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『世界を凍らす死と共に』1-4-2


 夜も大分更けて俺は自室のベッドに体を転がしていた。今日は月が明るいのか、電気を消した室内でも物の形は十分に判別できるほどだった。俺はぼんやりと闇の中に浮かび上がるそれらの姿を眺めながら、今日あったことを思い起こしていた。
 当然ながら一番の衝撃は父さんを殺した犯人が柊だったということだ。普段から柊は唐突に過激な言動を取ることがあったけれど、だからといって人を殺めるようなことまではしないと思う。なら彼女が殺人を重ねていたというのなら、その要因が別の何かにあったという説明は納得のいくものだと感じる。それを柊や母さんは怪と呼んでいた。
 今朝には真琴が父さんの死について不条理だと感じないかと訊いてきたけれど、不条理という言葉はともかく、確かに納得できない部分はあった。犯人が捕えられたにもかかわらずその罪が問われていないことや、実の息子なのにその事情を詳しく説明してもらえていなかったことなどがそれだ。ただ警察はきちんと判断してそのようにしたのだろうと思っていたし、話を聞いた母さんが納得しているようであったから不満とまではならなかっただけだ。
「まあ結局どこにも不条理なんてなかったってことだ。怪というのが想いの積み重ねで発生するものだというのならそれは自然の摂理に則っているし、事件の原因がそちらにあるとなれば人を大事にする父さんなら犯人の罪は追及しないに違いないし」
 俺がそのように結論付けて頭の下で手を組んだときだった。部屋のドアがノックされ、向こうにある廊下からやや控えめの声が聞こえてきた。
「鏡夜くん。ちょっと話をしたいんだけど、いいかな?」
 それに応えて、部屋の電気を点けてから扉を開け、俺は声の主を招き入れた。俺はベッドに腰掛け、母さんは少し離れたところにある勉強机の椅子に座る。来る前に寝ることも考えていたのか、髪を一つに束ね、薄手のパジャマに身を包んでいた。
「お父さんの事件についてずっと話せなくてゴメンね」
 伏し目がちに謝るその姿を、俺はいつもの母さんらしくないと思った。普段はもっと明るくて賑やかで。それとは随分対照的だったので、俺は笑みを浮かべながら応じた。
「色々複雑な事情があるというのは聞いたから。それで話せなくなるのは仕方のないことだと思うし、だから別に謝らなくていいよ」
「……」
 けれど俺の言葉に母さんは余計に重苦しく沈黙した。二人とも起きてこの部屋にいるはずなのに、時計のカチコチと鳴る音がやけに響く。
 しばらくしてようやく話し出した母さんは、まだ何事か逡巡している様子で視線を彷徨わせていた。
「ずっと事件のことを話せなくて、今日やっと話をして、それなのに直後にこんなことを言うのはヒドいのかもしれない。その判断ができないってことはまだ鏡夜くんの本当の母親になれていないってことなのかも……」
「うん? 母さんは母さんだろ。父さんとの結婚も俺は認めたし、今でも家族の一員だと思ってる」
「そうなんだよね、鏡夜くんの中で私の存在はそういう風に捉えられてる」
 そのつぶやきの真意を訊き出す前に、母さんは今度こそしっかりと俺の姿を視界に入れて言葉を伝えてきた。
「鏡夜くんにはお父さんの死を仕方ないものとして受け止めて欲しくないの」
「え?」
「多分鏡夜くんは、お父さんは刑事だったから殉職も仕方がないと納得していたと思うの。そして今日紗樹さんと話をして、彼女がお父さんを殺した人物であることや、怪の存在を知った。そしてそういう事情があるならと、余計にお父さんの死を仕方がないものとして考えるようになったんじゃないかって思う。でもね、私たちはまだ鏡夜くんに全部を伝えきったわけじゃないんだよ? 話せていないことがまだあるの」
 いつもより早口で喋る母さんの目尻が窄められ、滴のようなものが滲み出していた。
「そもそも怪はどうして紗樹さんに取り憑いたの? 取り憑かれた紗樹さんには自覚がなかったの? 自覚があったとしたらそのことを誰にも告げなかったのは何故? 私はそれを知らされたから紗樹さんを許してお父さんの死を受け入れることにした。その上で残された私に出来ることは何かって考えた。それがきちんと出来ているかは自信ないんだけどね。でも鏡夜くんはそうした事情を知らないの。だからまだ鏡夜くんにはお父さんの死を仕方のないものだったとして考えて欲しくはないの」
「確かに俺は事件の詳しい経緯を知らない。でも警察や柊、母さんはそれを伝える必要がないと判断したから――」
「逃げだよ、それ」
 はっとして俺は向かいにいる母さんの顔を注視した。
 怒っているのだと思う。いつも笑顔でいるからそのような表情をこれまで見たことがなかった。だから明言は出来ないけれど、でも母さんは怒っているのだと感じた。
「鏡夜くんはいっつも不満を言わない。生んでくれたお母さんを亡くして、お父さんは同級生に殺されて、本当なら自分は不幸だって泣き喚いていてもおかしくないのに。でもみんなには事情があるからって、そう片付けて納得して済ませてる。結局それって世の中の出来事から目を背けてるだけだよ? それも一つの処世術だけど、でも鏡夜くんは本当にそれでいいの?」
 母さんの言葉で、何故かはわからないけれど美術室でのやり取りを思い出した。あのとき柊は俺が逃げ腰になっていると主張した。それと今の説教がどこか重なる感じがする。
 でもだからといって俺は何をすればいいのかわからなかった。柊は怪が存在するならそれを見過ごせないと言っていた。母さんは具体的には述べていないけれど、父さんが死んでより母親らしくありたいと考えるようになったみたいだ。そんな二人と比べたとき、俺は何をこれまでしてきたのだろうか?
「……」
 俺はベッドから離れると、鞄の中にいつも入れて持ち歩いているスケッチブックと鉛筆を取りだした。それから紙の上に鉛筆を走らせる。短い時間だったし、ざっとしたデッサンにしかなっていなかったけれど、描きあげたものを母さんに見せた。
 母さんは少し驚いた顔をしてから、でもすぐに嬉しそうな笑みを浮かべた。
「私、怒ってる自分の顔なんて初めて見たかもー」
 ついさっき俺に向けられていた表情をスケッチブックに写してみた。そしてその絵を見た母さんは、直前まで自分のしていた表情だと気付いて喜んでいる。
 この絵を柊に見せたとしても破り捨てられることはないだろう。自分でもこれは駄作ではないと明確にわかった。
 何かを掴みかけているのかもしれない。その正体はまだ判然とはしていないけれど、今回の一件で辿りつけるような予感があった。きちんと整理しないまま置き去りにしてきていたものが、そこかしこに点在している感じがするのだ。
 事件のこと、父さんのこと、怪のこと、柊のこと。他にもあるかもしれないけれど、まずは目についたそれらからもう少し見つめてみよう。そう決意すると手にしていたスケッチブックを脇に置いた。
 紙の上には生きている母さんの表情。そこにまだ色はない。


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by zattoukoneko | 2013-04-07 07:15 | 小説 | Comments(0)

