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『甘いくちづけ』山本様への回答

山本辰則様からもらった質問に対して改めて回答したいと思います。一つ下にある説明で大まかな答えにはなっているかと思われますが、あちらはノートやプロットなので、そこに補いながらきちんとした返答にしようと思います。

①の結末について
プロットで述べたようにこの作品では「課題」を与えることができませんでした。ヒロインである橘さんの抱えている病気は相当重いわけですから、それを克服するのに必要なものとなるとそれだけ大きくなります。単純に「これが課題です」と出すだけであれば簡単かもしれませんが、それへの挑戦と成否を描いていくとなるとそれはかなりの分量を食うはずです。(そしてだからこそ長編用でした)
以上の理由から結末はどうやってもバッドエンドになるわけですが、これを2,000字であればぶち壊すこともできたわけですね。まさに「オチ」を入れて一転してギャグで終わらせるのも可能だったかと思います。
ただテーマがかなり重く難しいものである。そしてそれにヒロインの性格・気持ちは大きく影響を受けてつくられています。となるとこれを壊すものはテーマを壊すことになるし、何よりヒロインを“殺してしまう”だろうと。なので「オチ」も「インパクトのある結」も入れず、ヒロインを守ることを最優先にしました。なので応募時のコメントが「オチは何通りか考えたのですが、ヒロインの純心を傷つけてしまいそうで結局特別なオチはつけませんでした。」となっています。
あと結末部分だけではなく全体をもう少し見てみると、今回は起承転結として四つに分けてはいますが、その中にさらに起承転結などは入れていません。結がバッドエンドと決まっていましたし、ヒロインをひたすらかわいく見せる努力をしないとただの我が侭な子になってしまうということで、彼女の気持ちを表すような描写をひたすら入れていった感じです。たとえば――

「でも私、病気なの。そのせいであなたのことをがっかりさせてしまうかもしれない。それでもよかったら付き合って」

なんていうのは、『本当は付き合いたい』という意思の表れですし、

最後に何に乗りたいかと訊くと、橘さんは観覧車がいいと答えた。

というのは、とても順当なデートに憧れを抱いているのを表現したかったとこですね。ロマンチックなものに憧憬を抱いているとなるとやっぱり最後は観覧車だろうと。
(ちなみにここ「最後」≒「最期」なのですよねえ。主人公が死ぬための後押ししてあげちゃってます。この後の観覧車の中での描写もそういう意味です)
という感じで、この辺りはひたすら描写に力を入れることを優先してます。なので他作品と比べると構成の面ではかなり落ちています。(これは③の回答にもなりますかね。カラーの説明はしてますから)

②の設定について
今回のヒロインの持つ病気に関してですが、これは架空のもので、一応他に似たような病気がないか探してはいますが厳密には決めていません。
ですが「遺伝的なもの」とは確実にしてあって、なのでお姉さんの描写は抜かずに入れてあります。またここはちょっと重要なのですが「遺伝的」ということは何らかの方法でこの病気を持っていても現代まで子孫を残してこれているということでもあります。
ちなみにSFとかで致死率100%のウイルスなんていうのがたまーに出てきて世界中が大恐慌に陥るなんて話がありますが、これ笑い話の何物でもありませんw 仮に致死率100%のウイルスがどこかの町で発生した場合、国の対応はそこを「完全隔離」することです。そこの住民には悪いですが、そこの人たちが全滅すればもうウイルスは宿主を失うので絶滅します。これで解決。世界中が大恐慌に陥るなんてことはあり得ませんww
このウイルスの話と照らし合わせてくれればわかると思いますが、もしヒロインの橘さんの病気が致死率100%だったり、生存競争によって淘汰されるようなものであればなくなっているはずなので、つまりは……何らかの方法で橘さんは救われます。ただ今回は2,000字制限ですし、こんな生物学の話を詳しくしていたらとてもではないですが収まるわけがないので破棄せざるをえませんでした。それと同時に「課題」の提示もできなくなったという流れです。
キャラの設定に関してですが、橘さんのほうは細かく設定してあります。これはテーマからしてこの子がメインだから。一方で主人公の方はこのヒロインの橘さんに付随するものとしてつくられています。ようは橘さんのためだけに存在していたキャラで、なので彼は橘さんに“死ぬ方向でしか”影響を与えることができません。本来なら二人のキャラを並べてお互いに影響を与え合うようにしながら「人として生み出す」ように心がけているのですが、今回はそれをしていないので“薄っぺらい”キャラだと私は思っています。彼にある厚みは橘さん分しかありません。

まあ、リライトする気も少し出てきましたし、「課題」に関してもちょっとアイデアが出てきたので少し考えを進めてみましょうか。

あとは余談のとこですが、私の提出は4月28日となってます。穴埋めも先に述べたようにすぐに決まってしまったので、早いほうだったのではないでしょうか?
その後新しい作品を書こうと締め切りぎりぎりまで考えていましたが、テーマが気に入っていたせいか、それ以上のものを結局出せませんでした。


以上で回答になったと思うのですが、どうでしょうか?
by zattoukoneko | 2010-07-04 10:54 | 作品品評 | Comments(23)

『最初で最後の甘いくちづけ』説明

第1回電撃メジャーリーグに参加した『最初で最後の甘いくちづけ』の説明です。
これ、第4位でしたね。117票。今でもきちんと数字を覚えています。投票してくれた方、ありがとうございます。改めてこの場を借りてお礼を述べますね。(ちなみに私はアンケートハガキを切り離したくなくて投票してませんw それに投票するとしたら別の方でしたw)



さて、では作品の説明に入りましょうか。
そして投票してくれた方に謝らなければなりませんねえ。
すいません、これ書いたとき大スランプです。まともなもの書けてなかった。応募はしたし、そこそこの票は集まるとは思いましたが、一位は確実に無理だと思いながらメール送信してます。

