チュアブルソフト紹介最終回①

今月の半分を使ってチュアブルソフトさんのことについて書いてきました。今回はそのまとめを行いたいと思います。
ちょっと振り返ってみると最初にチュアブルソフトさんについて触れました。そして各作品の紹介、『Pure×Cure』、『あまなつ』、『Sugar+Spice!』、『恋文ロマンチカ』と四つの記事に分けてみてきました。
それぞれの記事は独立のものとして読めるものとして書いたつもりです。と同時に繋がりのあるものとしても記述しました。それは「チュアブルソフト」というものがどういう歩みをしてきたのかをそこから見えるのではないかと考えたからです。
今日upするチュアブルソフトさんの紹介、最終回は、それを整理するためのものと、そしてチュアブルソフトさんをあらゆる文学やゲームの中のどういう位置づけであるかということを考えてみるという意味合いがあります。そのためあえてその二点について記事を分割しました。
今回、私ちょっと本気で書きたいと思います(別に今まで手を抜いてきたというわけではないですが、頭の回転具合がそれなりに違うという意味です)。かなり難しめになるかもしれませんが、お付き合いいただけると幸いです。


さてチュアブルさんの過去作品を見てくる中で多くのものがわかってきました。変わらずあるもの、そして変わったところ。それをまとめていきましょう。

まずチュアブルさんの送る作品は『Medicine for your mind.』を強く意識したものだということ。これは設立当初から現在に至るまで変わらなかったことです。
「Medicine」であるためそのストーリーは受け手にすんなりと受け入れられやすいものとなっており、そして心を揺さぶってその感受性を喚起するものとなっています。現代社会のように頭で、理屈で、物事を考える割合が多くなっているところに、心や感情の大事さを思い出させてくれる、人間としての大事なものを思い出せてくれる、だから私たちはチュアブルさんの作品で癒されるのです。
そのような作品であるためストーリーの展開はとてつもなく突拍子のないものを描くことはありません。これはまとめのもう一つの記事で書きますが、現在日本(いや、かなりの先進国)の多くの物語がいかに読者を驚かせるかに偏ってきています。そして受け手もそれに慣れつつある。しかしオーソドックスなストーリーでもそれをきちんと深く、鮮やかに描くことで人を感動することはできます。むしろその方が人の自然な感情を揺さぶってくれるようにも私は思います(たとえばお笑いでもベタなものでも使い方やリズムによって、すごくこだわってつくられたものより笑えるはずです)。
確かに展開も受け手にまったく予想もつかないものになって、それでも「Medicine」となるのならそれに越したことはないでしょう。しかしそれはとても難しいもの。チュアブルさんはどちらかしか選べないとしたら「Medicine」であることを選択するでしょう。また私自身がそうであってほしいと思います。それがチュアブルソフトとしての個性なのですから。

物語の構成については各作品紹介で毎度見てきました。
チュアブルさんは
①主人公は序盤で何かを喪失する(あるいはしている)。
②主人公に課題が提示される(チュアブルさんでは主に恋愛)。
③主人公が課題に取り組むとともに、喪失していたものに目を向けることになる。
④課題を克服する。と共に、喪失していたものを取り戻したり、代わりのもので埋め合わせる。
という物語の基本構造をしっかりと守っています。
特に『あまなつ』以降では主人公の喪失が過去とも深く結びついていて厚みを増す傾向にあります。
さらに一番新しい作品である『恋文ロマンチカ』ではこの喪失の克服(上の④)がこれまでの作品のなかで一番明確に描かれました。つまりこの四作目にして上記の構造を完璧なものにしたと考えることができます。
後々ジブリ、宮崎駿監督作品についての記事を書く予定でいますが、彼も上の構造と大分近いものを使用しています。が、彼もこれをきちんと扱えるようになったのは『もののけ姫』かあるいは『千と千尋の神隠し』からで、『ハウルの動く城』で確実に意図して使ってみせました。つまり日本を代表するようなクリエーターである宮崎駿ですらこの構造を扱いきれていなかったということです。(村上春樹は『ねじまきクロニクル』でようやくって感じでしょうか?) ですからチュアブルさんが特別これを習得するのが遅かったということではありません。むしろそれを意識して使おうとしていたという点で他の作家よりもかなり進んだ立ち位置から始まったと言えるかと思います。