『世界を凍らす死と共に』1-3-2


 玄関先でインターフォンを鳴らして帰宅を告げると、中からパタパタと軽快なスリッパの音が移動するのが聞こえてきた。連続殺人事件がありはしたものの、この辺は特に物騒というわけではない。近年いくらか発展してきてはいるものの、まだ近隣の人たちとの横の繋がりがあるからか、空き巣や強盗の被害があったなんて今まで聞いたことはない。ただ母さんはまだ若いし、気を許しやすい人だから在宅中でもきちんと鍵とチェーンをかけておくようにと約束してあった。
 まだ暗くになるには余裕を残した夕方の空気の中、チェーンが外れる少し大きな音が響き、続いて開かれた扉から俺より少し小柄な姿がまろぶようにして出てきた。飼い主の帰りを待っていた子犬かと思うほど嬉しそうな笑顔を向けてくる。
「お帰りなさい、鏡夜くん。もっと遅くなるのかと思ってたからびっくりしちゃった」
「あ、うん。ちょっと用事ができちゃったから」
 俺の返事は歯切れの悪いものになっていただろう。母さんも怪訝そうな顔をしていた。
 その母さんの視界の中に入るように、それまで後ろで控えていた柊が姿を現す。
「お久しぶりです。青葉さん」
 柊の姿を見て母さんが驚きで目を丸くする。それからすぐに居住まいを正しながら挨拶を交わした。
「お久しぶり。二ヶ月ぶりくらいになるのかな。その後は連絡取ってなかったけどお元気そうで」
 母さんの態度で確かに二人は知った仲だったのだと思わされた。そして「二ヶ月ぶり」という言葉から、そこに父さんの死んだ事件が深く関わっていることもわかった。
 柊をリビングに通すと、すぐに母さんはもてなすためのコーヒーの準備を始める。俺も手伝おうとしたのだが「ちょっと心を落ち着かせたいから……」と断られてしまった。考え事をしながらのようだったから少し時間がかかるかもしれない。仕方なしに俺は柊がいるソファで待つことにした。
 様子をずっと目で追っていたらしい。戻ってきた俺に柊は話しかけてきた。
「新しいお母さんとは仲良くやっているのね」
「まあな。俺より年下だったから最初は戸惑ったし、父さんがいなくなってからも一時はどうなることかとも不安になったけど。でもそれ以前は俺一人で家事はやっていたんだし、受け入れてしまえば楽なもんだったよ」
「なるほど。実を言えばわたしはお父さんが亡くなられてから、御薗木くんが青葉さんを襲ってしまわないかと危惧していたのだけれど、逆に青葉さんの方から迫ってきたのでそれを受け入れたとそういうわけね」
「ちょっと待て、どうしてそういう話になるんだ」
「冗談よ」
 さらりと言ってのける柊に、俺は思わずこめかみを押さえる。せめてもう少し顔に出してくれればわかりやすいのに。
「……でも半分くらいは的を射ているのかしら? 青葉さんとは親しくなるほど話したことがあるわけではないけれど、御薗木くんの性格を考えれば自然な成り行きでそういうこともあり得るのかもしれない」
「だからそんな間違いは――」
 反論しようと俺が顔を上げると、柊は表情を柔らかいものにしていた。
「経緯はどうあれ、仲の良さそうな家族関係を構築できているようで羨ましいわ」
 他の人だったら微笑みを浮かべていたかもしれない。柊が口にしていたのは変な意味ではなく、人付き合いについてだったらしい。ただ当事者だとよくわからないもので、柊の不意に見せた表情と相まって何を喋るべきか戸惑ってしまう。その間に彼女は顔を引き締め、話題も本題へと替えてきた。
「一連の事件に関しては少し事情が込み入っているし、予備的な知識も必要となるから先にその辺りを整理しておきましょう。まず初めはこの世界の法則に関して。小学校でも習っているし、日常のことだから何をいまさらと思うかもしれないけれど」
「わかった。俺にはそれが事件とどう繋がるのか皆目見当が付かないんだが、それはきちんと説明してくれるんだろ?」
「そのつもりよ。むしろその繋がりを知っていてもらわないと意味がわからないと思う」
 俺の了承を受け、柊は話を始めた。
「この世界には様々な想いが溢れている。その中には生物のものだけではなく、非生物のものも含まれる。想いは互いに共鳴しながら何かしらの現象を引き起こすのだけど、世界に作用するだけの力を引き出すにはそれなりに大きなものになっていないといけない」
「確か人間は感情が複雑だから、他の生き物に比べて想いが膨らみやすいんだったよな。でも『寒くて凍えそうだからマッチに火が点いて欲しい』と願うくらいじゃ全然ダメで、実際に擦って点火しないとならない」
「そう。想いは大きくならないと現象を引き起こさないけれど、想いは複雑だから一つのものになりにくい。童話の少女も火が点くまでそれを願うより、物理的に頭薬に摩擦熱を加えた方が早いと考えたからそうした。でも寒さを凌ぐことよりも暖かい家庭の情景を強く思い描いていたから、その映像がマッチの灯りによって投影された」
「童話はあくまでお話でしかないから、実際にその映像が投影されたかどうかまではきちんと言及されていないけどな。マッチの灯りに注目したのは面白いけど、さすがにどこかの映像が転送されてきたなんてことはないだろうし」
「でも物語でもきちんと現実の世界通りに描かれている部分もあるわ。それは死によって周囲の温度が冷えるということ。マッチ売りの少女は死んで、周囲に雪を積もらせた」
 言われて父さんの死んだ現場を思い出した。もう夏も終わろうというのに公園は未だ凍りついたままだ。
 どうやら柊もそれを意識して口にしたらしい。人の死と想い、それによる温度低下に焦点を絞って話を続ける。
「人の死は当人の想いを停止させるし、同時に周囲の人の気持ちも冷たいものにする。だから現象として現れやすいの。もちろん心穏やかに死ぬ人もいるし、その場合はほとんど温度の低下は起こらない」
 彼女の話していることは俺も十分理解している。最初に言われたようにその内容は常識と呼ぶべき類のものであったし、また俺も実の父と母を亡くしているから、この年齢ですでに死にも直面している。父さんは死んで公園を凍らせたが、母さんのときは何も起こらなかった。つまりはそういうことだ。
 しかし柊が次に述べたことには思わず首を捻ってしまった。
「でも先の連続殺人事件ではすべての人の周囲が凍りついた。それを考えるとあの一連の出来事は自然なことではなかったとわかるでしょう?」
 彼女の言う通り、年が新しくなった頃から始まった連続殺人の被害者はすべて氷漬けになって遺体が見つかっている。十人目の被害者で、最後に殺された人物である父さんも例外ではなかった。棺に収められた彫刻のように硬い姿を、今でもはっきりと覚えている。
 でも俺は殺人という残虐な行為を受けたから、亡くなった人は周囲を凍らせたのだと思っていた。犯人に対しての怒りや不満が心を冷たくしているのだと。だから辺りの気温も急激に下がって氷ができるのだと。
「それは逆よ、御薗木くん。憎悪は煮えたぎるように熱い。だから憎悪が強ければ周囲の温度はむしろ上がるはずなのよ。ただ死ぬときに殺した相手を憎んだとしても、それ以外にやり残したことや親しい人のことを思い浮かべたり、死ぬことに対しての恐怖感が出て別の想いが入り混じるため、火の海が発生するなんてことはまず起こらないだけ。それに比べれば気持ちが冷めるというのは起こりやすいし、だから時に周囲に氷を発生させるのだけど、それでも毎回必ずそうなるというものではないわ」
「だとしたらこの町で起こっていた事件の被害者はどうしてみんな氷漬けになったんだ? 口ぶりからすると柊はその理由を知っているみたいに聞こえるんだが」
 俺には彼女を責めているつもりなど毛頭なかったのだが、どうしてか柊は言葉を詰まらせたようだ。ただそれも一瞬のことですぐに会話を再開する。
「あの事件には人ではないものの力も関わっていたの。その影響で周囲が冷たくなることが促進された」
「人ではないもの?」
「怪と呼ばれているそうよ」
 その台詞に俺は苦笑いしてしまった。飛躍があまりに大きい。
「それは妖怪とかそういう類のもののことを言ってるのか?」
 思わず口に出してしまったその皮肉に、しかし柊は気分を害するでもなく前言を撤回するでもなく、いつもと変わらぬ表情のまま頷き返してきた。
「妖怪は伝承だから少なからず創作も含まれているけれど。でも想いは人のものだけではないのだし、積もり積もれば現象として形になる。雪国に雪女の民話が多いのはその顕著な例だと言えるでしょうね」
「……つまり何か? 俺の父さんは妖怪に殺されたと?」
「怪は妖怪のように実体は持たない。けれど人に取り憑くことでその相手の想いを増幅し、暴走させる。御薗木くんのお父さんは怪に取り憑かれた殺人犯を追っていて、そしてその相手に殺されたの。犯人は他の警官に捕まえられて、そして怪も消されたのだけどね」
「…………」
 柊は至って真剣な表情のままそれを崩そうとしない。しばらく彼女を見つめていたが、逆に真っ直ぐな視線を返されこちらの理解を促されてしまった。
 想いは人間や高等生物だけのものではないし、気象にも左右されて複雑に作用する。雨の日に人が憂鬱な気分になって外に出るのを嫌がるのと同じで、嵐の気配がすれば動物は巣穴から外に出るのを控え、生き物の喧騒がなくなると草木や岩も佇まいを大人しいものにする。そうやって静寂というのが生み出されるのだ。
 そして想いは蓄積もする。静かすぎる場所には生き物が寄り付かなくなり、やがて淀んだ空気を形成する。重く鈍くなった空気は鳴る音を響かせにくくすることで、さらなる静寂をその場に漂わせようとする。
 そういうことが繰り返されて想いが大きくなれば、怪というのも生じるのかもしれない。感覚としてそれは正しそうに思えた。
 ただ俺は怪というものに遭遇したことがないし、これまで話も聞いたことがなかった。
「怪っていうのはそれだけ珍しいんだって。昔はそれこそ妖怪と同じものとして扱われていた。ようやく最近になって存在が明らかになってきたらしいんだけど、事例が少な過ぎてどういうものかきちんと把握ができてないみたい。だからまだ公表するには至らないと、お父さんの同僚の方が教えてくれたよ」
 声のした方を向くと、コーヒーカップを運んできた母さんが寂しげな笑みを浮かべていた。トレイに載せられたマグカップから出ている湯気は少し薄くなっており、中身は幾らか冷めてしまっているのだと思われた。
「今まで話さないままきちゃってゴメンね。ただ心の整理をする時間がみんなには必要だったし、何より私にその時間が欲しかったから……」
 そう告白してくる母さんに俺は何も言えなかった。短い間だったけれど、ずっと年上の父さんと結婚してその幸せを感じているときの顔を知っていたし、父さんが死んですぐのときの表情も覚えていたから。それに父さんが殺されるその現場に母さんはいたと聞いていた。
 俺が一言も発せないままでいるその隙に、柊が母さんに対峙していた。
「御薗木くんには話の途中ですけど、キッチンとはこの距離ですし内容は聞こえていたと思います。わたしには青葉さんの気持ちの整理がどうなっているかわからない。だから率直に訊こうと考えたのです」
 そして彼女は言った。
「青葉さんはわたしを殺そうとしていませんか。あなたの夫を手にかけたこのわたしを」


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by zattoukoneko | 2013-04-07 07:14 | 小説 | Comments(0)

『世界を凍らす死と共に』1-3-1


   三.