で、どういう風に話をつくっていったかですが、正直ここ本当にぼろぼろだったのですねぇ。精神的に。本気で筆を折ろうかと考えてたくらい。

まずこれ穴埋めですね。ここを埋めなければ何も始まらないのですが――そもそもこの形式が私一番苦手です。一見自由に埋めていい課題に思えますが、他がすでに決まっているのですよ。これを活かさないとならない。そして編集部の方(メジャーリーグでは投票してくれる読者)の好みや求めているものを提出する、あるいはその予想を超えて仰天させなければならないのです。
ですが、私はこれを埋められなかった。結局○がよっつ並んでいたから、「くちづけ」と入れました。最終的に語感を整えて「甘いくちづけ」にしましたが、口付けなどとなっていないのはその名残です。(一応変えてみて、見た目がよかったという理由もありますが)

この「最初で最後のくちづけ」と入れてしまった瞬間に話が一個思いついてしまいました。
これ、よくない傾向です。普段からそうですが、私は可能な限り案を出して、そこから一番よいと思えるものに着手します。倍率としては10倍ほど。このくらい案を出さないと、本当にそれがよいものかわからないのですよね。でも私は一つに決めちゃったわけです。
で、どうしてそうなってしまったかというと、すでに長編用で簡単に案を練っていた小説がありました。タイトルは『死に至るキス キスに至る病』で、当然キルケゴールの『死に至る病』から来てます。
ちょっとこっちの説明ですが、純愛物ですね。ただしキスをすると死ぬという病気を持った少女が主人公です。話のあらすじは『最初で最後の甘いくちづけ』とほぼ同じです。途中とかきちんと決めていませんが、きちんと何か解決策も用意しようとしてました。
テーマは「負のエントロピーの増加」で、これを知らない方は以前にこれについて書いた記事があるので参考にしてください。負のエントロピー
この記事を見てきてくれたら大体わかると思いますが、ようは「そんな簡単にキスとかしていいもんなの?!」というのを訴えてみようという話です。キスによって死んでしまうという重い病気=負のエントロピーを抱えた女の子が、それでもキスに憧れ、ジレンマに苦しむというお話です。
本文の途中に「絶望……それは死に至る病だ」なんてありますね。これはこの元のタイトルから来てます。ちょっと説得力も持たせないとヒロインの子がわがまますぎる感じにもなると思いましたし。
ところで元々の『死に至るキス キスに至る病』ですが、これがお蔵入りしてたのは、案が思いつかなかったというのもありますが、それ以上に少女向けになりそうだと判断したからですね。仮にこれで受賞してプロになれたとしても、私はその後少女向けの話を書ける気がしませんでしたから。ですので保留としていたわけです。(出すとしたらプロとしてきちんと売れたら、どこかに「一本だけですが」と持ち込もうかと)

とまあ、そのような背景がありましたので、いきなり一つに決まっちゃったわけです。
そして最悪なのは、これ“長編用”なのですね。テーマから考えてどう少なく見積もっても原稿用紙250枚くらい使って丁寧に描いていかないといけないなと考えてました。
案は埋まってないとはいえ、それでも(駄作になるの覚悟でやれば)書けちゃうくらいには決まってたんですよね。これをようは2000字にしろということです。



さてまずやるべきことはプロットの圧縮です。必要最低限のとこしか持ってこれません。
まず始まりの「起」は付き合いはじめることとヒロインの背負っている病気の説明にしないといけない。
「承」ではそれを解決する課題を与えるはず。ですが容量的に入るわけがない。元々長編のために用意してた案ですし、それもうまくいく自信がないところで止まっていましたから。だからこれは破棄するしかなかった。
となると残ってるのはヒロインがキスへの憧れを増していって、最終的にキスをしてしまうという結末しかない。
以上が骨格です。

あとは起承転結としてこの流れをいかに説得的に見せるかの伏線を整えていきます。またヒロインへ感情移入してもらわないと納得してもらえない。そもそもわがままで自分勝手な子に見える可能性が高いので、これを可能な限り回避しないといけない。
したがって書き込んでいったのはこれらです。プロットやキャラクターノートからの指示とかは一切なし。ざっと考えたらあとは実際にどこまでかわいく、そして自然に見せるかの試行錯誤です。また文字数は当然2000なんて軽くオーバーしました(4300とかです。第一稿目は)のでひたすらどこを削って、そして残す、あるいは修正して短くするかの格闘です。
したがってこの作品にはプロットと呼べるほど大したものはないのですね。ただ起承転結を表面に並べて、文字数を調整しただけ。しかもその文字数の調整も失敗してます。見てくれればわかると思いますが、四つのパラグラフで分量バラバラです。

プロットとして説明できるのはこのくらいでしょうか? あとは起承転結に合わせつつ、ヒロインの感情を変えていくような描写をいれていっただけですね。この辺は自分のバランス感覚を信じて、かつ後で調整して書いただけです。



さて、キャラクター設定などです。
ここもぼろぼろですね。もうすでにほとんど入れられないだろうと思ってましたし、書いてみないとわからなかったので穴だらけです。

ヒロイン
名前:橘(たちばな) 名は未定
   音が四つのものにすることで、読むペースを落とす目的。かつ一文字の漢字。また後でいいますがカラーがそれなりに近かったので。
一人称:私 文字数が一番の理由。また大人しめの印象も出したかったのでなるとしても「わたし」がぎりぎりかと。
年齢:高校一年生くらいでいいんじゃないだろうかと、そこで放置。
身長:高めを想定。主人公と並んだときに同じくらいの背丈がよかったので。今仮に入れていいと言うのなら168とかにします。
髪:長さは指定なし。色は濃い茶か藍色。これに関してはカラーの設定を参照。
服装:指定なし。入れる余裕はないと判断して破棄。
家族構成:父、母、姉(他界)、ヒロイン
   特殊な遺伝的な原因によりキスをすると死ぬいう病気を姉とヒロインは持つ。極度のアレルギーなどを想定していましたが、これは長編の方でも未定。応募作でも未定。
癖など:これは書いていきながら決めていこうかと思っていて特にノートには記載なし。ただ指は長い方が印象的な描写ができるかもしれないと考えていて、それだけ決めてあります。文中に「手」とか「指」と多く出てくるのはこのためですね。

