『卒業宣言』プロット①

今回は第2回電撃リトルリーグで受賞した『卒業宣言』についてです。
が、実は前に紹介した第8回の電撃掌編王『好き好き大好き、だから嫌い』よりプロットもキャラ設定も薄っぺらいのです、これ。今回書いたものを前のと見比べたら一目瞭然かと。


まず、この作品は「確実に獲る」と考えて送ったものです。そして実際に受賞しましたね。これある自信があってそう思っていました。(もちろん実際に受賞報告をいただいたときは小躍りしましたがw)
で、実はこれここで流すと見た人は一気に掌編の応募のレベル上げてくるんでしょうねえw それはそれで面白いからばらしちゃいます。私自身がまた戦いたくなるのでww

実は掌編の応募時にくっつけるコメントって結構大事なのです。
もちろん本文が一番大事でしょうが、同レベルで並んだらこのコメントで評価するでしょう? またこのコメントでうまく選考してくれる編集者を“釣って”みせれば、物語本文がもつ魅力以上の評価をもらえたりするのです。
すなわちこのコメントって――『得点つけられるんです』よ。

私がやったのはまさにこれです。編集者の方を“釣り”にいきました。そしてその餌に食いつかせることができるような作品でもあったので、「受賞確実」と思っていました。
これに関して少し詳しく見ていきましょうか。
まずトリノミヤツチノスケ様のコメントを見てくれればよいかと思います。私の「微笑ましいと思えるオチ」というコメントを高く評価してくれていることがわかると。(ここへは転載しませんね。文章書いてるの私ではないですから。電撃様のHPにて確認をお願いします)
次に他の最終選考に残っている方の作品を読んでみてください。青猫様、兔希栄祐様、yuto様と三人いますね。これと私の作品を比べて、コメントを抜きにしてどれを受賞させたいか考えてみてください。
これ、私コメントなかったら他の方が受賞してたと思います。とくに兔希栄祐様はかなりの実力者。後にきちんと受賞していますね。また第1回の電撃メジャーリーグでは第5位にランクインしています。(なお、参加された方の全作品はきちんと読み、その上で順位の予想を立てています。また他の人にも読んでもらって順位予想してもらいました。私自身は自分を4位としました。少なくとも1位では確実にないと思いました。で、まさに私の順位は4位だったのですが――私の予想では兔希栄祐様が私の上に入っていたのです。それだけの実力者だと私は考えています。また他の方も私より上にランク付けしてました。ありがたいことに私のことも1位ではないですが上位にしてくれてましたねえ)

さて、どうせだからオチの話でもちょっとしましょうか。
私自身「微笑ましいと思える“オチ”」と書いていますが、私はこれをオチと考えていません。これは『好き好き大好き、だから嫌い』の方でもそうでした。
オチというのは話の終わりの部分ですが、結とは異なります。オチは物語を「終わらせる」のですね? 一方でただの「(インパクトのある)結」は物語が終わりません。
もっと具体的にいきましょう。一番イメージがつきやすいのは小噺です。最後にいきなりくだらない駄洒落で終わらせたりすることありませんか? それまで語られていた話ですごい聴衆を魅了していたのに、どうしてこんなもの入れるのでしょうか? 興醒めしてしまうとは思いませんか?
実はこれには重要な役割があります。
それまで聴衆は物語の中に「入ってしまって」います。つまり物語世界という非現実世界に迷い込んでいます。これを現実世界に引き戻すのがオチです。つまり「これは物語だからね? きちんと現実に帰ってね?」というのがオチです。ただ(話のテーマにもよりますが)物語を全部忘れられてしまうのももったいないところ。その場合には現実の社会の風刺などを入れると物語世界(非現実世界)と現実世界と比較して、これからどう生活していこうかと考えるきっかけを与えることも可能です。
またこれはハリウッドの映画でも同様な手法が使われています。オチとは当然言いませんがw これに関しては以前『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を取り上げて、ハリウッド映画のシナリオの構成というのを紹介しています。日本のように起承転結や序破急ではなく、スリーアクト・ストラクチャーと呼ばれるものを用いています。知らない方はまずそちらの記事を。ハリウッド映画のシナリオ構造
で、ここにアクト1・アクト2・アクト3の図がありますが、最後にちょろとだけ伸びていると思います。ここがオチに近い役割を果たします。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』では最後に未来に行ってきたらしいドクがマーティに会いにくるのですよね? これは(どうやら次回作の予告と受け取られてしまったらしいですがw)オマケのエピソードで、ここでそれまでの物語とはほとんど関係のない話をして観客に余韻を味わってもらいながら劇場から「帰って」もらうために挿入されています。
これらのオチ(と総称してしまいますが)と「インパクトの大きい結」はまったくの別物です。
「インパクトの大きい結」はむしろ物語の世界へ見る人を引き込んでしまいます。ようは物語世界から帰れなくなる。よく感動的な映画を寝る前に観て、それがなかなか頭から離れないで眠れないなんて経験をするかと思います。これは大体はこの「インパクトの大きい結」が最後だからです。あるいは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のように観客が続きがあると“誤解”してしまう場合ですね。ストーリーの展開から見てどう考えても終わっているのに、そこを誤読する人によって続編希望が出ることがままあります。これはこれで作り手としては嬉しいことでしょうが、戸惑いもあるでしょうね。(なおこれに関しては、『クレヨン王国 月のたまご』紹介というので触れています)
したがって、作り手は現実に引き戻させる「オチ」を入れるのか、物語世界に長く浸ってほしいと考えて「インパクトの大きい結」を入れるのか、それを意識しなければなりません。ちなみにまだ紹介できていないのですが、あかほりさとる著『セイバーマリオネットJ』という作品で見事に「オチ」を入れています。長編になればなるほどオチをつけるのは難しいはずなのですが、あかほりさとるは明確に意図してこれをやってますね。これを読んだときに身震いしたのを未だに忘れられません。

なお私はこのオチと「インパクトの大きい結」を知っています。完璧に使いこなせるかと問われると自信がありませんが、意識はしてます。
で、私はオチのないこの『卒業宣言』に「オチを入れました」とコメントしているのですね? これは第8回の電撃掌編王で受賞したときに、なおちゃん様が「オチ」ではなく「最後の一行のインパクト」とコメントしてくれているのですよね。これをもらったときに「電撃の編集部様、少なくともこの人は確実にオチが何なのか知っている」と思ったから。今でこそ「掌編なのでオチを」とHPや雑誌の方で言っていますが、おそらく読む側はこれを知ってると思いますね。ですので私はそれに乗っかって「微笑ましいと思えるオチを」と安心して入れさせてもらいました。あとは編集者様のほうで判断してくれるはずですから。
というのが私のコメントがああいう形になっている理由です。


――と、予備知識が長くなってしまいました(苦笑) コメントの説明しかしてないw
ここのブログ記事の掲載できる文字数の都合上、ここでいったん区切ります。キャラとプロットに関してはまとめて紹介しようと思うので、ここが一番切りがいいでしょう。

ということで連投します。
by zattoukoneko | 2010-06-17 11:03 | 作品品評 | Comments(0)