「早乙女くんに絵の才能があるのは確かよ。ただそれで生計を立てていくのなんて無理だし、他の職に就いたってあの性格じゃやっていけないでしょうけどね」
 隼人に圧倒的な力の差を見せ付けられ、すぐに絵を描く作業に戻ることは俺には出来なかった。柊もそのことは察してくれて、今は彼女の姿の描かれたキャンバスを向こうに置き、椅子に腰かけている。彼女も作業にすぐ戻るつもりはないのか眼鏡をかけていた。レンズの奥にあるその視線は相変わらず冷たいものだったが、さらにその奥底にまで潜り込むと色々なものが渦巻いているのだろうと思われた。そしてそれを隼人の絵は巧みに描き出していた。
「柊は隼人のことが嫌いみたいだけれど、もしかして絵に真剣に取り組んでないことが理由なのか?」
 彼女の視線と先程の言葉からそんな推測をしたのだけれど、柊はちょっと考える素振りを見せてから首を横に振った。
「最初のきっかけは確かに美術部に所属し、力もありながらまったくやろうとしない様子が気にかかったことだったわ。でもそれは所詮のところきっかけに過ぎない。早乙女くんは物事の深いところにある本質までいとも簡単に見抜くくせに、それを知っていながら助けようと手を伸ばすことはけしてしない。人間も世界も、それがどうなるかなんて彼にとってはどうでもいいのだわ。その無頓着なところがわたしにはどうしても許せないのよ」
 もし柊が一般的な女子生徒ほどに感情を表に出す子だったならば、このとき彼女は歯ぎしりしていたかもしれない。柊と隼人の間に何かあったことは明白で、そのことが理由で柊は相手のことを嫌悪している。
 隼人も柊のことを嫌いだとは言っていたが、それが本音かどうかはわからない気がした。彼が残していった柊の絵には『愛してるよ』との文字が乗っているが、別にそれが理由でそんな感想を持ったわけではない。書かれた文字は遊びや挑発の類かもしれないし、むしろそのように捉えた方がいいのかもしれない。俺は柊の言葉から、隼人が人を本気で好きになるような人間ではないと感じていたのだ。
 彼がどのような想いを抱いているのかはわからない。それでも厳然としてここに存在するのは俺に突き付けられた一枚の絵と、それによって引き起こされた敗北感だ。
「確かに口で伝えられてもこれはわからなかった。よく芸術に優劣をつけるなと言われるけれど、作っている人間として力量の差を感じないのもまたおかしい。俺は隼人に美術の力で劣っているし、その理由は才能の有無じゃなくて人としての姿勢にある。そう伝えたかったんだろう、柊は?」
「ええ、その通りよ」
 即答され、一方で俺は頭を抱えるしかなかった。
 人間性を否定された。その欠陥のせいで描くものはすべからく駄作になると告げられた。そしてそのことが正しいことを、目の前に物的証拠でもって示された。それでも俺の何が問題なのか、未だにわからないままだった。
 これでは前に進もうにも、根元からへし折られていて動きようがないじゃないか。
「誤解をしてもらっていては困るから、これだけははっきりと言っておくのだけれど」
 頭を上げて言葉をかけてきた相手に目を向けると、彼女は濁りのない瞳でこちらを真っ直ぐ見つめていた。
 柊はその瞳に俺の姿をはっきり映し、それから再度口を開いた。
「わたしは御薗木くんの人格を否定しているわけじゃない。人間として駄目だとも言っていない。むしろ素敵な人だとすら思うわ。あなたのやろうとしていることは尊敬するに値するほどのものだもの。けれどそれがとても難しいことだから、だから逃げ腰になってしまう。絵にはそれが顕著に出てくるというそういうことなのよ」
 間近でそのように説く柊の吐息が肌に触れる。気付いたときには、少し顔を動かせば彼女の唇に触れるのではないかと思うくらいの距離に柊は接近していて、その場所から俺に語りかけていた。
 胸が自然と高鳴るのを感じる。それに気付いた次の瞬間俺は顔を背けていた。
「そんなこと言われても困るだけだよ。俺には自覚がないし、出来ない。逃げているということに関しても、尊敬に値するということに関しても……」
「そうね。言葉で説明してすぐに直るようなら苦労しないし、わたしも最初からそうしていたものね」
 柊がようやく体を離す。俺が安堵の息を吐いていたら、次の言葉が不意打ちになって容赦なく突き刺さった。
「結局のところ、御薗木くんが取りかかっている今の絵はどうしたところで駄目なものでしかないわ。駄作の範疇でやれるだけやって、それでコンクールには出して満足なさい」
「……きっついな。どう足掻いたところで俺の描きたいと望んでいる『生きている絵』にはなり得ないってことか」
「駄作でも完成度を上げることはできるから、そのためのアドバイスはするけれど。それ以上を求めるとしたらわたしからは同じ言葉を――」
 その柊の言葉を遮って俺は彼女の腕を引っ張った。
 自分が何を感じて何をしているのかも頭で理解していなかったが、ただその細い女子の腕を力任せに引っ張っていた。柊は抵抗する余裕なんてなかったろう。体が椅子に座っていた俺の胸にぶつかり、しかし俺もそれを支えることまでは考えていなかったために床に二人で倒れ込む。
 転がる椅子。散らばる画材道具。そして腕の中でこちらをじっと見ている柊の双眸。
「……何かしら?」
 柊の声に俺は慌てて彼女の体を離した。
「す、すまん。自分でも咄嗟のことで何が何だか。怪我とかしてないか?」
「ええ、特には」
 立ち上がろうとする柊に気付いて手を差し伸べるも、それはあっさりと忌避された。制服を手ではたきながら、こちらを見ようともせずに彼女は一方的に言葉を並べた。
「放課後の美術室に若い男女二人で籠もるんだもの、そりゃあそういうことをされる可能性も多少は考えて来てるわよ。だからといって実際にやられたくはないものだけれど」
「いや待ってくれ柊。確かに紛らわしい行動を取ってしまったのは悪かったが、けしてそういう意図があったわけじゃなくてだな」
「じゃあ何が目的だったのかしら。わたしを床に倒して御薗木くんにどんな得があるのかきちんと説明して頂戴?」
「えっと、それは……」
 俺は言い淀みながら物が散乱している美術室を見渡す。さっき何か妙なものを感じたのだ。それであんな行動を取った。ただその正体までは掴めていなかった。
 二人して倒れ込んだときの勢いはかなりのものだったのだろう。座っていた椅子はもちろんのこと、俺のキャンバスや隼人が残していった絵も倒れてしまっている。自分ではそんな力を込めた覚えも、大きく体を動かした記憶もないのだけれど。
 そんな中で柊が小さく声を漏らした。
「あ……」
 彼女の視線の先にあるのは隼人の絵だった。よくよく見るときらきらと輝くものがいくつも突き刺さっている。
「氷か、あれ?」
 ガラスの破片などとは光の反射の仕方が大きく異なる。刺さっているものも薄いものではなくて、どちらかというと円錐形に近かった。
 俺が上げた疑問の声に対し、しかし柊は気付かなかったのか、口元に手を当てて何事か考え込み始めた。
「あれは消えたはずじゃ? 警察もそう説明していたはず。それにどうしてわたしが狙われているの?」
 周囲を見回すと、部室のドアにはめ込まれているガラスが割れていた。もしかしてあそこから絵に刺さっている氷のような物体は飛び込んできたということなのだろうか。だとしたらその軌道上には柊がいたことになる。俺が彼女の腕を引いていなければ、氷の塊は絵ではなく本人に突き刺さっていたかもしれない。
「柊にはあれが何かわかるのか?」
 発した問いかけに、まだ眉間に小さく皺を寄せたままながらも、柊は返事をしてくれる。
「そりゃあわかるわよ。わたしは――」
 けれど柊はそこではっと何かに気付いた様子だった。そして俺の方に顔を向ける。
「そういえば御薗木くんは事件のことを詳しく知らされていないのだったわね。それならあの正体が何かわからなくても仕方ないのかもしれない」
「事件?」
「夏前にあった連続殺人事件のことよ。御薗木くんのお父さんが殺されたあの現場にわたしはいたの」
 柊の台詞を聞いて体が硬直した。網膜に棺桶に入れられた氷漬けの父さんの姿が浮かぶ。思考まで固まりそうになって、直前に何とかその映像を振り払う。
 長くもない言葉だったのに、柊の口にしたことを頭に入れるのに随分と時間がかかってしまった。唇とはこんなに重いものだったのかと、そんなことまで考えながら尋ねる。
「つまりは、柊は父さんが死んだ事件の関係者と、そういうことなのか?」
 問いかけに柊は首肯して応えた。
「ええ、その通りよ。警察からは息子である御薗木くんには詳細を伝えないことにしたとは聞いている。いつかはきちんと話すべきだとは思っていたけれど、時機を伺うべきだとも忠告を受けていたから」
 一体どういうことなのか。実の息子であるはずの俺には父さんの死の真相は告げられず、代わりに赤の他人である柊が知っているという。その場にいたというから当然なのかもしれないが、しかし『時機を伺うべき』というのは誰がどういう意図で彼女に言ったものなのか?
「これはその時機ではないとわたしは感じてる。けれど事態が事態だから話をすることにしましょう。ただ確認したいこともあるし、もう一人の関係者も交えたいわ」
「もう一人の関係者?」
「そちらの人物に関しては、御薗木くんの方がよく知っていると思うのだけれど?」
 誰何の声に柊は怪訝そうな表情をして見せた。少し撥ねさせた眉を元の位置に戻すと、相手の名を告げた。
「御薗木青葉さん。あなたのお母さんであり、亡くなられたお父さんが一年ほど前に妻に迎え入れた人。そしてついさっきわたしを狙った張本人かもしれない人」