主人公
名前:なし。紹介すると文字数オーバー、かつ話が回転しなくなることが目に見えていたので。
一人称:僕 大人しめ、というか人の話を聞くような印象の呼び方にしたかった。
年齢:ヒロインと同じ。
身長:平均かそれより低めで。ヒロインより少しだけ高い身長を想定。キスをするには10センチの差が一番なんて話を聞いたことがありますが、そこまでの差はないですね。抱きついてきたときとか、ゴンドラで並んだときに少しだけ高ければ問題ない程度でイメージ。
髪・服装・家族:一切指定なし。
性格:恋愛に対してとても純粋。また人をとても大事にする性格。相手の意見にも耳をよく傾ける。ここまではヒロインの行動(必須項目)から決めてきましたが、この背景とかまでは考えていないです。なので薄っぺらいキャラですね。今はもっと大事にしてあげたかったと悔やんでます。


さて最後にカラーの設定。
色は茜色(夕方)から藍・紺(夜)へと推移していく形に。
デートのイベントがありますが、時間の表記がないことやシーンもすぐに切り上げているのはここで昼をイメージさせるのをできるだけ回避するためです。橘(タチバナ)は柑橘系の植物ですね。実の色としては明るすぎるのですが、絶滅危惧種に指定されてたと思います。そんなこともあって採用です。
カラーの推移は死のイメージです。課題を設定させられなかった以上、ヒロインの女の子は死にます。これは避けようがなかったのでどうしようもなかった。



という感じです。
この話、バッドエンドなんですよね。せいぜい女の子がかわいく見えるかどうかという、それだけの話。
んー、説明しててちょっと後悔してきたかも。かわいそうすぎますね。
一回世に出しちゃったからもう破棄しようかと思ってましたけど、彼女たちを救ってあげたいですね。もう一度長編を前提として保留にして取っておきましょうかねえ。


――と自己嫌悪に陥っておしまいです。助けてあげたら私も救われるのかなあ?
by zattoukoneko | 2010-07-04 10:53 | 作品品評 | Comments(0)

『甘いくちづけ』への質問リスト

第1回電撃メジャーリーグに応募した『最初で最後の甘いくちづけ』に関して山本辰則様より質問のリストをメールでいただきました。

なお今回も参加希望の方は以前に出した意見交換を始めるにあたってを読んでおくよう、お願いします。

以下、山本様からの質問のリストとなります。

   ***

第1回電撃メジャーリーグで第4位を獲得された『最初で最後の甘いくちづけ』への質問リストです。私の方も長くなってしまいましたので、メールで先に送らせていただきます。

意見交換も今回で最終回ですね。大変、名残惜しいです……。最後の作品についても、前回の意見交換同様に物語の構成・カラーなど小説としての共通の問題と、この小説特有の疑問についての聞いてみようと思います。



①結末について
 まず、この小説を読んだときに感じたのは、以前意見交換をした子猫さま作の2つの作品と結末の描き方が違うなと感じました。もちろん、ハッピーエンドではないという点もありますが、「好き好き大好き、だから嫌い」「卒業宣言」の場合、インパクトのある結末を用意されていました。しかし、今回は結末としては、直球ストレートで、話の雰囲気を崩さないような順当な結末だったような気がします。また、子猫さまの作品へのコメントを見ると、「オチは何通りか考えたのですが、ヒロインの純心を傷つけてしまいそうで結局特別なオチはつけませんでした。」とありますので、恐らく別の結末なども用意されていたと思いますので、それらのオチ候補の中からなぜこの結末を選ばれたのか教えて下さい。
また、この作品はオチで魅せる作品では無いと思っています。これも子猫さまがのテーマである「心の葛藤」を表現した作品かと。上の結末を選ばれた理由と重なる部分があるかもしれませんが、この作品で描きたかったことについて教えていただければと思います。

②設定について
  今回の小説は、キスをされると死んでしまう女の子の話です。子猫さまの小説の場合、緻密に世界観を設定されており、小説に現れるのはその中での必要な部分となっているような気がします。そして、設定の部分には、科学的な裏打ちが必ずといっていい程、されています。そんな中気になったのは、今回のキスをされると死んでしまう病気ですが、これはどのような設定をされていたのでしょうか?(ウイルス、もっと精神的な何かでしょうか?)
 また、それと併せて、主人公、橘さんの設定、世界観についても教えていただければと思います。

③小説の構成とカラーについて
  今回の小説についても、起承転結が整っていると思います。(恐らく、行間が空いている部分で区切られると考えていいですよね?)小説の構成は私にとって大きな課題ですので、今後の勉強のためにも、各部分の分け方とそこに何を詰め込んだのか教えていただければと思います。
  また、カラーについてですが、今回の小説も「卒業宣言」と同じく「死」が取り扱われているので単純に「黒・白」を連想してしまいますが、実際はそのようにはなっていないと思います。ここの解説もいただけたら嬉しいです。

 以上が、山本からの質問となります。
余談ですが、お題の「最初で最後の○○○○」は思った以上に難しかったです。子猫さま今回のお題を頂いてすぐに閃きましたか?(私は締め切りギリギリまで考えていましたw)
by zattoukoneko | 2010-06-30 08:35 | 作品品評 | Comments(1)

第1回電撃メジャーリーグ応募作品『最初で最後の甘いくちづけ』

第1回電撃メジャーリーグに参加した作品で『最初で最後の甘いくちづけ』です。
電撃メジャーリーグ(当時は「グランドチャンピオン大会(仮)」となってましたね。懐かしいw)とは大体1年間の電撃リトルリーグ受賞者に参加依頼が来て、2,000字の掌編作品を応募。読者投票によって順位を決めるというものです。
(ちなみに現在第2回が開催中ですが、第1回は電撃文庫MAGAZINEのプロローグ1.と2.も含まれてるので、全16作品集まるという大激戦でしたw)

以下、お題と私のコメントを掲載しておきます。

課題:タイトルを『最初で最後の○○○○』とすること(○の部分は文字数フリーで穴埋め)
タイトル:最初で最後の甘いくちづけ(2,000字)
コメント:オチは何通りか考えたのですが、ヒロインの純心を傷つけてしまいそうで結局特別なオチはつけませんでした。(50字) ← メジャーリーグのときは文字数が「50字程度」と増えます。

