプロットがあったりします。(完璧な脇役にはさすがにないですが)
で、これを同時進行しながら表面上のプロットを作りますが、(私は大馬鹿者なのでw)この表面のプロットですら一枚じゃないです。簡単に言うと主人公とその相手(ヒロインなど)で二つが大きく前面に出ます。またサブキャラの役割が大きかったり話に絡んでくるときはハリウッドのシナリオライティング術で使われている、サブシナリオとか入れたりします。ハリウッドのシナリオの作り方についてはこれを参照のこと。ハリウッド映画のシナリオ構造
というわけで私の長編のプロットはとんでもないことになっているというw これ均すの大変ですねえ。何度か手を抜いて見やすくしたのを書いたことがありますが、自分のテーマややりたいことがうまく伝えきれてない気がしました。これ、今後どう解決するか悩み中。
で次は③について。長編繋がりで説明しやすいので。
『好き好き大好き、だから嫌い』のキャラは説明したとおりです。掌編ではメイン一人につきノートに一ページです。(ただこの後紹介する他作品は減っていきますが)
長編も書くのはノートに一ページです。というのは主人公(男とします)とヒロインが横に並ぶので比較しやすいのですよね。可能であれば対にしたり、あるいは共通点を見つけたいので。(ここ、ノートを横断して線を引けばわかりやすくなります)
なのですが……掌編ですらあの量ですから、当然のように一ページでは収まらないという(汗) また私の場合は世界観をかなり厳密につくります(伏線の話でもう一度触れます)。そうするとそこからさらにキャラクターに影響を与えてノートにさらに追加したりします。プロットからの指定も出てきますね。なので気付くとノートがぎっしりに&書ききれなくなって他のページに飛んだりします。
それと書き始めは一冊で完結するように心がけてますし、実際にそう書いてますが、世界観の考証などをしていくととてつもない量になってますね。とてもではないですが一冊では全部書ききれないので、省略しまくります。ただ肝心の一冊目が出ないことにはその続きなど書けるわけないので(習作なら別ですが)、途中で止めてますね。本にすると10冊分くらいまで書けるようなところになるんでしょうか? 穴があるので実際にどうなるかわかりませんが、大体の流れとか、そこから出てくるテーマとかは見えている感じです。
最後に②について。
プロットで説明したように今回のは「オチ」ではないです。これは電撃編集者のなおちゃん様のコメントからも間接的にわかるかと。「最後の一行のインパクト」とコメントをくれているのですよね?
私はここから色々考えることがあって、次の『卒業宣言』でこれを利用して第2回のリトルリーグを受賞させてもらいました。なのでオチの話はそっちの説明のときにした方がいいでしょうね。
ちなみに……電撃様のHPで確認できる電撃掌編王とリトルリーグの最終選考に残った作品すべてで確実にオチと呼べると思ったものをカウントしておきました。第1回のメジャーリーグはすぐ取り出せるところに掲載されている雑誌があったので全部数えてます(ただし第2回のメジャーリーグは入れてません。これ書いている時点でまだ公開されていないので)。で、その結果ですが――
全109作品中、オチがあるのは11作品
でした。これはもちろん私の判断ですけど。大体10%ってとこなんですかねえ? でもこれでも甘めにつけたつもり。他のプロ作家の(掌編)小説とかも読んでますけど、実際の割合はもっと下。プロですらそれなので読者投稿で本気でカウントするともっと下になるのではないかと。
まあ、この辺りは『卒業宣言』のときにでも説明するので、改めて見直してくれればいいのではないかと思います。
あと伏線のつくりかたですね。
