『パラサイト・イヴ』『3rd birthday』紹介

今回はゲーム版の『パラサイト・イヴ』シリーズについて紹介をしていきたいと思います。かなりネタバレ含みますけど、そこが重要な箇所でもあるので逃がすわけにもいかず。当然こんな短い部分ではストーリーの全体を見ることなどできるわけもないので、内容の核となるところだけ。興味を持った方はぜひプレイを~。



一番最初の作品である『パラサイト・イヴ』は1998年の3月末にSQUARE(現SQUAREENIX)発売されたゲームで、ジャンルとしては「シネマティックRPG」となっています。システムとしてはRPGに基軸を置きながらシューティング要素をいくらか入れたようなものとなります。
原作として瀬名秀明の『パラサイト・イヴ』があるわけですが、あちらは日本を舞台としていた一方、ゲーム版はアメリカNYのマンハッタンを舞台としています。キャラクターもほぼすべて一新されており、主人公はNY市警察17分署所属の刑事、アヤ・ブレアという女性になっています(女性であること重要)。
事件の発端はカーネギー・ホールのクリスマスイヴイベントでの公演で起きた事件となります。突如として主演女優のメリッサ・ピアスが覚醒したミトコンドリア(ネオ・ミトコンドリア)に乗っ取られ『イヴ』となります。ミトコンドリアには以前の記事で書いたように「エネルギーの生成」と「アポトーシス」の能力があります。また原作では遠隔作用力によって周囲の人々のミトコンドリアを異常に活性化させるということをしました。これらを踏襲してできたのがNMC(ネオ・ミトコンドリア・クリーチャー)という存在。あちこちの動物をNMCに変化させることで人類に反旗を翻します。しかしこれと同時にアヤの中にあったミトコンドリアも覚醒。『イヴ』に対し、人間の立場から生存のための勝負を挑みます。
ストーリーは大まかには原作の通りに進んでいく印象を受けます。特に気にせず話を追っていくと、小説のほうでは(ネタバレしますよ?)ラストにミトコンドリアが生物の頂点に君臨しようとしたのだけれども、受精の際に実際はミトコンドリアは女性のものだけでなく男性のものも少量入り込むため、その人間ミトコンドリアの妨害により失敗に終わったということになっています。ゲーム版では『イヴ』は世界の様々な場所で発生する可能性があり、それが今回はNYで起こった。そしてミトコンドリア間の情報伝達により日本での失敗を知っている。そこで男性のミトコンドリアを除いた精子を科学者につくらせ完全生命体になるという筋書きになります。果たしてそれは成功し――しかしアヤによって倒されます。まあこのままだと原作と大差ないですねー。
しかしながら謎が残ります。アヤは何故ミトコンドリアの覚醒を経験し、それでありながら『イヴ』であるメリッサに対抗できたのか? 前者の理由はアヤにはかつて交通事故で亡くした姉マヤ・ブレアがおり、彼女から角膜の移植を受けていたということ。そしてそのマヤこそが元々の『イヴ』だったからです。メリッサもマヤの腎臓を移植されており、そこに含まれていた新種のミトコンドリアに体を乗っ取られ『イヴ』となったということです。しかし同じ新種ミトコンドリアなら共闘してもよいはず。これはクリア後に現れるクライスラー・ビルディングを最上階まで登り詰めると理由がわかります。そこにマヤの肝臓細胞からつくられた『イヴ』がいるからです。マヤから分かたれた新種のミトコンドリアはある計画を立てます。それはメリッサやアヤの知らないこと。「新種ミトコンドリアに特化した生物」と「新種ミトコンドリアを内包しながら人間の力も備えた生物」とでどちらが強いか、すなわち生存競争を勝ち抜くのに適しているかを競わせているのです。つまり新種ミトコンドリアが仕組んだ仲間内での『生存競争』がこのゲームの主軸となります。ミトコンドリアに特化したメリッサ(小説版イヴと同等)と人間の能力も得たアヤ、そしてすべてを見て情報を吸収していた元々のイヴ、この三人の『イヴ』による生存競争に勝ち残るのは誰なのかというのがこの物語です。
ま、当然主人公のイヴが勝ってくれないと後味が悪いですけどね。そこに至るまでの経緯がきちんと描かれている作品となっています。