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by zattoukoneko | 2013-04-07 07:13 | 小説 | Comments(0)

『世界を凍らす死と共に』1-2-2


 柊紗樹という人物を端的に表わすとしたらどのような言葉になるだろうか?
 窓から差し込む夕陽を横顔に受けながら、パレットから絵具をナイフで淡々と運んでいく。その行為からは夏の暑さや眩しさ、油絵具の匂いなどまったく気にもならず、それどころか自分の描いている物にすらさして興味がなさそうな印象すら受けた。にもかかわらずその絵は躍動に満ちているのだ。色彩のわからない俺にもわかるほどに。
 灼熱の塊を内に秘めているのかもしれないが、その正体を知ることはできないほどに冷え切った人間。それが柊紗樹だった。
 取りかかっていた抽象画を描くのをぴたりと止めた柊は、パレットをそっと脇に置くと注意していないとわからないくらいの小さな溜め息を吐いた。
「御薗木くん、わたしのことばかり見ていないで、自分の作業に集中したらどう?」
 どうやら俺が少し前から彼女に視線を送っていたことはばれていたらしい。言い訳がましいとは思いつつも、事実なのでそのまま告げる。
「ちょっと詰まっちゃったからアドバイスをもらえないかと思ったんだけど、集中してるみたいだったから。柊の描き方にも興味があったし、見学させてもらってた」
「見学は別にいいのだけれど、それならそうと言って欲しいものだわ。わたしの絵の醜悪さを見てほくそ笑んでいるのかと思ったじゃないの」
 俺にはそんなことをする趣味はないし、仮にあったとしても柊相手にそんなことが出来るはずもない。
「あら、それはどういう意味かしら。性格の悪いわたしには、口が裂けても直接悪口は言えないということ?」
 いつの間に柊は俺の目の前にやって来たのだろうか。気付くと喉にナイフが突き付けられていた。
 そういえばさっき脇に置いたのはパレットだけだった。細めた目でこちらを睨みつけてくる柊に抗議の声を上げる。
「いくら画材道具とはいえシャレになってない。それにその猛禽類が獲物を狙うような目つきもやめてくれ。冗談に聞こえない」
「冗談なんか言っていないし、言わないわよ。わたしは真剣に、御薗木くんが馬鹿にした気持ちでこちらを見ているのかと尋ねているのだわ」
「……そんな風に見ているわけないだろ。柊の絵の才能は素晴らしいと思うし、だからこそ指導をお願いしてる」
 俺がそう答えるのを聞いて、しばしこちらを見つめてから、ようやく柊はナイフを引いた。屈めていた腰を真っ直ぐにし、長めの髪を耳にかけながらぶっきらぼうに言う。
「あらそう。まあそれはわたしもわかっていたからさっきのは冗談よ」
「冗談なんて言わないんじゃなかったのか……」
 俺が嘆息しながらそんな言葉を口にすると、柊はまた先程の鋭い視線で睨んできた。悪意はないと両手を上げる。
「ちなみに目つきが悪いのは眼鏡をかけていないからよ。絵を描くときは外しているから、自然と目を細めてしまうの。別に睨もうとして睨んでいるわけじゃないわ」
 先程のことがあったのでそれも嘘じゃないかという疑念が一瞬湧き起こった。しかし確かに柊は普段縁の細い眼鏡をかけていて、そして絵を描くときには外している。通常ならそれでは描いている最中の絵もはっきりと見えないのではないかと思うところだが、彼女の作業風景を知っている者からすればそちらが自然なことだとも納得できる。柊は目に直接見えないものを絵の中で描いていた。
 何にせよ柊はやっと絵の相談に乗ってくれる気になったらしい。詰まっているのは何処かと尋ねてきた彼女に、キャンバスの方に体の向きを変えながら答える。板に張られたワトソン紙に描いてあるのは、丸いガラス花瓶に活けられた雁金草だ。
「いきなり抽象的な表現で悪いんだけど、この絵からは『生きている』という感じが伝わってこないんだ。立体感が上手く描けていないのが理由じゃないかと考えてみたものの、自分には陰影でおかしいところが見つからなくて」
 そこまで言って俺は口元に手を当ててうなった。
「でも柊の絵を見ていて思った。抽象画と具象画という違いはあるけど、柊は陰影なんてなくても生き生きとした絵を描いている。根本的に何かが俺の絵には欠けているのかもしれない」
「なるほど、そこまではわかっているわけね」
「……え?」
 予想外の言葉に俺は横に立つ柊の顔を驚いて見上げる。細いあごの線がやたらとはっきりと目に映った。彼女は俺の絵に視線を向けたままはっきりとそれを口にした。
「これは失敗作よ。コンクールがなければ、今持っているナイフで切り刻んでやりたいぐらいの駄作だわ」
「なっ!」
 まさかそこまで言われるとは思ってなかった。俺も自分の画力は柊には及びもつかないことは自覚している。それでも美術部の中からコンクールに出展できるとして、極めて少ない人数の中に選ばれたことに対する自負はあった。そして人前に出しても恥ずかしくない作品を描いているつもりでいた。
 俺は抗議しようと思ったが、相手がどういうつもりでそう述べているのかわからず、言葉を選んでいるうちに柊に先に追撃されてしまった。
「今回のコンクールは妥協したものを出してそれで満足しなさいな。それで次回以降は彩色したものにきちんと取り組むことね」
「それは……無理な話だろう。柊だって俺が色を見ることができないことは知ってるはずだ」
「色が見えなくとも絵具を乗せることは出来るわ。あなたは生まれつき色盲だったわけではないのだし、いくらでもやりようはある」
 無茶苦茶だ。そう俺は思った。
 確かに昔は世界に色が溢れていたし、その記憶もある。けれど美術部に入ってから触れた絵具の色は皆目わからないし、それに昔の風景も年月を経るごとに言葉の通りに色褪せている。そんな俺に色のついた絵を描かせたところで、どう頑張っても珍妙なものにしかならないだろう。それをやって何の意味があるというのか。
「御薗木くん。あなたのその考えがおかしいことに気付きなさいよ。そこを直さなければ、どんな絵を描いたって無価値なものにしかならないわ」
 正直意味がわからない。俺の考えに何か間違いでもあったろうか? そもそもそんなことを言うなら、今まで作業を手伝ってくれていたのは何だったのか?
 俺は柊を問い詰めることにした。口調が荒々しいものになるのはわかっていたけれど、納得できないことを言われっぱなしで作業が続けられようはずもない。
「紗樹ちゃんは相変わらず言葉がきっついねぇ」
 しかし次の瞬間部室に響いたのは、何ともおちゃらけた声だった。
 例の凍てついたような冷たい視線で柊が部室の入り口の方を見遣る。
「こっちに顔を出したのは随分久しぶりね、早乙女(さおとめ)くん。わたしはてっきり退部したのかと思っていたし、そうであって欲しいと願っていたのだけれど」
 いつ部屋に入ってきたのか俺は気付いていなかったが、柊の口ぶりは声がかけられる前から彼がそこにいるのを知っていたかのようなものだった。背ばかりが伸びた痩身に、目にかかるほどの前髪。ズボンのポケットに両手を突っ込んで、無造作に背中を入口の戸に預けている。美術部の幽霊部員をやっている男子生徒で、名を早乙女隼人(はやと)という。
 隼人は肩を竦めてから柊に返事をした。
「期待に添えなくて申し訳ないね。でも運動部だとサボりもなかなか出来ないから、こっちに籍を残させてもらってるよ。学校の方に記録は残るから今後何かに使えるかもしれないし、それに一応昔は多少興味があって筆を手にしていたからさ」
「随分おこがましいことを言うのね。筆を手にしていたのなんて、中学の美術部で一ヶ月くらいのものじゃないの」
 以前柊と隼人は同じ中学の出身だと聞いたことがある。同じ美術部に所属していたとも。幽霊部員とはいえ同じ美術部にいるのだし、数少ない男子部員ということで俺とはこれまで何度か言葉を交わしている。友人というほどでもなかったが、特に仲が悪いわけでもなかった。
 ただそもそも隼人は部活に参加しないので、これまで彼が柊と会話をしているところを目にしたのはなかった。それでも二人の仲が悪いことは十分知ることができる。そしてそのことは俺以上に当人たちが知っているようでもあった。
「随分とボクは紗樹ちゃんに嫌われているみたいだね」
「ええ、嫌いだわ。物事に真剣に取り組む気もなく、へらへらと笑っているような人間は死ねばいいのよ」
「そうかい、それはよかった。ボクも紗樹ちゃんのことは嫌いだからね」
 隼人はそう告げると、今度は俺の方に話しかけてきた。視界の隅に唇を噛む柊の姿が映ったが、彼女に話しかける暇も言葉も持ち合わせてはいなかった。
「まあ紗樹ちゃんの言葉はきっついとボクも思うんだけどね。でも具体的にどうしろと教えたのでは鏡夜のためにならないし、だからボクからも何も言えない」
「隼人は柊の言わんとしていたことがわかるっていうのか? 俺は色の識別ができないし、だから木炭画や鉛筆画をやってる。それは自然なことだろう。むしろそういう人間に色彩画をやれと示唆するのは無茶苦茶だと感じるんだが」
「そうかもね。でも他の人間相手だったら紗樹ちゃんもさっきみたいなことは言わないんじゃないかな? 鏡夜だからこそそういうアドバイスになるんだと、ボクは思うけどね」
「どういうことだよ、さっぱりわからない。そもそも絵を描きもしない奴に絵の話が理解できるのか?」
 頭に血が上っていた。絵を描かない人間が絵の話をしてはいけないという俺の台詞はおかしいものだったが、柊に続き隼人まで俺の絵は駄目だと告げていることがいい加減我慢ならなかった。
「うーん、だから言葉で説明しても理解できるようなことじゃないんだってば」
 頭をぽりぽりと困ったように掻いた隼人は、しばし逡巡する様子を見せてから、バネの要領もってドアから背中を離した。そしてその勢いを保ったまま俺のそばまでやってくると、木炭をひったくるように手にし、何も描かれていない紙が張られたキャンバスに向かった。
 それから五分も経っていないと思う。隼人は木炭を俺に返しながら、彼の向かっていたキャンバスを指し示した。
「とりあえずだけどこういうことで」
 そうして隼人は部室を去って行った。それ以外に言葉はない。必要ないということなのだろう。そして今度こそは俺にも伝わっていた。
 隼人の気配が完全に廊下の奥の方に消えてから、柊が苦虫を噛んだような声音でつぶやいた。
「……だから嫌いなのよ」
 キャンバスの上には冷たい氷のような視線をその先に向けながらも、何かをしっかりと見据えている少女の絵が描かれていた。隅の方に『愛してるよ』なんて書き加えてあるが、その人物は紛れもない柊紗樹その人で、知らない人にでも描かれている対象が実際に生きた人間であると伝える力をその絵は持っていた。
 ……隼人がざっと描いた絵の方が、俺が時間をかけて描いた絵より格段に優れているのは明白だった。