これ、実は私は下手です。全然ダメ。伏線に関しては乙一という方が恐ろしいほどの能力の持ち主です。集英社文庫から出ている夏と花火と私の死体 (集英社文庫)の中に収録されている『優子』がわかりやすいでしょうね、話もさほど長くないですし。ここでは何が伏線か言いませんが、私はあのレベルで書く自信がないですね。一応目指してはいますが。
ただ私はさっきも言ったように「世界設定が膨大」です。なのでこれを利用してやろうと思ってますね。またここからキャラにも影響が出ているので、こちらから伏線を出すこともあります。世界観とキャラ設定をストーリーといかに絡ませるかが、私のテーマややりたいことに繋がると思うので、ただ後でびっくりさせるだけの伏線、というのは多用しません。
ということで伏線に関してまとめると――
私は世界観やキャラクター設定から伏線を生み出します。そしてストーリーと絡めていく手法をとっています。これは乙一なんかがやっているものと違って、「え、あれ伏線だったの?!!」という驚きは相当に減ります。これは自分の書きたいものによって変わるのではないかと。私はただただ読み手を驚かせてそれで本を閉じさせていわけではなく、キャラクターのことやその物語世界に想いを馳せてほしいので上記のような伏線(というか話の展開)を使用しています。(なお乙一という作家がただ驚かせるだけの作家だと思ったら大間違いなので注意。これ、まだ紹介記事出してなかったorz)
総括でーす。
で、プロットやキャラクター・世界観、そして伏線の作り方ですが、正直行き当たりばったりです。
プロットなどはそれなりにつくりますが、実際に文章にしてみるとキャラクターがうまく動いてくれないことがあります。特に台詞をしゃべらせてみると性格がかなり変わることがありますね。設定で書いていたよりもっと自然な話し方がいいなと感じることが多々。
で、そうやってしゃべらせてみると私の頭の中になかった、でも重要な台詞を言ってくれることがあります。となればそれは新たに伏線となりますので、プロットを修正します。私の場合は書き進めている原稿の先にメモを入れておいて(他にも書いておくのですが、見忘れてしまうことがあるので)、回収したら消していくと。
という感じですので話を書きながらプロットもキャラクターもまた作り直ししてます。一応プロットはかなり細かくつくってあって、話もきちんと転がるかアウトラインやあらすじを書いているので、極端なまでの大幅修正に直面することは稀ですが。
という感じなのですか、回答・参考になりましたかね?]]>
『好き好き大好き、だから嫌い』プロット
http://zattou.exblog.jp/13449650/
2010-06-13T11:32:00+09:00
2010-06-13T12:04:17+09:00
2010-06-13T11:32:05+09:00
zattoukoneko
作品品評
最後のプロットだけ見せるだけなら簡単なのですが、意見交換を重視ということで制作過程の途中のプロットもいくらか公開します。というか多分これ説明しないと意味わからないですね、きっと。
そもそもこの話は元に大きなプロットが三枚重なっています。
一つ目は「一人の世界の崩壊」
二つ目は「初潮」
三つ目は「自分の心の中の探求」
という感じです。これを全部同時進行させて(プロットを重ねて)新しくプロットを書いて調整してます。特にこれだけの分量があると当たり前のように2,000字に収まるわけないですから、エピソードは削りまくってます。本来であれば短編(原稿用紙70枚)程度にはなるはずだし、キャラも追加することを考えると中編から短めの長編くらいにはなるのだと思います。
ということでそれぞれ大元のプロット説明をしなければならないのですが――
これに関してはすでに他の作品の紹介時にどういう流れになるか説明してますし、最終的なプロットから大事な要素をどんどん抜いてますので、分量を減らすためにかなり省略します。
「一人の世界の崩壊:反抗期からの脱却」に関しては、
『トトロ』の紹介
「初潮」に関しては、
宮崎駿作品の物語構成