さて次に『パラサイト・イヴ2』について。発売日は1999年の12月。PSで発売されたのですが、ハード能力の限界を超えるようなCGクオリティの高さが話題になりました。こちらはジャンルは「シネマティックアドベンチャーRPG」となっており、前作よりもシューティングの要素などが強くなりました。
マンハッタン島封鎖事件より3年が経過しており、各地に散らばっていたNMCもその数を減らしてきました。アヤはNMCに対抗する組織であるMISTに所属し、NMC討伐を続けていました。ところがアクロポリス・タワーで未知のNMCに遭遇。それが人工的につくられたもの(ANMCと呼称)だとわかり、アヤはその原因解明と事件の収拾のために動き出します。
結果としてネヴァダ地下実験場でとある企業に買い取られ、ANMCがつくられていたことが判明。人の新しい進化の可能性をそこに求めその下にあるシャンバラで被験者をANMCにし飼育していました。ところが実験中にANMCが暴走、施設を乗っ取られ壊滅状態に陥ったことでシャンバラから飼育していたANMCが逃げ出したというのが事の発端であるということもわかってきます。一方で新しい『イヴ』を創造しようとアヤの細胞からつくったクローンであるEVEという少女が現れます。これを用いて最強のANMCを生み出す――これがこの施設に課せられた使命でした。
そう“課せられていた”のです。よくよく考えれば一企業がそんな大規模な施設を有し、多くの人たちをANMCに変えることなどできるはずがない。アクロポリス・タワーで初めてANMCが出現するより前に事件が表沙汰になっておしまいでしょう。しかしそうはならない。また『イヴ』であるアヤの細胞もどこからか入手している。つまりアヤたちの上に位置する人たち、ネタバレしてしまえば国の中枢にいる人たちがやっていた実験となります。ただし表向きにはANMCの制圧に軍は動き出し、そして実際にネヴァダ実験場はなくなります。それは国は「ここは実験の一つに過ぎず、捨ててもよいところ」と思っていたからとなります。
小説『パラサイト・イヴ』はミトコンドリア対人間、ゲーム『パラサイト・イヴ』の話はミトコンドリア同士が自分たちで引き起こした生存競争の物語、『パラサイト・イヴ2』はさらにその進化の道を人間の手で推し進めようという話となっていっているわけです。


ということで。昨年末の12月に『パラサイト・イヴ』シリーズの第三作、『The 3rd birthday』が発売されました。本作も主人公はアヤ・ブレアですが、彼女には記憶がありません。『パラサイト・イヴ2』で自分の妹としたはずのEVEもおらず、結婚したはずのカイル・マディガンもいません。覚えてすらいません。そんな彼女は過去への移動や人の精神を乗っ取るというオーバーダイブ能力を備えています。それの訓練をCTIという組織で受けていました。事件は2012年12月24日NYで起きたツインステッドと呼ばれる謎の生命群の襲来により人類が滅亡の道を辿り始めたということから始まります。これを討伐しながら未来(アヤたちのいる現在)を変えるべくアヤは過去へオーバーダイブします。
まあ敵がミトコンドリアでなくなったのは生物学で「ミトコンドリアによる宿主細胞の支配はないからー」というのが周知のことになってしまったことが理由かもしれませんね。ですが『パラサイト・イヴ』シリーズで描かれていたのは生物の淘汰と生存競争。今作でもそれが描かれることとなります。そして明かされていないいくつかの謎。ツインステッドとは何なのか、そして何故アヤは「オーバーダイブ」などという能力が使えるのか。すべての始まりの地点を求めてアヤはオーバーダイブすることとなります。



ということでざっとした感じですが『パラサイト・イヴ』シリーズの紹介でした。物語も秀逸ですが、それ以上に含まれている生物学の知識とそれへの考察が素晴らしい作品です。まあ……敵の見た目がややグロなので深夜にやっていると心臓に悪いですが(汗)

『パラサイト・イヴ』の1と2はアーカイブスでも手に入るようですし、以下は『3rd birthday』のAmazonへのリンクと、YouTubeにあげられている公式アカウントによるトレーラーです。こういう科学への洞察がふんだんに盛り込まれている作品っていいですねー。(←個人の好みではないだろうか?)
The 3rd Birthday

トレーラー①
トレーラー②
by zattoukoneko | 2011-01-18 11:44 | ゲーム | Comments(2)
Commented by zattoukoneko at 2011-01-18 11:46
ブログ更新が遅れましたー。ええ、遅れに遅れました_orz(←土下座中)

年末年始の忙しさを侮っていました……。年度末とか試験とかあるのにこんなところを休みにする意味が私にはわかりません(涙)

まだもう少し更新が遅れる日々が続きそうですがご容赦くださいませ。…………ちょっとはペースを上げる予定。
Commented by zattoukoneko at 2011-01-20 19:13
あ、忘れてました。『3rd birthday』に出てくる人物の名前。
たとえばハイド・ボーアというのがいたりします。まあ話の途中でわかりますけど、ニールス・ボーア(前期量子論の発展に寄与した人物。「ボーア半径」とか有名)から来てます。
ということで今回は量子論の話も含まれてますのでー。(←すごく楽しんでいる人)


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