   ***

 その日、僕は橘さんに告白をした。
 夕暮れ時。茜色に染まった地面に二人分の影が長く伸びている。
 告白を受けた橘さんは、夕陽に負けないほど頬を朱に染めた。
「ありがとう。私もあなたのことがずっと好きだった」
 橘さんは嬉しそうにそう言った後、しかしすぐに表情を曇らせた。
「でも私、病気なの。そのせいであなたのことをがっかりさせてしまうかもしれない。それでもよかったら付き合って」
 彼女は真っ直ぐな瞳を僕に向けると、苦しそうに言葉を搾り出した。
「私、キスができない。キスをすると死んでしまうの」
 そんな病気聞いたことない。でも彼女のお姉さんは、赤ん坊の頃に両親からのキスを受けて亡くなってしまったそうだ。そしてその後生まれた橘さんにも同じ病気があることがわかった。
 キスができない――僕はそんなの構わなかった。僕は純粋に橘さんのことが好きになって告白したのだから。
 それを聞くと橘さんは安堵の表情を浮かべた。
「嬉しい。これからよろしくね」
 そう言葉を返す橘さんの顔には、どこか憂いが潜んでいるように見えた。

 初めてのデートは遊園地に行くことになった。
 待ち合わせ場所の駅前に着くと、橘さんはすでに待っていた。
 橘さんが微笑んで言う。
「早いね」
 そう言う橘さんの方が僕より早いではないか。
 そう指摘すると橘さんはくすくすと笑った。「そうだね」なんて言いながら。
 橘さんは一通り笑い終えると、片手を僕の方に差し伸べてきた。
「キスはできないけど手を繋ぐことはできるから」
 僕は喜んでその手に自分の手を重ねた。その手は遊園地に着くまで離れることはなかった。
 遊園地では色々な乗り物に乗った。ジェットコースターはもちろん、コーヒーカップにもメリーゴーラウンドにも乗った。
 そうして色々なアトラクションを楽しんでいるうちにすぐに陽は暮れてしまった。最後に何に乗りたいかと訊くと、橘さんは観覧車がいいと答えた。
 ゴンドラの中から見る夜景は本当に綺麗だった。向かいの席に座る橘さんが、目を輝かせながら外を眺めていた。
 その橘さんが、ゴンドラが頂上に辿りついたところでつぶやいた。
「……本当だったらここでキスとかするのかな」
 だけどキスはできない。どうやら橘さんは自分の病気があるせいで、余計にキスに憧れがあるようだった。
 僕は席を立ち、橘さんの隣に座った。そして肩に手を回す。
 橘さんは驚いて僕の顔を見る。そして一瞬物欲しげな顔をしてすぐに諦めた表情になった。ゆっくりと頭を僕の胸に預けてくる。
 そうやって二人寄りそったまま観覧車は一周を終えた。

 別れのとき、駅前で橘さんは急に僕の方に振り返った。
「好き」
 そしてそのまま僕の胸の中に飛び込んでくる。
 橘さんは言葉を続ける。
「好き、好き、大好き」
 僕の背中に手を回してくる橘さん。僕もそれに応えて彼女の体を腕で包む。
 橘さんの言葉は止まらない。
「大好き、大好き、大好き」
 異変に気付いたのはそのときだった。僕の背中に回された橘さんの指に、異様に力が入ってきたのだ。すぐにそれは痛みを感じるほどに。
「好き、好き、好き!」
 橘さんがばっと顔を上げる。
 彼女は、泣いていた。
「好きなのにどうして!」
 橘さんが悲鳴を上げる。
「こんなに好きなのに、どうしてキスすらできないの!」
 そう叫ぶと再び僕の胸に顔を埋めてわんわんと泣き声を上げ始めた。
 橘さんのキスへの憧れは僕が思うよりずっと強いのだろう。キスができないということが、彼女をずっと苦しめてきたのだと思う。
 僕は何もできないまま、橘さんを抱きしめ続けた。
 やがて泣き声は止まった。橘さんは胸から顔を上げた。言う。
「ねえ、キスして」

 僕はその申し出を断った。キスしたら橘さんが死んでしまうではないか。彼女を亡くしてしまうことが、僕には耐えられなかった。
 でも橘さんは頑なだった。
「キスができない私に、あなたはいつか愛想をつかしてしまうと思う。そうなるくらいならキスして死んだ方がいい」
 そんなことにはならない。キスできなくても僕はずっと橘さんを好きなままでいる。そう伝えたのだが橘さんは首を横に振った。
「あなたなら本当にそうしてくれるかもしれない。でもそれじゃあ私の望む彼氏彼女の関係になれないの。キスができない。その先にあるのは絶望なの」
 絶望――それは死に至る病だ。橘さんが考えるに、キスは恋人にとってなくてはならないものなのだろう。キスできなければ本当の彼氏彼女になれない。そう思ってしまっているのだ。
 僕は何とか橘さんを説得しようとした。けれど無理だった。
「今日一緒にデートしてわかった。これが私に許された距離なんだって。私はあなたとの距離をもっと縮めたい。そのためにはキスするしかないの」
 そう言われてしまっては仕方がない。僕にできることはもう彼女の望みを叶えてあげることだけだった。
 橘さんが瞼を閉じ、唇を突き出してくる。それに僕は肩を抱き応えてあげた。
 最初で最後のキスは、どこかほんのりと甘い香りがした。
by zattoukoneko | 2010-06-30 08:34 | 作品品評 | Comments(0)

またお邪魔してきますー。

さて、今日は第3回電撃リトルリーグにて最優秀作品に選ばれた、山本辰則様の『史上最悪のデン子ちゃん』で意見交換を行なうため、山本様のブログ、山本辰則の小説とかへお邪魔してこようと思います。
意見交換はやはり今日一日で終わるでしょうね。お互いに連日で都合があくことなどまずありませんので。ちょっと駆け足過ぎる気もしますが仕方ないですかね。

とかくもう折り返してるんですね。何やらやたらと早かった気がします。そして大変だった……。
が! その分実りも大きい気がします! ということで頑張れ自分、いってらっしゃい自分!!
by zattoukoneko | 2010-06-27 10:54 | 作品品評 | Comments(0)