宮崎駿、各作品紹介
を見てきてくれると助かります。これまた一から説明してたら文字数オーバーに軽くなるので(汗)
これまでの記事で説明してないのは「自分の心の中の探求」でしょうか。これはやらないといけませんね、さすがに。
「自分の心の中の探求」に関しては思春期のアイデンティティ形成の心理メカニズムの一つです。一つ目のプロットの「一人の世界の崩壊」と酷似していますが、時期がそれより後になります。
まず「一人の世界の崩壊」は現実世界へ目を向けるということになります。これに関しては私の記事で『Dreams』という小説の案を昔練っていたことがあると書いてあって、それを見てくれればわかると思います。
ただこれだけでは完璧な反抗期の終了を意味しません。まだ現実世界に目を向けただけですので。
ちょっと言葉だけの説明だけではわかりにくいですかね。他作品を借ります。
エヴァ(TV版、旧劇場版)で言うと、アスカがメイン三人のパイロットの中では唯一これを成し遂げています。彼女は自分独りで社会の中で生きていこうとしていて、すなわちアイデンティティを確立して現実世界の中で戦おうとしてます。(一方でシンジはまだ自分の世界に閉じこもっていて、そしてその自分の中の仮想世界に何度も逃げ込みます。なので何度かエヴァの中に取り込まれてますね。ですがアスカはエヴァを覚醒させても融けませんね。この違いは二人の成長段階の差として説明することができます)
でも“独り”なのですよね。本来であれば反抗期が終わるときに主に両親との確執が取れ、他人と結びつくはずなのですが、アスカはパイロットに選出された直後に母親が自殺しますからそれが達成されていないということになります。なので反抗期がまだ終わっていないということです。
「自分の心の中の探求」はこの他の人と繋がるための一つの通過儀礼となります。他人を知るためには自分のこともある程度知らないといけませんから。(あ、そういえば新劇場版ではこっちにシフトしてきてるみたいですね。アスカだけではなく)
ということで、反抗期・思春期の中の並びとしては、
「一人の世界の崩壊」→「自分の心の中の探求」→「初潮と他人からの認め」
という順を追います。
『好き好き大好き、だから嫌い』では一応全部をカバーしていますが、文字数の制限などからテーマを「自分の心の中の探求」の途中で中途半端に終わるという形にして話を組み立てることにしました。だから彼女たちの話はきっと続くのでしょうね。(当たり前か、人間生きてて成長していくのですから)
以上が基盤となっているプロットです。
ちょっとプロットから離れてキャラクター設定をここに重ねます。そうするとキャラ設定の意味がわかるでしょうから。
物語の核となる“ツンデレ”ヒロインの湊ですが、再度引用しておくと――
親との関係は良好とは言えず
親との精神的な距離が離れていた環境で育った
とあります。
完全に親から引き離されているわけではないのですが、これは反抗期に入る前の準備です。
それと年齢が14歳と低く設定してあるのは、「初潮」の話があるからです。さすがにこれ以上年齢を高くするとおかしくなりますからね。(まあ、そこまで厳密にやることではないですから、最終的にはプロットおよび応募原稿からはカットしてます)
また「初潮」はできるだけ異性から内面を見抜いてもらうのが望ましいわけです。ですので主人公の絹塚は一人称が「ボク」なのです。結局は同性なわけですが――
姉がやたらと少女趣味なので、それに反発してか「ボク」と自分を表すように
とあるようにそれなりには男性側に傾いています。
またこれはこの「初潮」と「自分の心の中の探求」の両方に関わることですが――
相手のことを理解しようという広い心の持ち主。
なのですね。ですから湊のことをよく見てくれて、彼女の内面を見抜くという「初潮」の方での役割を大きく担っています。と同時に湊の方は自分ひとりではまだまだ自分の内面を見抜けないのですよね。ですからそれを絹塚に手助けしてもらうという形になってます。
