【期間限定公開】『雪の音に沈む街』オマケエピソードPart. 2

 昨日降った雪は、まだ残っていました。
 そして雪音は埋まっていました。
 今日は一人で散策に出かけたのです。お母さんは体に疲れが出たのか洞で休んでいましたから。
 鏡の湖を越え、ずっと山の奥の方までやってきてました。この辺りは普段来ないところです。ですから地面に段差があることを知らず、雪にも隠れていましたので、雪音はそこに落ちてしまったのです。
 かろうじて頭だけは出ています。でもそれだけでした。足も手も動かすことが出来ません。
「たーすけーてー」
 雪音は大きな声を上げましたが、いつも助けてくれるお母さんは近くにいません。洞に声も届かないでしょう。
 困り果てていると、視界の隅に何かがぴょこんと現れました。
「あ、シロちゃん!」
 それは友達になったばかりの白ウサギでした。瞳がくるくる赤くて、まるで雪音やお母さんみたいなのです。
 雪音の声に反応し、シロはそばに寄ってきました。埋まっている彼女の前で首を傾げます。
「あのね、助けて欲しいの。お母さん呼んできてくれる?」
 でもシロにはその言葉がわかりません。
 しばらく雪音の顔をじっと見つめてから、シロは何を思ったのか頭の上に乗っかってしまいました。
「あうー、違うよシロちゃーん」
 もぞもぞとした感触は、毛づくろいでもしているのでしょうか。雪音からはシロが何をしているのかわかりません。
 頭にウサギを乗せた姿はかわいいのですが、雪音は生首状態なことに変わりありません。
 雪音は冷たいのは平気です。体の半分は雪女でしたから。でもずっと動けないままでいたら、きっとお母さんが心配してしまうことでしょう。
 どうにか抜け出る方法を考えていたら、急に頭の上でシロが体を高く持ち上げる気配がしました。
「?」
 雪音が訝しく思っていると、向こうからたくさんの白い塊がやってきました。十数匹もの白ウサギでした。
「シロちゃんのお友達?」
 頭を少し上に向けながら、雪音は問いかけます。それに応えるかのようにシロは頭の上から下りて、みんなと並んで埋まっている雪音をじっと見つめてきました。
 それから急に、一斉に穴を掘り始めました。
「……もしかして助けてくれるの?」
 雪に埋まった体の周りでもぞもぞとした感触がします。シロたちは雪音の周りに穴を掘り、縦横無尽に動き回っているようでした。
 しばらくして雪音の目の前にぴょこんと一匹のウサギが顔を出します。
 ぴょこん、ぴょこん、と後から他のウサギも続きます。
 意味がわかって雪音は言いました。
「ちーがーうー」
 どうやらシロたちは雪音が遊んでいるのだと勘違いしたようです。頭だけ雪の上に出ている彼女の真似をして、顔だけの状態で再び見つめてきました。
 雪音の声にみんなして首をちょこんと傾げます。
 それを見ていたら雪音はおかしくなってきました。みんなで埋まってて、何だかかわいいです。
 しばらくの間、雪音は自由に動かせる頭だけでシロたちと会話をすることにしました。首を傾けると、みんなも傾けます。無性に楽しくて時間が経つのも忘れてしまいました。
 気付くと陽が傾いていて、山の空が赤く染まっていました。そして頭の後ろから声がしました。
「雪音、何をしているの?」
 ようやく母の存在に気付いた雪音は、頭だけ動かして問いかけます。
「お母さんもやる? 楽しいよ」
「やらないわよ。もう陽も暮れるし」
 お母さんは苦笑いをしながら娘を引き上げます。
 ようやく体が自由になった雪音は、母に言います。
「じゃあ今度昼間にやろうね!」
「えっと……」
 困った表情でお母さんは雪音と手を繋ぎます。
 無邪気な娘のお願いをどう断ろうか、そんなことを考えながら帰路につきます。
 後ろではまだ埋まったままの白ウサギたちが、仲の良い母娘を見送っていました。

   *おしまい*
by zattoukoneko | 2012-09-12 23:50 | 小説 | Comments(0)


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