プロットの初期

山本辰則様からプロットの初期の話をいただきました。で、これについては前に少し「こういうのが意見交換のときに出せると参考になるのでは?」と山本様のブログの方でコメントしたことがあります。
内容は、私が研究発表用にノートに計画をざっと書いていったもの。これは一冊の本を読みながらポイントポイントを押さえていって、繋がる部分を線で結んでいったものです。
(あ、なおここでは「ノートに書いた」と言ってますが、制作技法と「プロット」と「ノート」は別物なので。紛らわしいですねえ。書く場所がばらばらなんですが、見た目は同じものですから……)

発表の計画書と小説のプロットとは違う部分も多いのですが、でも最初は思考はぐちゃぐちゃで、理路整然としているわけではないということはわかるかと思います。
文字も悪筆ですね。思いついたことをどんどん書き込まなくてはならなかったので、速度重視です。最初からまとめようとすると無理矢理になってしまいますので。とりあえず大事だと思ったことを取り上げ、ちょっとだけの整理と繋がりだけ書き込んだもので、「地図」に近いことがわかるかと思います。ここから最後の稿へと整理していきます。

途中である程度の構成は考えながら進めますけど、最初ってこんなものかと。小説も起承転結がプロットの中に入るのは最後の方ですしね。

とりあえずそのときのやつはいつでも出せるようにスキャンしておきました。以下に掲載しますね。
内容は味の素で有名な「池田菊苗の背景について」です。これは一冊のみでのまとめです(ただしいくらか予備知識はあったので、思いついたのはちょっと加えてますから完全な一冊ではないですが)。文字が汚いこともある上に、それなりに専門的な内容なので見ても意味はわからないと思いますが(汗) とかく、最初ってこんなにごちゃごちゃしてるんだってことだけはわかるかと。
(ちなみに山本様のブログへのリンクとか今回入れてないですけど、急ぎで書いたのでそこはご容赦を)

pp. 1-2
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pp. 3-4
b0118096_15511341.jpg

pp. 5-6
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pp. 7-8
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それぞれの画像はクリックすると大きくなるかと思います。……字が読めませんが(汗)
by zattoukoneko | 2010-06-17 15:53 | 作品品評 | Comments(7)

山本様への回答②

とりあえず『卒業宣言』に関してはこの記事の下にあるプロットで、山本様への大体の回答になったかと思うのですが、もう少し補足しておきましょうか。


今回パラグラフが10個もあって、そうなるとそれぞれは200字前後しか書けなくなるわけですが、実は無謀にもここにさらに起承転結を入れてます(笑) ということなので実は40分割されてます。
…………アホだ、私はorz

まあ短すぎて見えにくいですし、当然のように盛り上がりもほとんどないわけですが(汗) ただこれをやったためにばらつきが出たという感じでしょうか? エピソードやなんかについては先に述べたように適当に入れていっただけで、試行錯誤ですが、当然のことながら収まった後は文字数の調整に入ります。ここからはもう話は動かないわけですよね? なのでただ文字数を合わせるだけであれば思いつくまま削ってしまえばいいわけですが、その中に見えにくいとはいえ起承転結が入っているならそれを壊すわけにはいかなかったのです。それを維持しながら削っていった結果が最終稿となります。

簡単に説明すると、
起:イベントの発生や説明
承:そこで何があったか
転:承を受けての主人公の動き(体だったり心だったりします)
結:転を受けての最後の変化・成長(ここは儚さを重視)

という感じです。
ただし最初の二つのパラグラフは「序」なので始まらないといけません。なのでここは出会いがイベントの代わりですし、「急」のところはそれまでの話を受けての収束部分ですから、その“受け”の部分が起に相当するような形になってます。


他にはイベントの順ですが、一応一年の季節を巡るように考えてますが、学校のイベントって学校ごとに違うだろうし、そうなると人によって感じる印象は変わるかと。直接「春夏秋冬」と入れてみてもよかったのですが、ちょっと直接的過ぎて学校行事というところから離れるかもしれないと思ったのでそこまできちんとはやっていないです。話の流れも大事でしたし。
一応修学旅行のところでは「紅葉」と書いていますし、結局削りましたが球技大会のところでは「入道雲」なんて入ってたりしました。
今思えば削りすぎな気がしますが(汗)


補足するとなるとこんな感じでしょうか?
他に質問・疑問がありましたらよろしくお願いします。
by zattoukoneko | 2010-06-17 11:04 | 作品品評 | Comments(0)

『卒業宣言』プロット①

今回は第2回電撃リトルリーグで受賞した『卒業宣言』についてです。
が、実は前に紹介した第8回の電撃掌編王『好き好き大好き、だから嫌い』よりプロットもキャラ設定も薄っぺらいのです、これ。今回書いたものを前のと見比べたら一目瞭然かと。


まず、この作品は「確実に獲る」と考えて送ったものです。そして実際に受賞しましたね。これある自信があってそう思っていました。(もちろん実際に受賞報告をいただいたときは小躍りしましたがw)
で、実はこれここで流すと見た人は一気に掌編の応募のレベル上げてくるんでしょうねえw それはそれで面白いからばらしちゃいます。私自身がまた戦いたくなるのでww

実は掌編の応募時にくっつけるコメントって結構大事なのです。
もちろん本文が一番大事でしょうが、同レベルで並んだらこのコメントで評価するでしょう? またこのコメントでうまく選考してくれる編集者を“釣って”みせれば、物語本文がもつ魅力以上の評価をもらえたりするのです。
すなわちこのコメントって――『得点つけられるんです』よ。

私がやったのはまさにこれです。編集者の方を“釣り”にいきました。そしてその餌に食いつかせることができるような作品でもあったので、「受賞確実」と思っていました。
これに関して少し詳しく見ていきましょうか。
まずトリノミヤツチノスケ様のコメントを見てくれればよいかと思います。私の「微笑ましいと思えるオチ」というコメントを高く評価してくれていることがわかると。(ここへは転載しませんね。文章書いてるの私ではないですから。電撃様のHPにて確認をお願いします)
次に他の最終選考に残っている方の作品を読んでみてください。青猫様、兔希栄祐様、yuto様と三人いますね。これと私の作品を比べて、コメントを抜きにしてどれを受賞させたいか考えてみてください。
これ、私コメントなかったら他の方が受賞してたと思います。とくに兔希栄祐様はかなりの実力者。後にきちんと受賞していますね。また第1回の電撃メジャーリーグでは第5位にランクインしています。(なお、参加された方の全作品はきちんと読み、その上で順位の予想を立てています。また他の人にも読んでもらって順位予想してもらいました。私自身は自分を4位としました。少なくとも1位では確実にないと思いました。で、まさに私の順位は4位だったのですが――私の予想では兔希栄祐様が私の上に入っていたのです。それだけの実力者だと私は考えています。また他の方も私より上にランク付けしてました。ありがたいことに私のことも1位ではないですが上位にしてくれてましたねえ)