という感じが予備知識。ここから実際の最終段階のプロット説明に入っていきます。一気に複雑化させますね(笑)
まず実際の最終原稿を見てもらえればわかると思いますが、四つに分割されています。これ、起承転結での分割です。(ただし根幹のプロットがすでに多重なのでそこまで綺麗な起承転結となっていませんが)
実際にこれが活字にされたときを考えて、文字数や段落の数も調整してあります。これは縦書きにされた『電撃hp vol. 49』を見てもらうのが一番わかりやすいのですが(苦笑)
ま、とりあえず文字数とか段落数を書いておきますか。(行数は42×34でカウント)
起:459字、23行
承:441字、23行
転:555字、25行
結:545字、23行
となってます。転と結の部分が前二つと比べて多いですね。ここは基盤のプロットから考えると理由がわかるかと思います。
起(および承)では反抗期に突入するための準備(キャラクター背景・問題)を提示するだけで、これは三枚のプロットすべてでほぼ同じなのですね。
ですが転と結ではこの三つのプロットは変わります。「一人の世界の崩壊」ではまず現実世界に直面してもらわないとなりません(=猫が轢かれそうになるという事件)。「自分の心の中の探求」においては自分の感情の揺れ動きを感じてもらうことが大事(=猫を助けたところでの叫び&動物病院での絹塚との会話)。「初潮と他人からの認め」では絹塚との交流が鍵ですね(=湊のことがわからない&動物病院へ連れて行く&湊のことの理解)。このように色々なものが一気に同時展開しますので、ここの分量はこれ以上削れませんでした。一応これでもエピソードを泣きながらなくしてるんですけど、さすがにこれ以上は無理でしたね。
もう少し具体的に見ていきましょうか。
四つのパラグラフ(と呼称させてもらいますね)が起承転結になっているというのは先に述べたとおりですが、これはさらに起承転結に分けられてます。ですので全体は16+αに分割されてます(αについては後述)。ただしここはどんどんエピソードを削っていってしまったので原型はもう留めてないですね。一番最初に書いたのが確か4,300字程度になってたと思います(このファイル見つからないです。どうやら上書きしてしまった模様……)。この段階でもかなりエピソードを省略してたので、最終稿はさらにわからないですね。なのでざっとだけ説明しておきます。
起の起:湊紹介・絹塚との出会い(イメージとしてはボーイ・ミーツ・ガールですかね)。
起の承:二人の関係紹介。
起の転:交流がうまくいっていないことの明示。
起の結:しかし最終的に湊が絹塚を引き連れていく。
承の起:湊の絹塚への接し方。
承の承:それを受けての髪を引っ張る描写。
承の転:先生に聞こえるも湊は気にせず。(ここは後の転のために軽く)
承の結:絹塚の嘆き。
転の起:絹塚の湊への感じ方。湊の気持ち(やや自身の内面と外の絹塚を見る描写)。
転の承:湊の気持ち(ここは他のプロットがあるため重複)。猫のじゃれつき。
転の転:猫(ここも重複)。猫を拒絶。その猫が車に轢かれそうになる。湊が助ける。湊の動揺。
転の結:湊の動揺(重複)。絹塚が湊を連れて動物病院へ。
結の起:湊の吐露。絹塚がそれに目を向ける。
結の承:湊の吐露(重複)。二人の会話。
結の転:湊が激情(=自分の本当の気持ち)を絹塚にぶつける。猫が助かる。湊の涙。
結の結:絹塚の湊への理解。一方で自分の心をまだ把握しきれていない湊の「腹が立つ」とそれでも絹塚に知らず知らずにすがる姿。
という感じになってます。元々のプロットの量が掌編に収まるようなものではないですし、話を読みやすくするためにやや順序が前後してます。実際にはもっと複雑になってますが、この文章での説明ではちょっとこの辺りが限界ですかね。
というか起承転結の役割果たしてないですねえ……。