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by zattoukoneko | 2013-04-07 07:12 | 小説 | Comments(0)

『世界を凍らす死と共に』1-1-2


 玄関まで見送りに来てくれた母さんが、ドアを開けるとそこに待っていた人物に朝の挨拶代わりに伝える。
「真琴(まこと)ちゃん、お待たせー。今日も鏡夜くんの護衛よろしくね」
「任せてください、青葉さん。鏡にいが通学途中に悪さをしないように僕がしっかり見張っておきますんで」
 相手は許斐(このみ)真琴という近所に住む中学一年生だ。ほんのちょっと前までうちに来た母さんに人見知りしていた気がするが、もう随分と慣れたらしい。ただちょっと図々しくなり過ぎている気もする。そう思って短髪の頭を上からぐりぐりと強めに押さえつけながら忠告する。
「四年前まで悪さをしないように見張っていたのは俺の方だろう。小学校の通学班の中で一番元気を持て余して暴れまわっていたのを今でもしっかり覚えてるぞ?」
「はぁ? 元気なんだったらむしろいいことじゃん。てか、鏡にい、髪の毛引っ張られて痛いって!」
 小学校から中学校に上がって少しは落ち着くかと思っていたけれど、そうは問屋が卸さないものらしい。俺は諦観の溜め息を漏らしながら頭から手をどけた。
 解放された真琴は、ぼさぼさになった髪の毛を撫でつけながらこちらを睨みつけてくる。
「というかさ、小学校のときって行き帰りのときからジャージだったじゃんか。ジャージって運動服だろ? なら学校側は普段から活発に運動しろって教えてるってことになるじゃないかよ」
「筋が通っているようないないような微妙なことを言いだすな、お前は。仮にその通りだったとして、真琴のやっていたのは運動とは呼ばない」
 夏にはいつの間に捕まえたのかわからないクワガタを俺に投げつけてきたり、冬にはどこから取ってきたかわからない厚い氷で頭を叩かれたりした。走る真琴がそのままの勢いで壁に体当たりしたらそれが壊れ、向こうにある庭木をめちゃくちゃにしてしまったこともあった。そのときには俺もどうしたらいいのかわからなくて、思わずその場から逃げ出しそうになったくらいだ。
 俺たちのやり取りを耳にしていた母さんが、笑顔で訊いてくる。
「でも真琴ちゃんの話の通りなら、今はもう通学中には運動しないってことだよね? ジャージじゃなくて制服を着ているわけだし、大人しく通うと」
「あ、う、それは……」
 見事なまでに言葉に詰まった真琴を見て、さらに笑みを優しいものにしながら母さんが俺たちを学校へと送り出す。
「じゃあ遅刻したらいけないし、そろそろ行くべし」
 その声に押されて俺たちは家の敷地から外へと出た。その際に真琴の着ている制服を見下ろしながら言葉をかける。
「まあその恰好じゃ暴れるのは確かに無理だよな」
 膝丈のスカートにセーラー服。それを着た真琴が飛び蹴りで壁をぶち壊す姿を想像し、絵柄としてはあり得そうだと一瞬思ったが、怪我などを考えたらそれはないだろうとその空想を振り払う。
 真琴は俺の胸より少し下で唇を不機嫌に尖らせた。
「男子用の制服だったらよかったのにと思うよ。入学前にも交渉したんだけど断られた」
「それは当り前だろう。お前はれっきとした女の子なんだし」
「納得いかないんだよ、そういうのがさー」
 俺の言葉にぷいっと顔を逸らす真琴。そのまま続ける。
「そもそも生まれるときに家柄や性別を選べないのも気に喰わないんだけど、でももしかしたら記憶がないだけで、実際には選んで生まれてきたのかもしれないからそこは仕方ないとする。でも『男だから』とか『女だから』って理由だけで服装や行動を決められるって不条理だって感じるんだよね」
「世の中というか、社会ってそういうものだと思うけどな。不条理だと感じることは確かにたくさんあるけれど、他の人がいるわけだし全員が納得するような世界にはならないだろう」
「鏡にいは物わかりが良すぎると思うよ。それに根本はそこじゃない感じがするんだけどな。不条理って言葉もそういう意味では使わない気がする」
 真琴はどんなことを考えているのだろう。辺りを走り回っていた昔とは違い、今では俺の横に並んで歩いている。そんな彼女を横目で見下ろしながら、ふと疑問に思った。
 元々俺たちは近所に住んではいるものの、年齢は四つも離れているから幼馴染とかそんな関係ではない。通学途中で面倒を見る年長のお兄さんと、それにちょっかいを出す元気のあり余った低学年の子というだけだった。ただ小学校に上がったばかりの一年生のときはそれほどはっきり自分の状況を考えておらず、二年生になって学年の上下とか学校の仕組みがわかってくるので、ちょうどそのとき一番通学班で年上だった俺に関心を抱いたということなのかもしれない。少なくとも真琴が一年生の時の姿を俺は覚えていなかった。六年生のときに彼女が運動と主張するものに付き合わされていたわけだが、その一年後には俺は中学に進んでしまったし、会う機会は途端に減って一緒に学校に通うこともなくなった。けれど今年度から彼女も中学生になって、またこうして同じ道を朝に歩くことになる。最初のきっかけは偶然通学時に出会って、そのときに「朝に迎えに行っていいか」と尋ねられたことだった。俺は特に何も考えず、また面倒を見てやるかくらいの気持ちで承諾していた。
 けれど、思えばそもそも何故俺だったのだろう? 一つの登校班だったから確かに人数は多くはなかった。でも六年生は俺だけじゃなかったし、真琴と同じ学年の子もいたはずだ。それに俺も実際にやられている内容とは反対に、彼女から頼られているようなそんな感じがして嬉しかったのを覚えている。
「ねえ、鏡にい」
 物思いに耽っていたら真琴に話しかけられた。彼女の方を向いたとき、晩夏の熱気に混じって冷たい風が首筋を撫でながら流れた。
 真琴は一点を指差しながら訊いてきた。
「鏡にいはあれに納得がいっているの? 不条理だとは思わなかったの?」
 彼女の指し示す先には一つの公園があった。陽光に照らされて氷漬けになった木々が輝いている。夏の一角に冷たい空間を生み出している。
 そこは夏の初めに父さんが死んだ場所だった。
 父さんは刑事としてこの町で起きていた連続殺人事件を追っていた。そして犯人を突き止めて公園に追い込み、そして殉職した。
「犯人捕まってないこととか不条理だとは思わない?」
 殺人犯が誰だったかということは父さんが明らかにしている。死にはしたものの、犯人もその際に一度警察に捕えられたと聞いている。けれど何らかの事情があってその人物は罪には問われず、そのまま解放されたとのことだった。
 少し考えて俺は真琴に答えた。
「納得いかないことでは確かにある。身内なのにどうして犯人の罪はないことにされたのか説明もきちんと受けられなかったし。でもそれを不条理だとは感じない」
「……なら人が死んで周りが凍るっていうのは? そっちの方は不条理だと思わない?」
「それこそ不条理だなんて思うわけないだろ。自然なことじゃないか」
 世界は人の心を映し出す。だから人が死んで心が冷たくなれば周囲の温度も下がって凍りつく。それが自然の摂理だ。疑問を差し挟む余地すらない。
 けれど真琴は小さく、本当に小さくつぶやいた。
「僕は……そんな世界認めたくない」


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by zattoukoneko | 2013-04-07 07:10 | 小説 | Comments(0)

『世界を凍らす死と共に』1-2-1


   二.