さて、どうせだからオチの話でもちょっとしましょうか。
私自身「微笑ましいと思える“オチ”」と書いていますが、私はこれをオチと考えていません。これは『好き好き大好き、だから嫌い』の方でもそうでした。
オチというのは話の終わりの部分ですが、結とは異なります。オチは物語を「終わらせる」のですね? 一方でただの「(インパクトのある)結」は物語が終わりません。
もっと具体的にいきましょう。一番イメージがつきやすいのは小噺です。最後にいきなりくだらない駄洒落で終わらせたりすることありませんか? それまで語られていた話ですごい聴衆を魅了していたのに、どうしてこんなもの入れるのでしょうか? 興醒めしてしまうとは思いませんか?
実はこれには重要な役割があります。
それまで聴衆は物語の中に「入ってしまって」います。つまり物語世界という非現実世界に迷い込んでいます。これを現実世界に引き戻すのがオチです。つまり「これは物語だからね? きちんと現実に帰ってね?」というのがオチです。ただ(話のテーマにもよりますが)物語を全部忘れられてしまうのももったいないところ。その場合には現実の社会の風刺などを入れると物語世界(非現実世界)と現実世界と比較して、これからどう生活していこうかと考えるきっかけを与えることも可能です。
またこれはハリウッドの映画でも同様な手法が使われています。オチとは当然言いませんがw これに関しては以前『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を取り上げて、ハリウッド映画のシナリオの構成というのを紹介しています。日本のように起承転結や序破急ではなく、スリーアクト・ストラクチャーと呼ばれるものを用いています。知らない方はまずそちらの記事を。ハリウッド映画のシナリオ構造
で、ここにアクト1・アクト2・アクト3の図がありますが、最後にちょろとだけ伸びていると思います。ここがオチに近い役割を果たします。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』では最後に未来に行ってきたらしいドクがマーティに会いにくるのですよね? これは(どうやら次回作の予告と受け取られてしまったらしいですがw)オマケのエピソードで、ここでそれまでの物語とはほとんど関係のない話をして観客に余韻を味わってもらいながら劇場から「帰って」もらうために挿入されています。
これらのオチ(と総称してしまいますが)と「インパクトの大きい結」はまったくの別物です。
「インパクトの大きい結」はむしろ物語の世界へ見る人を引き込んでしまいます。ようは物語世界から帰れなくなる。よく感動的な映画を寝る前に観て、それがなかなか頭から離れないで眠れないなんて経験をするかと思います。これは大体はこの「インパクトの大きい結」が最後だからです。あるいは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のように観客が続きがあると“誤解”してしまう場合ですね。ストーリーの展開から見てどう考えても終わっているのに、そこを誤読する人によって続編希望が出ることがままあります。これはこれで作り手としては嬉しいことでしょうが、戸惑いもあるでしょうね。(なおこれに関しては、『クレヨン王国 月のたまご』紹介というので触れています)
したがって、作り手は現実に引き戻させる「オチ」を入れるのか、物語世界に長く浸ってほしいと考えて「インパクトの大きい結」を入れるのか、それを意識しなければなりません。ちなみにまだ紹介できていないのですが、あかほりさとる著『セイバーマリオネットJ』という作品で見事に「オチ」を入れています。長編になればなるほどオチをつけるのは難しいはずなのですが、あかほりさとるは明確に意図してこれをやってますね。これを読んだときに身震いしたのを未だに忘れられません。

なお私はこのオチと「インパクトの大きい結」を知っています。完璧に使いこなせるかと問われると自信がありませんが、意識はしてます。
で、私はオチのないこの『卒業宣言』に「オチを入れました」とコメントしているのですね? これは第8回の電撃掌編王で受賞したときに、なおちゃん様が「オチ」ではなく「最後の一行のインパクト」とコメントしてくれているのですよね。これをもらったときに「電撃の編集部様、少なくともこの人は確実にオチが何なのか知っている」と思ったから。今でこそ「掌編なのでオチを」とHPや雑誌の方で言っていますが、おそらく読む側はこれを知ってると思いますね。ですので私はそれに乗っかって「微笑ましいと思えるオチを」と安心して入れさせてもらいました。あとは編集者様のほうで判断してくれるはずですから。
というのが私のコメントがああいう形になっている理由です。


――と、予備知識が長くなってしまいました(苦笑) コメントの説明しかしてないw
ここのブログ記事の掲載できる文字数の都合上、ここでいったん区切ります。キャラとプロットに関してはまとめて紹介しようと思うので、ここが一番切りがいいでしょう。

ということで連投します。
by zattoukoneko | 2010-06-17 11:03 | 作品品評 | Comments(0)

『卒業宣言』プロット②

第2回電撃リトルリーグで受賞した『卒業宣言』についての二つ目の記事です。
どうでもいいですけど、ブログってどんどん上に積み重なるのですよねえ。文章は下に読んでいくのに……。
と愚痴ってみました。一つ目は下にありますので、見てない人はまずはそちらから。


さてプロットについて話をしようと思うのですが、とりあえず受賞時にいただいたコメントを紹介。
すおさとトミ様よりは、結末がやや中途半端(「オチ」と言っていないのに注目ですw)と、トリノミヤツチノスケ様からは全体的に淡々とした印象と、アドバイスをもらってます。
これ、まさにその通りだと思います。そして、それに関しては私もすでにプロットの時点でどうするか考えていたりします。ようはお二人のアドバイスしている部分を改善したものを出すか、私の最終的に出した形で出すか、きちんと考えています。