次に+αの説明です。
転に相当する第三パラグラフのみ、最後に一行程度の風景などの描写が入ってないです。代わりに他にはすべて入れてあります。
この最後の一行は(前回に世界観を説明したときに触れましたが)絹塚の心理を表しています。結の第四パラグラフだけは別の効果を持たせていますが。
第一パラグラフの、「今いた所に扇形の葉っぱが舞い落ちた」、というのは落胆と状況についていけていないということの比喩です。
第二パラグラフ、「黒板から落ちる白い粉は、ボクがまだ写し終わっていないチョークの文字からできていた」、は悲しみとか諦めの感情ですね。『どうしたらいいのこれは?』という気持ちです。黒板の文字は消されたらもう見えませんし。また落ちる粉は“白”です。これは墓の白石などのイメージから繋げてきてます。ようは“死”のカラーですね。
第四パラグラフの最後だけは比喩ではありませんね。「立ち上がる彼女はボクのスカートをしっかりと握りしめていた」は、半分オチとして、半分はインパクトのある結としての効果を狙ってます。どちらとして受け取るかは読み手によって異なると思いましたので、私自身もオチとは考えてません。いくらか働くかもねぇ、という程度で、プロット上でもオチと書いてませんし、実際にそういう内容にはしないようにしました。
で、第三パラグラフだけないのですね。これはバランスをとるためです。第一と第二で比喩として一行程度入れておくことで第四でのこの一文の挿入があまりに突然にしないようにしてあります。これは明確なオチにしたくなくてその効果を薄めるためです。一方で第三にないのはここにまで入れてしまうと第四の最後の一行が弱くなりすぎてしまうため。またここは物語の転(=急展開)ですから、ここからは一気に読み進めて欲しかったので、休憩させてしまうような比喩は省いたという理由があります。
大体こんな感じでしょうか?
これが“表面上の”プロットとなります。
山本辰則様には伝えてありますし、物語を書いたことのある人はわかると思いますが、起承転結とかはプロットの最後の方で入れて話を綺麗にまとめるものです。またキャラクターの設定とかも最初は入れません。
プロットの最初の段階、まだアイデアをどんどん出していって並べている段階ではただの地図みたいな感じで起承転結とかは(まったくとは言いませんが)考えてません。
実際、今回の説明でも伏線とか、どこがどう繋がっているのかは説明してないですね。これは「文章で書けません」のでやってません。不可能ではないでしょうが、どことどこが繋がっているとか全部説明していったら文字数が大変なことになりますし、読んでもわけがわからなくなると思います。(一応、ここまで書いたことを踏まえた上でもう一度読むと何となくわかるとは思いますけど)
ということですので、今回書いたのはもうほとんど最終段階のプロットの説明となります。初期の段階のものは先に述べたように地図みたいな感じですので文章化がほぼ不可能ですし、ここから何度も修正や上書きをしているので、全部それを説明するのは無理かと。
というか企業秘密w いつキャラ設定に着手するのとかは明かせないですかねぇ。
――と、まあ、企業秘密というのは冗談です。ここは複雑すぎますし、私自身話をつくるたびにいくつもの制作術を使っていますから、正直この順序は毎度毎度変わるのです。ですからこれを話しても見た人の役に立たないだろうという判断です。各人で得意とする順序は異なるでしょうし(キャラを早めにつくるキャラクター重視の方、あるいは文章の並びや見た目で感動させる純文学よりの人などはどこに何を書くのかを早い段階で考えるだろうと思いますね。私は一応あらかたのものを使えますが、考えているうちに変わってしまうこともしばしば。これ、使いこなせるようになりたいですねえ)。
以上でプロット説明終了です!
やばい! キャラクター設定の説明とかと比べてはるかに内容、というか書き方が重い気がするw!