 公園から離れてほんの少し。曲がり角を右に折れると同時、後ろから声をかけられた。
「お、御薗木君だ。おっはよー」
 振り向くと腰まで届く長い髪の女子生徒が、手を大きく振りながら早足で近寄ってくるところだった。俺には残念ながら色の濃淡くらいしか見えないが、話に聞いている通りなら、こちらと同じ茜色のブレザーに金色の校章を襟に留めているはずだ。校章は学年順に上から金銀銅となっていて、だから二年生の俺が付けているのは銀色のものになる。
「おはようございます、立花(たちばな)先輩。待っているのは見えたでしょうし、そんなに急ぐ必要なんてなかったのに」
 立花瑠美(るみ)という名の先輩と知り合ったのは昨年の秋のことだった。青葉さんが俺の母さんになる前のことで、ただ紹介だけはされていてまだ戸惑いを覚えていた。俺は『父さんが再婚を望むなら』と自分なりに整理しながら散歩をしていて、その途中一人だけでいる彼女に出会ったのだ。
 立花先輩は少し息を切らしながらそばにやってきた。それから心配してかけた俺の言葉をぱたぱたと振る手で軽く払う。
「このくらいならなんてことないって。むしろ運動不足が原因じゃないかってアタシは推測してるくらいなんだから」
「今日は徒歩での通学してるのもそれが理由ですか?」
「そう。車で送迎されるのに慣れちゃってたから、思い切るのも、お父さんを説得するのも苦労したけどね」
「でも長時間歩くのは難しいから車での送迎になったはずで……」
「いやまあそれはそうなんだけどね。大丈夫だって。無理はしないとの条件付きで許してもらったし、出掛ける前に調子が悪かったら素直に送ってもらうことにするから」
 立花先輩は口調こそ快活なものの、生まれつき体が弱く、体力もつかないのだそうだ。原因は未だにわからないらしい。言葉を交わしつつも、その身から滲み出る儚さを感じざるを得ない。
 先輩は一通り俺と話し終えると、隣にいる真琴へと視線を向けた。
「はじめまして、だよね? アタシは立花瑠美っていいます。御薗木君と同じ高校に通う三年生」
 話しかけられた真琴は視線を脇に逸らしながら小さな声で返した。
「……ども。許斐真琴です」
「あれれ、アタシあまり印象良くない? まあ二人がらぶらぶしているところに割って入ったらそうなるのも当然だけどさ」
「何言ってるんですか、先輩は……」
 俺は一つ溜め息を吐くと、改めて真琴のことを紹介した。
「小学校の頃からの知り合いで、許斐真琴っていいます。中学一年生で、途中まで道が同じだから毎朝一緒に登校してるんですよ。若干人見知りするので、ぶっきらぼうな挨拶には気を悪くしないでやってください」
 その紹介の仕方に不機嫌そうに唇をアヒルにする真琴。それを見た立花先輩が笑みを浮かべる。
「仲良しさんなんだね、二人は」
 今の真琴のどこを見てそう思ったのだろうか。いまいち俺にはわからない。もちろん仲が悪いわけではないけれど。
 いずれにせよ話を続ける俺と立花先輩に対し、真琴はだんまりを決め込んでしまった。少し気にかけていたようだったけれど、仕方なしに先輩は俺とだけ会話を続けることにしたようだ。学校への道を歩き出しながら話しかけてくる。
「昨日は部活の様子見せてくれてありがとう。前々から興味あったんだけど、覗かせて欲しいって頼む友人もいなくてこれまで機会がなかったんだ。だから本当に感謝してる」
 先輩は体が弱いために部活動は一切行なっていない。運動部の類はもちろんのこと、文化系の活動も自粛しているのだそうだ。
「御薗木君の絵はとても綺麗だったね。これは……言っても仕方ないことなんだけどさ、彩色がなされていないことをとても残念に思ったよ」
「色が見えていないですからね。それでも光の明暗くらいはわかるし、むしろ他の人よりそこに機敏になっている気がする。ならそこを上手く表現できれば、自分の欠点も武器に変えられるんじゃないかと鉛筆画や木炭画に挑戦するようになったんですよ。でもそう言ってくれて嬉しいです。色が付いたらどうなるのか興味を惹かれたってことだと思いますし、特に木炭を使うのは初めてだったんで、周囲からの評価は気になってたんです。面倒を見てくれている柊は褒めてくれるような性格じゃないし」
「柊紗樹さんか。彼女の絵も見せてもらったけど、荒々しくて力強い色使いが印象的だった」
 柊は油彩で今度のコンクールに出展する予定だ。水彩画も鉛筆画も、はてはアクリル絵具での絵も誰よりも上手いが、その中でも油彩画が最も素晴らしかった。実際時間をかけられて絵具を重ねられていく柊の絵は、日増しに重量感が大きくなっている気がする。だから立花先輩の語るその絵の色が見れないことを、俺は心底残念に思った。
「荒々しいっていうのはよくわかるかも。柊は気性の激しいところがありますからね」
 俺の言葉に立花先輩はその目を大きく見開いた。そして唐突な質問をしてくる。
「もしかして二人って付きあってたりするの?」
「え、なんでそうなるんですか?」
「だって気性が激しいとか、そんなことアタシには微塵もわからなかったし、さっきも面倒見てくれているとか言ってたから親しい間柄なのかなって」
「違いますよ。コンクールが近いんで指導してもらってるんです。学年も一緒だから部活に出る時間帯もほとんど同じですし、それにやっぱり技術力はすごいと思ったんでこちらからお願いしたという流れ」
 俺の説明に先輩は胸を撫で下ろす仕草を見せた。少し大袈裟に振る舞いながら、安堵の溜め息を吐く。
「驚いたー。御薗木君って女子にあまり興味なさそうだし、実際そういう噂も気配もとんとないから気を抜いてたよ」
 酷い言われようだが、事実その通りであるので反論もできない。まあ毎日登校を一緒にしている真琴も女子ではあるのだけれど、四つも離れているとそういう対象ではない。
 ほっとした様子を見せた立花先輩は、けれどすぐに表情を難しいものにした。
「でもコンクールの作業をずっと手伝っていて、時間帯も合うからってことは二人きりになることも多いんだよね。そういう状況が続くとやっぱり――」
 そこまで口にしたとき。
 急に立花先輩が体をくの字に折った。そして呼吸が大きく乱れる。
「先輩!」
 俺が慌てて顔を覗き込むと、苦悶の色を浮かべながらも先輩は笑顔を向けてきた。
「だ、いじょうぶ。それより、鞄の中から薬の入った袋と、お水、取ってくれない?」
 先輩の鞄は持ち主の手を離れ、足元に転がっていた。事態が事態なので構わず開ける。脇の方にあったペットボトルと薬が入っていると思しき白い紙袋を取り出し、先輩に手渡した。
 紙袋の中から錠剤を一つ取りだすと、先輩はそれを口に含んで少量の水で喉の奥に流し込んだ。それを見届けてから俺は声をかける。
「大丈夫ですか? 立っているのもつらいでしょうし、どこか座れるところへ」
「あはは、ごめんねー。急に心臓の発作が出ちゃったみたいで。まだちょっと動くのは難しいかな。申し訳ないんだけど、移動するの手伝ってもらっていい?」
 俺は頷くと先輩の肩に手を回した。真琴に俺と先輩の鞄を持ってくるように言いつけると、ゆっくりと足を運ぶ先輩の補助に専念した。
 近くにベンチなど都合のいいものはなく、仕方なしにマンションの前にあった花壇の縁に先輩を座らせる。その頃には容体も大分落ち着いていたようだった。
「うーん、油断してたかなぁ。心臓が締め付けられるような痛みを覚えるのってそんなに頻繁にあることじゃないから。さっき飲んだ薬も心臓の薬というわけじゃなくてね、精神安定剤なの。発作の原因がわからないし、今のところ効果があるのはこの薬しかないから」
「無理はしないでください。俺と出会うきっかけになったのも先輩が道の真ん中で倒れてたことなんですから」
「あの時は本当にごめんね。それにありがとう。人通りの少ないところだったし、御薗木君に助けてもらえてなかったら今頃アタシはこの世にいなかったかもね」
「物騒なことを言わないでくださいよ。でもとりあえず今回はあのときみたいに意識を失ったりしなくて良かった。俺だけじゃどうしようもないですし」
 去年の秋に父さんと新しい母さんのことを整理しながら散歩をしている途中、町外れにある森の近くの道で一人の女子が倒れているのを発見した。それが立花先輩だった。走り寄ったときにはすでに意識はなく、呼吸もしているのかしていないのかわからない程度に弱っていた。急いで救急車を呼び、電話で指示される通りに介抱。その後到着した救急車に、同行してくれる人がいないからと俺が一緒に乗ったのだ。病院に着いてしばらくしたらある程度状態も安定した。目を覚ました先輩と、連絡を受けた親御さんが慌てて病室に来るまで、ベッド脇から言葉を交わした。
「でも原因不明だしね。心臓だけじゃなく喘息の発作も出るし、ひどい頭痛が出ることも骨が軋みを上げることもある。物騒な言い方に聞こえるかもしれないけど、アタシはいつ死んでもいいと覚悟しながら毎日生きてるからさ」
 運動不足が原因ではないかという推測を先輩が立てるなら、俺はその諦観が原因だと推論することにしたい。もちろん根拠はないし、むしろ病気の原因というよりも、病から派生した気持ちの問題を解決して欲しいという想いに近いものではあったけれど。
 俺が上手い言葉が見つけられずに黙っていると、それまで黙っていた真琴が急に口を開いた。
「そうやって苦しみながら生きてるのってイヤじゃない?」
 率直な物言いに先輩も少し驚いた様子ではあった。けれどすぐに普段の表情に戻って返事をする。
「正直に言えばイヤだよね。ただこれがアタシの生まれた境遇で、仕方のないものだと思うようにはしてるんだ。恨み事ばかり言っていても何も始まらないし」
 しかし先輩はそこまで話してから急に顔に影を落とした。
「でも……世界が変わればいいのにとも思っちゃうよ」
 先輩の苦しみを俺は知らない。他の人と違う体だという点で、色が見えないということからある程度類推は出来るだろうけど、それは推察の域を出ない。ただ俺も色が見えたらいいのにと何度も乞い願っているし、体に痛みや苦しみの出る先輩は尚更なのかもしれないとは思った。
 どこから飛んできたのか知らないが、クマゼミが弱々しい鳴き声を俺たちの上空で奏でた。そして真琴がぽつりと一言だけの返事を返す。
「そう」
 猛々しい夏の暑さはまだ続いており、しかし着実に終わりに近づいている。そんな気配が周囲に立ちこめていた。