で、今回幽霊の女の子との話なのですよね。そして「卒業宣言」というお題。この話から私は儚さを一番重視することにしました。一応最後でこれをある程度まで壊すわけですが、完全に壊してしまってはこの穂波という幽霊の子への感情移入が途切れてしまうのではないかと危惧しました。
だから私は「オチ」を使っていませんし、多少「微笑ましい」と思わせるためにやや笑えるようにしましたが、完全なギャグにもしなかったのですね。
これに関してはとても反響が大きかったようです。この続きを希望と何人からもメッセージをもらってます。かなり多くの人が犬代穂波と主人公の関係に感情移入し、それを大事にしてくれたようです。
また全体的に淡々とした印象にしたのも儚さを出すためですね。物語ですからある程度の変化は必要ですが、劇的変化はこの作品の場合合わないと考えました。儚さって脆いので慎重に扱わないと簡単に砕けちゃうんですよね。
(でも編集の方から改めてコメントをもらえると、もっとバランスが取れたのかもしれないと思いますね。ここは難しい気がして、すぐには「これだ!」というアイデアが出てきません)

ともかく儚さを重視しようという考えがまず最初です。
したがってプロットの作成では、「卒業宣言」というお題から、幽霊とほのぼのとしたラストシーンを最初に思い浮かべ、その間を埋める儚さを入れていったものがプロットとなります。

で、儚さを出しつつ、でも大きくはないけれど確実に話のターニングポイントをどう入れるか?
案の一つとしては、全体をゆったりと進めるというものですね。ただこれは読む人を飽きさせる可能性がある。特に話の起伏を減らすとダメですね。でも儚さ重視だと起伏は大きくできない。
案の二つ目としては、エピソードをばら撒く。それぞれをとても短い話にして、話の転換点をごまかす。こっちは読んでて目が痛くなる可能性がある。そうすると読む人の負担ですね。儚さを感じるどころではない。
まあこの二つを私は考えたのですが、最終的に二つ目のエピソードをたくさん入れるほうを採用しました。

でこの採用の理由について。
私は大抵は起承転結で話を分割します。『好き好き大好き、だから嫌い』もそうですし、第1回電撃メジャーリーグに応募した『最初で最後の甘いくちづけ』も四つに分割です。もっと長い話を書くときも大体これで整えますね。プロローグやエピローグが入るくらいですか?(ただしキャラクターが増えた分、裏にあるプロットは多重になってますし、物によっては起承転結だけしか見ないと意味がわからない、なんてのにもチャレンジしてます)
ただ今回はエピソードを増やしたい。四つじゃ全然足りない。
そこで考えたのが、序・序の序・破の破・破の急・急という構成。これで一個エピソードが増えます。またこれに則ればきちんと話も折り返してくれるはず。
で、いくつかイベントを考えていきました。学校行事として自然に思いつくものはほぼ全部出したんじゃないかと思います。30は軽く出したんじゃないかな?
ただそうなるとプロットは5分割なのに、イベント数がはるかに多い。これ、どうしようか考えた末にやったのが、それぞれをさらに二つに分けるという暴挙w
元々2,000字制限です。これ10個にわけると、一つのイベントは200字で収めるしかないww 文庫の5行とかしないのですねえ、これ。これはうまくいくかは賭けです。とりあえずやってみることにしました。

でリストにした学校行事から、儚さを出せるようなものをピックアップ。いくつか入れては外して替えて、ということをやってます。
最初は出会いとキャラの紹介が必要だし、ラストはもう決まってます。なのでここの部分の2~4は固定されている(最終的に話に入り込みやすいように、出会い・紹介&今後、急1・急2と全部埋まってしまいました)。で、残りにどれがいいのか埋めていくという感じです。これ、季節も考えなきゃならないので(ぱっと読んだら一年しか経っていないような錯覚をしてもらいたかったのですね。実際には最初は入学したてという設定で、この文は削りましたが、ようは三年経過しています)、順序はかなり大変でしたね。当然文字制限というのもあります。

ただここはひたすら埋めていくだけ。気にすることは二点のみ。
  序・序の序・破の破・破の急・急という大きな構成に従う。
  各エピソードのラストに儚さを感じさせる短い文を入れる。
ということだけ。
これ二つを同時進行なので、儚さはゆっくりとですが、大きくなっていくようにしてますね。またラストも「微笑ましい」文にしなければならないと最初に決めてあったので、そこからも二つ目の各エピソードのラストに印象的な文を入れる、という形にしてます。

プロットはこのくらいです。
あとは実際に書いてみて儚さがきちんと出るか確かめていっただけ。書くといっても「頭の中で書いてみる」こともありますし、「実際に文字にして書いてみる」こともあります。ここはもうやるだけなので「プロット」という計画とは呼べないですね。自分の感性と筆力を信じるのみ。プロでない私にそんなこと自信があるわけないのですし、実際試行錯誤してますが、結果として受賞して反響も大きかったから成功したのでしょうね。
(ただし見てくれればわかりますが、各エピソードの長さが揃ってません。これは余裕なかったことがモロバレw 本当にテキトーに書いていって、たまたま2,000になった辺りで語感を調整しておしまいです)



さて、キャラクター設定にいきましょうか。
こっちも手抜きです。大して語ることなどないw

まずはヒロインから。
名前:犬代穂波(いぬしろほなみ)
名前は音が三つで文字は二つが儚さが出るかなと。また「はひふへほ」などは結構儚い印象を出しやすい音なので(息を吐いて出す音ですから)、ここから穂波と決定。漢字はこちらも儚い感じを出すためになびくものをチョイス。(これ、最初のほうで「髪と白装束がなびく」という文に出してますね)
   名字の犬代は本来なら主人公が持つはずのもの。「犬」の「代」わりですから。ですが後述するように主人公には名前を与えられないのでこちらに持ってもらいました。
性別:女
一人称:私(文字制限のため)
年齢:死亡時は15歳(高校入学した直後)
身長:特に指定はなし。
ただ主人公と並ぶくらいだと思っていて、地面から浮いているとなると160くらいだろうな、とは思ってました。
服装:白装束
これは死んでいるからというよりは、儚さを表すカラーで選んでます。
髪:腰まで届くくらいの長髪。真っ黒。
長さは風でなびかせるため。髪も細くて軽い。色が黒なのは白装束とのコントラスト、かつ死のカラー。

主人公
名前:指定なし。
文字数とイベントの数から判断して紹介する余裕はないと判断したので決める気なし。
性別:男
一人称:僕 文字数稼ぎでもあり、かつ大人しめの印象にするため(儚さより)
年齢:15→18 こちらは成長しますからね。
身長:165くらい。まあ、背は高くないよなあ、儚さ消えるし。以上。
服装:黒の学ラン(黒なら別にブレザーとかでもいいんですけど、あまり見かけないので)
   この黒は穂波との対にしてるだけ。特に深い意味はなし。
髪:指定なし。でも多分黒じゃないですかねえ?