あ、追記。プロットの話ばかりで二点ほど説明忘れ(汗)
まずタイトルです。使わせてもらったのは『好き? 好き? 大好き?』です。内容は各自で読んでもらって確認して欲しいところですが、心理学を詩にした感じものです。このタイトルの詩ではなかったと思いますが、心の楯とか出てくるのですよね。ですのでこの作品の内容にも合っていたので使いました。
ただし。「好き? 好き? 大好き?」と毎回「?」とスペースが入れられるとそこで読む人が区切ってしまいますので、これをすべて繋げて一気に読ませ、追加で足した「だから嫌い」の前に「、」を打ってます。語感を重視しつつ、ここが切れ目という意味もあります。
二つ目にコメントですね。
私は「ツンデレってどんな子?」と書いてます。
これ、ようは「ツンデレ」なんていないでしょ、という意味で書いてます。これは受賞時に書いたメッセージからも読み取れるかと。
もちろん「ツンデレ」(に相当するきちんとした性格の分類)は学問的に認められています。ですが「ツンデレ」という萌え属性として形だけでキャラをつくるのは、私の目指すところではないので破棄しました。したがって、ただの記号だけで「ツンデレ」と表すことのできるキャラクターに人間味はあるの?、というのが今回私がやってみたこと。私の出した答えは――作品やプロット、キャラ設定などを見てくれればわかるかと。]]>
『好き好き大好き、だから嫌い』キャラクターノート
http://zattou.exblog.jp/13449636/
2010-06-13T11:29:42+09:00
2010-06-13T11:29:17+09:00
2010-06-13T11:29:17+09:00
zattoukoneko
作品品評
本当はノートに書いてあるのですが、手書きなのとそもそもそのノートが本の山の奥深くに沈んでいますので(←片付けろ)、記憶を頼りに改めて書いていきます。
その代わりといっては何ですが、注目ポイントだと思うところに解説でもつけておきます。
えっと本当なら“ツンデレ”ヒロインのほうから書いていくべきだと思うのですが、あえてもう一人の方からいきます(意味はそこでわかりますw)。
主人公
名前:絹塚(きぬづか) 下の名前は未定(ここは文字数上書けないと踏んだので)
年齢:14歳、クラスは2-A。
家族構成:姉が一人。
これの数ヶ月前に書いていた作品に出てくる絹塚恵という人物が姉。
(この作品中ではわからないですけど、一応自然魔術が現代まで残り科学/技術と競争したり共存を試みたりしているという世界になっています。魔術科は高校からあり、中学までは私たちの世界と同じような教育を受けます。ですのでこの作品にそのまま流用させました)
性別:女(これは最後にわかりますね)
一人称:ボク(理由は後述)
身長:158-162cm(女の子としては高めに設定。自分の中でも男だと思い込んで書いていけるようにこの値に。また湊よりも高いです。読み手も湊より背が高いだろうなと印象を持ってくれていたら私の勝ちですねw あ、ちなみに姉の恵は170あります)
髪型:ロング・肩よりずっと下まで(ここは授業の際に髪の毛を引っ張られるところで使ってます。後ろの席から簡単に手が届くので、やはりこのくらいの長さは必要かと。場面を想像してくれた人には伏線として働くように意識してます)
制服:上は特に指定なし(一応ブレザーをイメージ)。下はチェック柄のスカート。色の描写はしないこと、とプロットにありましたのでこれも設定なしです(これについても後述)。
性格:姉が結構派手な性格なので、こちらは大人しめです。また姉の恵が気が強いくせにやたらと少女趣味(というか魔女っ娘が大好き)なので、それに反発してか「ボク」と自分のことを言うようになりました。ただしただ言うことを聞くだけの気の弱い人間ではなく、芯の強い部分もあります。ですので湊(および姉の恵)に強く当たられても結構平気です。むしろ相手のことを理解しようという広い心の持ち主ともいえます。
“ツンデレ”ヒロイン
