ニュートンのリンゴの木

ニュートンはリンゴが落ちるのを見て万有引力を発見したといわれています。このリンゴ、おいしくないそうですw まあ彼の生きていた時代から相当品種改良されてますからね。それにサイダー(米語ではリンゴの汁からつくった炭酸の飲み物のこと。日本の三ツ矢サイダーとは別物です)はそもそもリンゴがおいしくないのでそういう風にして加工して食べるようになって発明されたと言われています。
ニュートンのリンゴの木は東京大学の本郷キャンパス内にあるそうです。んー、見に行ってみたい、というか食べてみたいです(笑) 本当においしくないんですかね? 全然甘くないって聞いたんですけど。
さて今回はニュートンがリンゴの木を見て万有引力を発見したのではない、という話をします。(ただしついこの間新しい史料が発掘されて、今後また議論になりそうです。私はそこまで変わらないだろうと思っていますが。これについては後で紹介しますね)


ニュートンはリンゴの木から実が落ちるのを見て万有引力の発想に至ったのだと長いことされてきましたし、今でも一般的にはそう信じられています。これは日本だけではなく世界のあちこちでそうです。
ですがニュートンについての研究が進むにつれ(これはあまりに膨大な研究が出てます。全部見るなんて無理だし、有名なやつだけに絞っても数百件という文献が出てきます。私もそれは見れてないですし、科学史の論文とか読むことのない人には余計に無理だと思います。一応日本語でも結構いい本が出てますので本屋で探してみてください。――私も一冊定評のあるやつを買ったと思ったんですが、タイトル忘れちゃいました&今回も見つからないorz 本のタイトルに確かニュートンって入ってなかったんですよね。発売は2000年以降だったと思いますけど……)、ニュートンが万有引力を発見したのはリンゴを見たからではないことが判明してきました。
彼は万有引力の発見の時期にフックやホイヘンスといった人物と手紙のやり取りをしあっており、そこの中で引力に関する議論がなされています。そして万有引力の概念自体はフックの方がむしろ先に思いついていました。つまりニュートンは半ば盗作をしたというわけです(後にニュートンはフックに訴えられていますし、ニュートン自身も確かフックの先行権を認めていたのではないかと思います)。ただ確実にアイデアを盗んだかどうかはまだ疑問で、ほぼ同時に独立に思いついた可能性もまだあるようです。
ですがいずれにせよニュートンが万有引力という概念を導きだしたのは彼らとのやり取りや同時代、および前からの科学知識から生み出されたものであることは確実です。少なくとも木からリンゴが落ちるのを見て、それだけで無から万有引力の概念を閃いたというのは誤りだと考えられます。


ではなぜニュートンはリンゴが落ちるのを見て万有引力を発見したと言われているのでしょうか?
実はニュートンについて書かれた最初の伝記の影響力が大きかったからです。
最初の伝記を書いたのはウィリアム・スチュークリという人物で、(ちょっと正確な発刊年を覚えてないのですが)ニュートンの死後すぐに出版されたものです。