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by zattoukoneko | 2013-04-07 07:10 | 小説 | Comments(0)

『世界を凍らす死と共に』1-1-1


   一章


   一.


 ブレザー型の制服に身を包み、ネクタイを結びながらリビングに降りてくる。そんな俺をコーヒーのいい香りが出迎えてくれた。コーヒーメーカーを使用した人物の姿は室内になかった。けれどすでに朝食がテーブルに並べてあるし、すぐに戻ってくるのだろう。そう判断すると、椅子に座って終わりゆく夏の日差しを浴びる。
 目の前ではブールタイプのフランスパンとベーコンを付けた目玉焼き、それと足がきちんと開いていないタコさんウインナーが出番を待っている。料理としては簡単な部類に入るものだが、これだけ準備が出来るようになるまではそれなりに険しい道のりだった。父さんが他界したときは正直どうなることかと思ったし、昔のように俺が家事を担当するとも申し出た。それでもこれからは自分がやることにしたいと母さんが強く要望したから任せることに決めたのだ。
 二ヶ月も経てば非日常も日常になるものだ。そんなことを考えながら、未だ去らない眠気を何とかしようと伸びをする。ちょうどそのときリビングのドアが開いた。
「ごめん、待たせちゃってー。ご飯作ってるときに頭の上に卵落としちゃったからシャワー浴びてきたの」
 どうやったら卵を頭の上に落とせるのか甚だ疑問ではあったのだけれど、それよりもまずは母さんの格好に困惑の声を上げざるを得なかった。
「毎回言ってるけど、タオルを巻いただけの格好でうろつかれるのは……」
「うーん、確かに言われているんだけどさ? 私はそこまで気にすることかなって思うんだよね。だってお母さんなわけだし」
 言いながら母さんは俺の目の前までやってくる。そして前屈みになり、椅子に座っている俺と目の高さを合わながら訊いてきた。まだ湿り気を帯びた、緩くウェーブする髪。それが体の前に垂れて、鎖骨の辺りでちらちら揺れる。
「それとも本当のお母さんじゃなくて、元は赤の他人だからやっぱり気になったりしちゃうのかな?」
 つぶらな瞳に似合わない悪戯な笑み、そしてタオルの隙間からのぞく水を弾く双房が母の若さを否応なしに伝えてくる。母さんは御薗(みその)木(ぎ)青葉(あおば)という名前で、今は亡き父さんが二人目の妻として迎えた女性だ。姓は結婚したときに変わっていた。そして俺より年下だったりする。
 からかってくる母さんに俺はきっぱり答える。
「最初はさすがに戸惑ったけどね。でも母さんは母さんだと思ってるからそういうのはないよ。ただ年頃の若い女の人なのは事実だし、注意した方がいいとは感じてる」
 それを聞いて憮然とした表情になる母さん。
「釈然としなーい。若くて年頃の女性と見てるなら、気になって自然だと思うんだけど」
「また無茶なことを。仮にそれだけで反応してたら、俺が見境ない人ということになるじゃないか」
「鏡夜(きょうや)くんはそうやってすぐに理屈で説得しようとするからなぁ……」
 このまま続けていたらキリがない。膨れっ面になる母さんに話はこれでおしまいと告げ、服を着てくるようにリビングから送りだした。そして今度はきちんと服を着た母さんが戻ってくると、ようやく二人揃っての朝食となった。
 母さんは自分でつくった目玉焼きの中央部分に箸を刺し、溢れ出る黄身に「半熟に出来たー」と喜ぶ。その様子を見ながら、今日は学校の帰りが遅くなることを思い出して告げる。
「コンクールが近いからね。その追い込み作業してくる」
「うん、わかった。出展する作品は今回も鉛筆画なの?」
「鉛筆画じゃなくて木炭画。彩色していないところは同じだけれど」
 デッサンでは昔から柔らかい鉛筆や炭が使用されてきた。硬い鉛筆より濃淡が出しやすいからだ。さらに木炭は後から消しゴムをかけることでぼかすことが容易で、光による明暗も豊かに表現できる。そうした理由から最近ではデッサンに留まらず、完成された作品として受け入れられつつある。
 けれどしょぼくれた様子で母さんがつぶやいた。
「正直な感想を言うと、私は鏡夜くんの絵には色があった方が素敵だと思うんだけどな……」
 確かにコンクールで広く募集されているのは色彩画だし、そちらの方が受賞枠も広い。賞を狙ったり今後も絵画を続けようと思うなら、木炭画に偏らずに色彩画に挑戦した方がいいのは確かだろう。
「でも俺の場合、彩色するのは無理だからね」
「うん。それはわかってるんだけどね」
 俺には色が見えない。判別できるのは濃淡だけで、今はほとんど使われなくなった言葉ではあるけれど、色盲と言った方が状態は伝わりやすいかもしれない。視力の方は正常なのだが、一切の色の識別が出来ないのだ。
 それは先天的なものではなかった。小学校の中学年くらいまでは色が見えていた。しかしあるときを境に急に世界から色が消えた。
「前のお母さんが亡くなられたときだっけ?」
「それから少し経ってからだね。まだ幼かったし、ショックが大きかったのが原因だろうと思う」
 美術部に所属し、そして彫刻などではなく絵画をやり続けているのは、まだ色彩というものに対して未練があるからだ。俺はそれを取り戻すことを願っているし、ならば色が近くにある状況に自身の身を置き続けるのがよいだろうと感じていた。
「話を聞いていると他の『色』もあるみたいだけど?」
「……そっちの色についてはまだ当分の間は関心持たなくていいかなと思ってるんだけどね」
 にやにや笑いで茶化してくる母さんに溜め息混じりに答える。
 元々美術部は女子の比率が高い。うちの高校に限らず他校も事情はさほど変わらないと思う。男子は昔から人気のバスケットボールや野球、サッカーなどに流れやすい。俺のような事情があるのは稀だとしても、前から美術をやっていて得意だったりしないと入ってくることはないようだ。
 母さんが言っているのは柊紗樹(ひいらぎさき)という同級生のことだった。夏休み前の引き継ぎで部長となり、今回のコンクールでも注目株として名前が挙がっている。一緒に作品を仕上げながら、俺が応募しようとしている絵にアドバイスをくれていた。ただ母さんは柊に実際に会ったこともないし、そういう人がいるとしか伝えていない。
「けど私なんて鏡夜くんより一つ年下だけどお母さんになってるんだよ? 鏡夜くんだって年頃の男の子なんだし、薄暗くなった人気のない部室で押し倒しちゃったりとか――」
「ないよ、絶対に」
 あまりに繰り返されるので、母さんは色ボケしているのではないかとすら思ってしまう。俺は中言して否定する。それから柊の性格を知らないからそんなことが言えるんだと嘆息した。もちろん他の女子相手にだって俺はそんなことしない。そもそもそういう目で他人を見るって失礼なことじゃないだろうか?
「うーん、一般的にどうこうじゃなくて。鏡夜くんの抱えている問題の一つって気がしてるんだけどなぁ……」
 恋愛事に関心がないのが『問題』と言われるほどのことだろうか? 母さんの真意が俺には量りかねた。俺も押し黙ってしまい、ちょっとした沈黙がリビングに下りる。ちょうどそのときインターフォンが鳴った。
「あ、もうそんな時間か」
 壁に掛かっている時計を見て食器を片付ける余裕はなさそうだと判断する。母さんにそれを謝ると、俺は通学鞄を手にして椅子から立ち上がった。


   『世界を凍らす死と共に』1-1-2へ
by zattoukoneko | 2013-04-07 07:08 | 小説 | Comments(0)