名前:湊(みなと) 名字は指定なし、また下の名前も一文字とすることと決めてありました。これは文字数の制限があるため。ただし語感から音が三つ入るようにと考えました。
年齢、クラス:14歳、2-A。当然主人公の絹塚と同じです。
家族構成:両親との三人暮らし。ただし親との関係は良好とは言えず(悪いとも言わないのですが)。ここは作者の私自身が把握しきれてないですが、彼女の短気な性格(下記参照)はある程度元々持って生まれたもので、そこに親との精神的な距離が離れていた環境で育ったことでさらに強調されたのだと思っています。ここは進化学の研究から「性格は育ってきた環境に大きく影響されながらも、遺伝要素もある」というものを使ってます。
性別:女(一応男版ツンデレという話の案もありましたけど、さすがにここはかわいさを優先でw)
一人称:私(これは文字数制限のため。私が掌編応募をするときはほぼすべて「私」にさせています)
身長:153前後。あまり低すぎず、かといって高すぎないライン。また年齢を考慮してこの数字に。
髪型:セミロング。色は茶。髪の長さは絹塚とかぶらないように、でも最初のシーンで回し蹴りをすることは決めていたので、そこで一緒に広がるような長さに設定(結局この描写は文字数のために削られていますが)。色に関してはイチョウと合うように(これも改めて後述します)。
性格:非常に感受性の高い女の子。しかし短絡的で、自分の心を素直に受け止めることができない。そのため(元々の短気と重なって)いつもイライラとしている。また自分では自身の心を受け止められないものの、いざというときは体の動きが先に出る。ここの反応はきわめて早い。これは最初の回し蹴りのシーン。髪の毛を引っ張るところで少し示しておき、車に轢かれそうになった猫を助けるために車道に飛び出すところで結びつくようになっています。そしてここが重要なポイント――この子は『ツンデレではない』となっています。上記の理由から素直になれない子です。そしてこの子は今後もこれは直らないでしょう。それだけ根深いものですから。ですのでツンデレではありません。ただしツンデレのように見えるような行動を“絹塚視点”だととっています。また最後に「彼女は自分の心に素直になれば、きっととても愛らしい子になる」とあるのはあくまで絹塚の感想です。それに絹塚自身もこれを確信しているなんてことは言っていないはずです。ここはプロットの上で厳しく指定されています。
以上がメインの二人ですが――
ちゃっかり先生とか猫とかにも設定あります(笑) 一応書いときましょうか。
先生
名前:指定なし
年齢:22歳(冬に23になります) ようは大学卒業してすぐに先生です。
担当科目:数学
性別:男
服装:一応指定がありますが、ここは作中には明記しないこととプロットで指定がありましたし、ここでも明記することは避けます。
性格:大学はとりあえず行ったという感じ。出身はそれなりの有名大学。しかしやりたいことも見つからず、とりあえず周囲のすすめで教職免許を取得。そして勉強も大してやる気もなかったので理系(学部・学科は未定。ただし数学科ではないです)にもかかわらず院へは進まず。つまりは流されるだけの人間です。なので教師という職業にやりがいも感じてないですし、特にやる気があるわけでもないです。ですので湊みたいな子ににらまれればすぐに引っ込みますし、動揺をごまかすためにいきなり板書を消したりしちゃいます。
猫
名前:あちこちで色々な名前あり。ようは野良猫。
色や模様:三毛。色は薄い茶色が多め(理由は後述)
性格:非常に人懐っこいです。また作品中ではちょうど人恋しい感じなのでしょうね(これは特に指定なしですが、あえて言うなら「秋だから」でしょうか。別に発情期でもいいんですけど、それだと雰囲気がぶち壊しにw)。
あと一応動物病院の医師にも少しだけ設定があって、とても動物を大事にしてくれる人、ですね。なのでメインの二人が駆け込めばすぐに対応してくれますし、とてもよく診断・治療をします。泣いてる湊なんかにも特に何も言わないですし、お金もこの人はとらないです。(世の動物病院の人見習ってー!)