ちなみに脇道にそれますが、日本では伝記というものが書かれるのが非常に遅いです。少なくとも該当する人物が死んでからではならないという暗黙のルールがあり、また詳しい伝記を好んで買う人も少ないです。一方でヨーロッパやアメリカでは伝記は山のようにつくられ、子供向け・一般向けから専門書まで次から次へと出版されています。また伝記もその人が生きている間にもう出版されちゃいます。悪口とか暴露話とかも結構平気でします。文化や習慣が違うと言ってしまえばそれまでなのですが、日本のこの遅さは私個人の意見としては問題かな、と思います。確かにその人のことを暴いてやろうとか、その本が出ることによる当人や身内の人々の立場はあるとは思いますが、一方で日本の科学者やその他の学問分野の著名人が世間に知られずに埋もれてしまっているのも実情です(例えば高柳健次郎という名前を一体これを見ている人の何人が知っているでしょうか? 八木秀次は? 長岡半太郎はさすがに知ってますよね?(中学ですでに名前を聞くはずですから) では菊池大麓なんてのはどうでしょうか? 山極勝三郎はすでに記事にしましたね。桜田一郎くらいは知っておかないと海外で日本の有名な科学者の名前を問われたときに困りますよ? ――ここに挙げたのはまだまだ有名な人物ばかりです。日本のトップ、あるいは世界でも通用するような人たちで、時代が時代ならノーベル賞にも手が届いたのではないかとされるくらいの人たちばかりです。またいずれも50年以上前の人物で、最近の著名人をどれだけの人が知っているでしょうか?)。この日本の風土はちょっと困りもので、私も近年のことを調べても明かせなかったりします。たとえばいまだにコンピュータゲームの歴史なんてのはきちんと明かされてないです。せいぜいNHKスペシャル 新・電子立国〈4〉ビデオゲーム・巨富の攻防という本が出ているだけで、これも任天堂のファミリーコンピュータまで、しかも任天堂の視点ばかりでセガとか入ってないです。当然任天堂の悪口――というか問題点ですね――は述べてないです。またネット上を探せば一応昔からゲームをやっている人たちが「こんなことがあった」と書いていたりしますが、それは「研究」ではなくてまだ知識の羅列の域を出てないですし、もっと内情まで踏み込んだものはなかなか見つけられません(私とかも当時の出版物に載ったコメントとか、元社員の人とかに聞いて少しだけわかる程度です。任天堂の販売戦略とか、SUQARE ENIXのソフト開発がどう進められて、チームはどういう編成になっているのかとか知っている人は少ないと思います)。

――んー、脇道に逸れすぎました。戻りましょう。
スチュークリの伝記も執筆はニュートンの生きている間から始まっています。スチュークリはニュートン自身にも会って話をしていますし、ニュートンの妹からも兄のことを聞いていたりします。
そして彼が最初にニュートンの伝記を書いたというわけです。そしてこの中に「ニュートンはリンゴの実が木から落ちるのを見て万有引力を発見した」と書いてあるのです。そしてこの伝記が最も信頼に足るものだとされ(そりゃ本人に会って話を聞いてるわけですから、そう思うのも仕方ないことです)、そして世界各地でこれを参考資料として新しい伝記が書かれていったというわけです。そのため「ニュートンのリンゴの木」の話が世界的に有名となったのです。
スチュークリはリンゴの話をニュートンの妹から聞いたとされています(「いました」ですかね。これから変わるかもしれません。後述)。その妹は兄がそのように説明してくれたと語ってくれているようですが、ですが現在の歴史研究はそういう証言を信じません。前回の記事で述べたように科学者は社会の影響を受けていて当然ですし、また人間ですから記憶の間違いやあるいは例え話や嘘を言うこともあります(ちなみにガリレオの実験というのは人にわかりやすいように、「想像」して伝えた実験で、実際にはガリレオ自身は実験はしていないことが判明しています。これは一種の例え話で、これが史実として現代まで伝わってしまったわけですね)。
ニュートンの妹やニュートン本人がどのように考えてリンゴの話をしたのかはこれから解明されてくることでしょうが、しかしいずれにせよリンゴの木が万有引力の発想のすべてでないことはもうほぼ確定しています。先の繰り返しになりますが、ニュートンはフックなどの同時代の人たちと盛んに交流を持っており、また当時の時代背景(あるいは錬金術などの以前の思想背景)に身を置いていました。それらを無視して「万有引力はニュートンという天才が独りで生み出したものだ」という考え方をしてしまうのは問題があります。