と、これだけ。
前回の『好き好き大好き、だから嫌い』と比べてもらえればわかると思いますが、ほっとんど何も考えてないです。
また今回は話の分割が先だったので、キャラクター設定はほとんど書きながらその場で決めて、後で調整してます。ですのでこの話はキャラクターのノートとかつくってません。
ひたすら思いつきを書いて、上書きして、文字数減らして、そして提出。以上でおしまいです。



という感じなので実はこの作品は手抜きの産物ですw 気に入ってくれた人いっぱいいるけど、申し訳ない。私はこれより『好き好き大好き、だから嫌い』のほうに評価がほしい(苦笑)
構想期間も短いですね。『好き好き大好き、だから嫌い』はお題を見てから様々な話の案を出しては捨て、出しては捨て、を繰り返して一週間後くらいで30ほど出した中の一つを形にしたもの。出来上がるまでさらに一ヶ月とかかかった気がします。(えっと、ファイルの保存日時が2007/05/16 8:35となってますね)
一方で『卒業宣言』は一応いくつか案を出してますが、すぐにこれ一本に決まりましたね。(ファイルの最終保存日時は2008/01/24 4:17です)
まあ、と言いますか……タイトル縛り厳しすぎます、電撃さんorz キーワードのときはいくらでも自由にできましたけど、タイトル固定って望まれてるものをまず読み取って、それを網羅するか、編集部の方が想像もしてなかったようなとんでもないやつ出すかの二択ではないですか……。

ということで、
リトルリーグになってから厳しすぎるよ!
と叫んでおしまいでーす。
by zattoukoneko | 2010-06-17 11:03 | 作品品評 | Comments(0)

山本様への回答①

山本辰則様からの質問に関して、ざっとだけ回答を出しておこうかと思います。ただ読んでみた感じ、きちんとプロットなどを明記したほうがよさそうな気がしました。ですのでそれらもちゃんと出す方向で。

「序、破の序、破の破、破の急、急」の構成に関してですが、受賞時に出したコメントに書いてある通り、「×2」しているので、単純に2個ずつ数えてもらえればいいかなと思います。
ただこれは山本様もわからなくて仕方ないかなと思います。『好き好き大好き、だから嫌い』でもそうでしたが、かなり無理矢理「起承転結」を入れていて、また今回は後で見せるように“ある程度”の意識しかしてないということになります。
「起承転結」や「序破急」というのは明確な意味があってつくられているもので、ただただ事件の発生やストーリーの盛り上がりを入れればいいというものではなかったりします。もちろんこれを必ず守らないといけないというわけではないですし、そればっかりやっていては似たような話しか世に出なくなってしまいます。ただこれまでの歴史(物語というのがいつできたか知りません。神話だって物語といえるだろうし、口頭で何かを伝える事だって「物語り」なので、相当な長さになることは必至)を考えるとそれが成立してきたのにはやはりきちんとした理由があると考えた方がいいかと。それを踏まえた上でそれをどう壊すかが課題な気がします。私としてはどんな天才(Giftの方)であろうと無から新しいものを創造するのはできないであろうと感じますし、仮にできたとしても世に受け入れられないのではないかと。

…………何やら哲学っぽい話に?
まー、いいかー。このペースで行っちゃうべし。(←この時点で本当は切り替えられると思われ)

起承転結や序破急の話はざっとこっちでしてますね。ハリウッド映画のシナリオ構造
これを見てきてくれればわかるように、私の掌編は一応これを踏まえつつ、でも崩さざるを得ない感じのものになっています。最初にキャラの紹介くらいはしてますが、「課題」はきちんと与えられていないですし、そうなれば転での盛り上がりも少ないですよね。

話は『卒業宣言』に戻りますが、こちらは「序、破の序、破の破、破の急、急」を使ってます。これなかなかに説明が難しいのですが、簡略化すると破の中に序破急が入ってる、入れ子式みたいなものです。破って時間的に長いのでここでまた話に盛り上がりを作っているのだと思ってくれればいいかと。
なお五段構成としては、起承鋪叙結なんてものもあります。中国の散文なんかで使われているようですが、「序、破の序、破の破、破の急、急」とそんなに変わらないですし、日本人としては馴染みが薄いような気がします。ハリウッドのスリーアクトストラクチャーなんてのは(やりたいことは同じですが)かなり日本の手法と違うので取り入れてみたいところですが、起承鋪叙結はどこまで価値があるのか私にはよくわからない感じです。ハリウッドの映画は結構見られてるから、うまくやれば小説に落として受け入れられる気もしますけど、中国の散文なんて読む人は少数派でしょうから。(が、その分もしかしたら意外な穴という可能性もありますけどね)
ただ2,000字という短さだと(他の作品もそうですが)うまく入らないのですよね。一応可能らしいということはわかってきましたが、これと同時に最後のインパクトを考えなければならないとなるとなかなかに難しいですね。綺麗に入れすぎるとまさに“綺麗に”話が終わってしまうので、掌編の特性が活かせてない気がします。掌編は掌編と考えて別個のものとすべきなのか、やはり同じ物語としておきつつその上で掌編を書くかではないかなあと。
…………実は長編書くより掌編の方が圧倒的に難しいんじゃないですかね? 私も毎回泣きながら書いてますし(汗)


あと、全体の分量についてですが、これは実はほっとんど適当です。これはプロットなどを見せればわかるかと。カラーも決めてあるのでそちらも書きますね。
それとオチに関しても。私自身「微笑ましいオチ」と書いているわけですが、実は全然オチだと思ってません。じゃあ、なんでそんなこと書いたのか?、ということも含めて説明しますね。
by zattoukoneko | 2010-06-17 11:02 | 作品品評 | Comments(0)