登場キャラの性格についてはこのくらいですかね。もう少し細かいとこまでありますが(血液型や誕生日、制服のスカートの長さや靴下についてなど)、特に記述がないので省略。でもある程度はイメージできるのかなあ? へたり込んでる湊が手を伸ばして手が届くスカートの長さとか想像してもらえればいいのかと。
さて現在までで2800字越えました。すでに本編を軽くオーバー(苦笑) でもまだ終わらないです。
次、世界設定。
上記のようにこの世界では自然魔術というものが存在しています。ただしそれは“魔法”ではないので注意。一言でいえば自然魔術とは昔の科学です。だから色々と理論がありますし、人為魔術でもないです(一応この世界では人為魔術も認められていますが、威力が弱いので使われることがありません)。というわけでぱっと見、私たちの住んでいる世界と変わらない風景になっています。ただし「イチョウの葉っぱが~」とか「黒板から落ちる白い粉は~」という表現はこの自然魔術の遠隔作用によるものです。一応プロット上では別の意味を持つようにと指定がありますから、ここはどうでもいいことではありますが。
小中は私たちとほとんど同じ教育課程を経ますし、教わることも大体一緒。
高校からは魔術科という専門学科が存在します(また職人として魔術アイテム製作に携わる人も多少います)。ただし魔術科はレベルが半端なく高い上に、学費もとんでもない値段なのでいける人は限られてます。イメージとしては中学生が東大に入るものだと思ってくれればよいかと。当然のことながら全学生のうち数%しか魔術科には進みません(一応一つの県に数校程度には魔術科があるので割合としてはこんな感じです)。
また高校の上には一般的な大学の他に、魔術科を含んだ大学と、魔術研究院というのが存在。前二つは私たちのイメージするuniversityですが、魔術研究院は大学、大学院、研究所がごちゃ混ぜになったようなもので別格。魔術師の中でも選ばれた人間しか入学を許可されません。倍率は数千倍~一万倍程度。
主人公の絹塚や湊は特別魔術師を目指してるわけではないです(絹塚姉が魔術科に行ってますから、それなりに優秀だとは思います。少なくとも人としてはよい人たちだと考えて書いてます)。
世界設定についてはこんな感じですかね。自然魔術の説明とか入れてたら別の話になるのでここらで止めましょう。
これでラストかな。テーマカラー。
一応作品ごとにカラー設定をしています。今回は黄色。
理由は単純明快で、秋だから。これはお題で決められてたのでそれに従いました。
モミジの紅でもよかったんですが――モミジだけの町ってまずないだろうというのと、赤系統だと色が強すぎてキャラクターの細かい心が浮き出てこなくなってしまうのではないかという判断から黄色を選択。
さてこの「黄」が作品のカラーなので全部これにしたがってもらって、違和感のない色でほぼ統一してます。
イチョウはそのままですね。一番使いやすく、明確に印象付けられるので、物語の頭から入れていって読み手に植えつけさせてもらいました。
湊の髪の茶や、猫が薄い三毛なのもテーマカラーと合うように。スカートの色指定をしていないのは、チェックだとどうしてもいくつかの色が混ざってしまって浮く危険性を感じたから(いくつか案は出してるのですけど)。また単色のスカートだと服装とかにあまり言及できない今作では可愛らしさが足りなくなると判断しました。でも結局文字数の制限から削ってるんですよねえ……。読み手のイメージの中で何とか再現できないかと試みてはみましたけど、この文字数削ってる時点で加筆はもう限界なので大したことはできなかったです。ちょっと悔やまれますね。
こんな感じでしょうか? 現在4200字。
説明つきでやってはいますが、省いているところやプロットと結びついているところもあるので量的にはそんなに大幅に増えてるわけじゃないと思います(確かノートの見開きにごっちゃりとあって、そこに足りなくて先生とか猫とかは次のページにあるので。確かノート一ページに行がえなしで書いていくと1000字くらいだと思ったので、全体で3000字くらいですか? あ、でも世界観とかはまた別に考えてるのか。他作品からの流用だし)。
これとは別にプロットがあります。プロットも復元しなきゃいけないので、お見せするのは最終案ですね。そこに至るまでのプロットは上書きしたり破棄したり、そもそも紙に書かないで頭の中で組み立てたりするのでちょっと説明しにくいです。
ということで次にプロット公開いきます。今回結構プロットにも触れたので――4000字はやっぱり超えるのかなあ……。]]>
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