さて、最初に述べた最近見つかった史料について触れて終わりたいと思います。
今年2010年の1月18日に(ニュートンが会長をやっていた)ロイヤル・ソサイエティがスチュークリの手書きの原稿を発見したとしてネット上で公開しました。これにはニュートンに直接会って「リンゴの木から実が落ちるのを見て万有引力の概念を思いついた」という話を聞いたことが書いてあります。
英語のページですが一応リンクを貼っておきましょうか。ただし「手書き」ですから読みにくいです(まあ、まだ大分読みやすいものでしたが)。また英語も18世紀のものですから古いものです。それなりの知識が必要となりますので、参考程度にご覧になるのがよいかと。
The Royal Society HP History of Science
私もきちんと読んだわけではないので断言はできないのですが、一応きちんとした史料かと思います。この新しい史料の登場によってニュートンの研究者は議論を盛んに始めることでしょう。ただざっと見た感じ、これによってスチュークリの伝記は妹の話ではなくニュートン本人からの話を元にしている(あるいは両方)とうふうに説が変わることはあるかもしれませんが、だからといって「やっぱりニュートンはリンゴの木から万有引力を見いだした」と逆戻りすることはないでしょう。
まあ、私はニュートンの専門家でもないですし、研究をしているわけでもないので、他の人たちに結論を出してもらうのをみなさまと一緒に待つことにします。


さて次回の記事ですが、化学関連で「氷の上はなぜ滑るのか」という話題にしようと思っていましたが、もうちょっと物理で繋げてしまうことにしました。
前回や今回よりもずっとずっと簡単になる予定。テーマは「渋滞はどのようにして起こるのか」です。
そして連日の投稿になってしまいましたね(汗) ニュートンで続きものだしもともと早くupする予定でしたが、このペースはさすがにネタがなくなるw(まあ、それでも一応二、三年はもつだろうとは思うのですが……)
とかく3日くらいはあけるようにしないと私も自分の体を壊すかも、って感じがするので、次回やそれ以降はペースを落とすようにしますね。ご了承くださいm(_ _)m
by zattoukoneko | 2010-03-21 10:50 | 物理 | Comments(3)
Commented by zattoukoneko at 2010-03-22 20:57
うぅ、本当に体を壊してしまったかもです……。
目を覚ますものの起き上がれなくなってきました。一応所々で仮眠は取っているのですが、それでも一日の合計の睡眠時間が4時間を軽く切ってます。
でも熱があるとかではないし、ちょっとした過労くらいなものでしょう。今ちょっと休むわけにはいかないですし。

次回記事に関してはもう書きあげてあります。ので更新はきちんと行ないます。その点はご心配なく……。
Commented by zattoukoneko at 2010-03-23 03:30
そういえば夏のあらし春夏冬中がAT-Xでも終わってしまいますね……。
紹介するとか言っておきながら結局できませんでしたorz

実は一昨年、去年といくつか取り上げたいと思ったアニメが出てきました。私的には豊作の一年強。でも紹介できるレベルまで自分が繰り返し見なきゃと考えているうちに旬がどんどん過ぎていきました……。テレビの世界って移り変わりが激しくて怖いです。

なお、特に紹介したかったのは『とらドラ』、『みなみけ』、『夏のあらし』でしょうか。
ただ、ほんとにどれもこれも繰り返し見ていて、紹介する前に放送終了から時間が経ってしまいました。
特にみなみけは三クール+OVA(なので40話ですか?)すべてを十回以上観ました。面白いのですが、何が面白いのかわからなかったんです。わかってきた頃にはとっくに放送終わってました。というか私自身がそもそも再放送で知りました。

これらの作品は今後取り上げるかもしれませんが、そのときにはさらに時間が過ぎてますね。
とりあえず名前だけ出しておきます。気になった方はチェックしてみては?
Commented by zattoukoneko at 2010-03-23 22:10
決めました! 『とらドラ!』の紹介やります!

本も番組も終了して、時間は経ってしまったけれど、この作品はやっぱり取り上げるべきです。

ただ少し時間をください。今までも構想は練ってきましたがなんかうまくまとめられないでいました。
たった今気付きましたが、私は本と映像二つをまとめて紹介しようとしてたからダメだったんですね。
なので二つに分割します。でも同じ内容のものではあるので、連関もしないとならないです。なのでそれをまとめ直すのに……半月ちょっとください。その間に構成考えます!


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