『世界を凍らす死と共に』0-0-0


   序章


 吐く息が、白い。
 気温がぐんと下がって指先が痺れたようになっている。感覚はすでになくなっていた。氷のようなその指の上に雪のようにひらひらと藤の花びらが舞い落ち、瞬時に凍って砕け散る。
 粉々になった薄紫色の花が私の抱き続けている死体を彩る。普段着飾ることのない彼にはその装飾は似合わないように思えた。実際何日間着続けているのかわからない薄茶のスーツに多少の明色が差したところで、さして華やかさが増したようには感じられなかった。
 いつかこうなるだろうという予感はあった。彼と付き合うことを決めたときに覚悟したことでもあった。だから出会いから別れまでせいぜい一年程度しかなくとも、そのことを不満に感じたりするはずもない。
 ただ他には誰もいなくなった夜の公園で、冷たくなりながら満足そうに微笑んでいる彼の顔を見て呟かずにはいられなかった。
「どうして、そんな顔してられるのよ……」
 頬を伝う涙が火傷しそうなほど熱い。それでも腕の中に抱かれている彼の顔の上に落ちた瞬間、滴は砕けて周囲にきらめいた。死んだ人間を包む厚い氷は融けることなく、彼も生き返ることはない。
 氷と涙と彼の笑顔が、すべては終わったのだと告げていた。
 これが一つの結末なのだ。それも彼の望んだ最良の結果なのだ。私にはそれがわかっていたし、関わった者としてわからなければならなかった。
 ――たとえそうだとしても。
「それは私の望んだハッピーエンドじゃない」
 想いを言葉にした瞬間、必死に堪えていた嗚咽が止まらなくなった。涙が溢れ、声が氷漬けにされた公園に木霊する。


   『世界を凍らす死と共に』1-1-1へ
by zattoukoneko | 2013-04-07 07:06 | 小説 | Comments(0)

『世界を凍らす死と共に』掲載開始

長編小説『世界を凍らす死と共に』をブログ掲載しようと思います。
2012年4月に募集〆切のあった第19回電撃大賞に応募した作品で、一次選考は通過したもの。

読み返してみて「文章下手だなー」と思わず言ってしまったのですが、ラストまで読んで「ああ、そういう意図があったのか……」と。
書いた本人が何故忘れてるんだって話ですね(汗)
文体は回想調一人称などと呼ばれる類のものです。一人称なんだけど、過去形だったり、説明になっているものが多く、その本人の気持ちがわかりにくいというもの(代わりに文体が重く、もっと良く言えば格調高くなります)。
私はあえて主人公に感情移入して欲しくなかったみたいですね。読者が物語に入り込みにくくなるので本来ならNGなんですが、それをトリックというか仕掛けとして用いたかったようで。
主人公の目を通して物語世界を見つつも、その人も読者とは距離がある一人の人間として置いておきたかったようです。それを埋めようとしたとき、主人公やその他の登場人物が一層生きた感じがする――その効果を狙っていました。
そんなことやってるから二次選考で落ちるんですけどね。

この試みは面白いと思ったので、ブログの方に掲載しようかと。
リライトするにもその意図がわかってしまうと難しいし、何より面d……というのは冗談で、登場人物が魅力的だったのでこのまま埋もれさせてしまうのもなーと。
(どうやって書き直すかな、ぶつぶつ)
ちなみに読んでいくと登場人物への印象や愛着がかなり変わるようです。そういう声が出てきたということは、上記の試みはある程度成功したということかしら?


長いので何回かに分けて掲載します(全部で原稿用紙332枚)。
振ってある番号は章・節・項の順。1-3-2だったら、一章三節二項の意味。各章四節に別れていて、各章は二つの項に分けてあります。序章だけは短いので分けてませんが。
全部で四章(+序章)なので33回分です。もしよろしければ、お付き合いくださいませー。
by zattoukoneko | 2013-04-07 07:01 | 小説 | Comments(1)

【期間限定公開】『雪の音に沈む街』オマケエピソードPart. 12

 雪音の腕の中にいる白ウサギはすでに意識を失っていました。後ろ脚の傷はかなり深いようで、シロの体も、雪音の服も、真っ赤に染まっています。
「お母さん、どうしよう……」
 このまま何もしなくてもシロは死ぬでしょう。運良く助かったとして、その脚はもう動かないと思います。
 山の神はこの子を殺せと言っているのだと、お母さんは気付きます。人間ではありませんが、この白ウサギも温かいものです。流れ出る血は確かに熱く、そして雪音と共に生活を豊かなものにしていました。ですからこの子を冷たくすれば、雪女の力が戻ってくるのでしょう。
 お母さんは、静かな声で雪音に伝えます。
「これ以上苦しまないよう、シロちゃんを楽にしてあげましょう」
 シロに対して思うところがないわけではありません。むしろあるからこそ手にかけることに意味があるのでしょう。
 雪音と共に長く暮らしたいのです。大事な娘が成長していくところを見ていたいのです。何より二人でいることが幸せなのです。
 無益な殺生をしてはいけないと言われるかもしれません。少しでも縁を持ったならば、それを大事にしろと言われるかもしれません。楽にするという言い訳でもって、生死を他人が勝手に決めるなと言われるかもしれません。
 けれど、それは雪音との生活以上に大切なものでしょうか? 娘と生きていくこと以外に、望むことなどあるわけないではないですか。
 なら、シロを殺します。冷たく、固く、凍らせましょう。
 心を決めると、お母さんの体が冷気に包まれました。この前はうまく力が使えませんでしたが、今日は十分に冷えています。心も体も、雪女として氷漬けにされていくのを感じます。それだけお母さんの想いは深かったのです。
「お母、さん?」
 けれど雪音は戸惑った声を上げました。それから雪女の鋭い冷たさを感じると、洞の隅へと駆けていきました。
 戻ってきた雪音は、手に何かを持っていました。それが何か、お母さんが気付く前に、口に押しつけてきました。
「!?」
 口の中に甘くて冷たいものが広がります。雪音が大きな声で言いました。
「雪見だいふくっ!」
 お母さんは何をされているのか意味がわかりませんでした。
 でもそれ以上に雪音が意味がわからないと叫びました。
「お母さんの考えてること、よくわかんない! 私はシロちゃんを助けて欲しいの! 苦しいかもしれないけど、生きてて欲しいの!」
 雪音は大泣きしていました。そしてその顔を見て、お母さんは自分の過ちに気付きました。
 娘と一緒に生きていたいと、心の底から思います。そのためにはどんな犠牲だって厭いません。けれど横に並んだ雪音が、こんな顔をしていたら自分は幸せでしょうか?
 お母さんは心の中で謝りました。そしてありがとうと言いました。
「待っててね。すぐにシロちゃんを助けるから」
 お母さんは改めて雪女の力を集めました。手の先が冷たくなっていきます。
 傷を治すことはできません。けれど傷口を氷で壊死させて、それによって血を止めることならばできるはずです。
 ただシロの脚はもう動かないでしょう。それを引きずったまま、山の中で暮らしていくのは無理だと思います。それなら苦労するかもしれませんが、脚を切り落としてしまった方がいいのかもしれません。
「雪音、ちょっとの間後ろを向いていてね。見ていると雪音まで痛くなってしまうから」
 雪音は悩む素振りを見せましたが、すぐに言いつけ通りに体の向きを変えました。お母さんが優しい笑みを浮かべていたから、それを信じたのです。
 それからお母さんは雪女の力を使いました。一匹の白ウサギを助けるために、その力を使いました。

 その夜、お母さんは夢を見ました。夢の中で、山の神が語りかけてきました。
――私は山の神だ。人の神ではない。だからユキを人間に戻してやることはできないし、お前が生きたいと望むのならば、雪女としての冷たさを与えてやることしかできない――
 その言葉にお母さんは答えます。
「お心遣い、有り難うございます。私の望みを叶えようとしてくださったのですね」
――私は何もしてやれなかった。ユキが冷たい心を取り戻さなければ、雪女の力を持つ器として適わないからだ。心と相反する力を無理に押し付けることはできない。だから雪女の心を取り戻せるようにと考えたのだが、結果としてお前たちを傷つけてしまっただけかもしれないな――
 それから少しの間を挟んでから山の神は訊いてきました。
――けれど本当によかったのか? 今のままでは遠からずユキは死ぬ。自分の内に宿ったその温かいものによって。病に伏せることも多くなり、そして娘と離れ離れになってしまうのだぞ――
 お母さんはうなずきました。夢の中ですから雪音の姿は見えません。でも隣ですやすやと眠っていることでしょう。その様を思い浮かべることは容易にできました。
 山の神に、お母さんは温かな笑みを見せて言います。
「雪音は私の事情を知りません。教えることもないでしょう。ですが、もし私の抱えているものを知ったなら、今日訴えかけてきたあの言葉を口にするような気がします。苦しいかもしれないけれど、でも生きていて欲しい、と」
――……そうか――
 そう山の神はつぶやくと、すっと姿を消しました。静かな夜の帳が下りて、お母さんは穏やかな夢の中に身を委ねます。
 山にある小さな洞の中、二人の母娘が幸せそうに寝息を立てていました。

   *おしまい*
by zattoukoneko | 2012-09-21 23:59 | 小説 | Comments(0)


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