さて構造については先の節で述べたとおりですが、それを守れば良い作品ができるわけではありません。宮崎駿もおそらく一人ではここまで世間に受け入れられることはなかったでしょう。彼の作品を彩る絵や音楽が彼の世界観を見事にひきたてているのです。
チュアブルさんはぎん太さんというとても透明感のある、そして雰囲気を見事に描き出す原画家を抱えました。また音楽の面でも主にけんせいさんが担当し、素晴らしい楽曲を提供しています。これらがなければストーリーを統括する草壁よしおさんもその物語を活かすことはできなかったことでしょう。
それと『恋文ロマンチカ』の記事で述べたように、チュアブルさんはキャラクターの心情を深く掘り下げ、それによって物語を展開していっています。この点に関しては私がこれまでに紹介してきた、『スレイヤーズシリーズ』著者神坂一、『クレヨン王国』著者福永令三、『ブギーポップシリーズ』著者上遠野浩平、『FINAL FANTASYシリーズ』や『キングダムハーツシリーズ』のSUQARE ENIXさん、あるいは今後取り上げるつもりでいるジブリの宮崎駿、『夏と花火と私の死体』などの著者乙一、『京極堂シリーズ』著者京極夏彦、そのどれよりも優れています。(ただしこれはチュアブルさんが物語の奇抜さよりもキャラクターの心情に重きを置いているからと考えることができ、他の作家が劣っているということを私は意味していません)

ここからはゲームとしての側面に主に焦点を当てていきます。

チュアブルさんはADVを中心に制作しています(まあ製作者の人数からしてRPGなどはきつそうです)。
『Pure×Cure』や『あまなつ』はオーソドックスなADVで、選択肢などによるエンディングの変更などもほとんどありませんでした(各ヒロインへの個別ルートに入る選択肢はもちろん大きく作用しますが)。
これは第三作目の『Sugar+Spice!』で転換期を迎えます。ショートエピソードを自分で選ぶ形式をとることで『Sugar+Spice!』では「オトメカイセキ」を進めたりエピソードの回収というゲーム性が増しました。『恋文ロマンチカ』でも同じ形式が採用されており、「オトメカイセキ」はなくなったものの、エンディングが複数用意されるなどの工夫が見られます。
メインストーリーに割かれる割合が減った分、物語としては落ちてしまいましたが、ゲームとして考えるならば大きな前進です。(今後チュアブルさんはゲーム性も意識しつつ、物語をさらに深めていくことになるのでしょう)

また小物にこだわったり、画面の端々に細かい遊び心があるのも特徴です。
実は『FFIII』では各ゲーム会社が同じようにSQUAREさんのそうした遊び心を研究したという歴史があります。まだまだドット絵で画像の荒い中、それでもSQUAREさんはキャラの動きなどにこだわり、その動きのかわいさに各ソフト会社さんは度肝を抜かされました。また『FFV』キャラクターに喜怒哀楽の表情を取り入れましたし、『FFX』などではバックの植物が風になびいていたりします。また『FFVII』のスノーボードゲームのようにミニゲーム単体ですら一本のソフトとして販売できるのではないかというものも盛り込んでいます。
チュアブルさんは製作者の数や機材、資金の面でSQUARE ENIXさんのようなハイレベルなものまでは作れていません。が、細かいところにこそこだわりを持つべきだという姿勢は全く同じなのです。立ち絵や服装が豊富なのがもっともそれがわかる点でしょう(ストーリーを伝えるだけならあれだけの数はなくてもいいはずです)。


以上が大まかなまとめとなるでしょうか。
チュアブルさんはまだ規模として小さい会社です。ですがそのかしこに今後発展していくのではないかと予見できるものがあります。
今後どのような方向に向かっていくかはわかりません。エニックスさんのようにアダルトゲームメーカーからRPGなどを中心とした会社になるかもしれませんし、あくまでADVにこだわるかもしれません。会社の人数や機材も大手ゲームメーカーさんのように揃えてくるのかどうかはわかりません。この辺りはスタッフさんの意向によるでしょう。けれどもどのような道に進もうとも「チュアブルソフト」は確固たるブランドとなるだろうと私は思っています。
(まあ世の中世知辛いですから、いきなり人気がなくなるなんてこともあり得ますけど。特に小規模のメーカーさんは一作駄作を作ってしまえばそれだけで倒産だってしかねませんし)


さてまとめの①はこのくらいでおしまいにします。
続けて②を書いていきます。数時間後にはupすることでしょう。この記事よりもはるかに難しい内容にしますが、お付き合いいただけると幸いです。
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by zattoukoneko | 2010-03-14 09:37 | ゲーム | Comments(0)


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