人権・平等問題 Part. 2

◎ 障害者などへの人権・平等概念の適用
・ 狼少女の話をみなさんはご存知でしょうか? テレビなどでもよく取り上げられるので、観たことがあるかもしれません。
狼少女は(いくつかの地域で見つかっていますが、一番有名なのは)南アフリカで見つかった姉妹です。どうやら生後まもなく捨てられ、その後狼に育てられました。彼女たちは10歳くらいの年齢のときに発見され、村人に「保護」されます。その姉妹の面倒を見ることになったのが近くのカトリック教会の牧師でした。
牧師はなんとか人間らしい生活をさせてあげたいと考え、服を着せること、ナイフとフォークを使うこと、言葉を話すこと、などを教えようとします。しかし狼に育てられた少女たちにとってそれはとても苦痛なことであり、服もすぐに破り捨て、食事も犬のように摂ります。
結局妹の方は数年後死んでしまいます(死因は不明だと思います)。服は何とか着られるようになったと記憶していますが、食具は使えないままでしたし、当然言葉もしゃべれませんでした。
姉の方はもう少し長く生きます。それでも成人してまもなくしてやはり死んでしまいました。こちらは服も着られるようになり、二足歩行もできるようになりました。ナイフやフォークも使えたようです。言葉はいくつかの単語は覚えたようですが、残念ながら文章を書いたり、まともに話すところまではいかなかったようなので、彼女たちが狼に育てられていた時代の心情や、その後村で人として暮らすようになった後の気持ちに関しては記録が残っていません。
と、ここで大抵の番組では話が終わってしまうのですが、その後もう少し話が続きます。
少女たちを引き取った牧師は、彼女たちの死後非常に思い苦しみます。自分は人間らしく生活させるのがよいことだと思った。しかし果たして本当のそうだったのだろうか? 狼として育てられたのだから、そのままの生活をさせてやったほうがよかったのではないだろうか? そんな風に悩みます。
先述の通り、狼少女たちの気持ちは何一つ記録が残っていないので、牧師の悩みが正当なものかどうかは決めかねます。しかし一考の余地のある話ではないでしょうか?

・ 地下に閉じ込められていた少女
こちらはアメリカの話になります。この少女は物心のつく前に父親に地下へと閉じ込められ、そこで生活することになります。唯一人と接するのは父親が食事を持ってくるときだけでした。
この少女はやはり10歳くらいの頃に発見され、助け出されます。この人物はその後も長く生き続け、成人してから言葉を残しています。「地下から助け出してもらえてよかった。今のように普通の人と同じように人間らしい生活ができることを幸福に思う」と。
しかしこの言葉を鵜呑みにしてしまっては問題です。なぜならこの言葉は、助け出されたから十年以上経ってから発言されたもの、だからです。
すなわち、地下に閉じ込められていたときに思っていた感情とは違う可能性が高いということです。当然のことながら、助け出されてから「この生活こそいいものだ」と(暗にかもしれませんが)教え込まれているはずです。そしてその生活に馴染んでいるはずです。人の記憶は容易に変わります。地下に閉じ込められたいた少女の気持ちは、まさにそのときに聞かなければわからないのです。
もちろん地下よりは物の豊富な地上での生活の方が楽しいと感じるかもしれないので、何も彼女の言葉を真っ向から否定するつもりはありません。けれど狼少女の話と同じで、閉じ込められていてもそれなりの幸せは感じていたのかもしれません。それをすべて「そんな考え方は間違っている」と否定してしまっていいのでしょうか?

・ 障害者にとっての平等
ここでは生まれつきの障害を持っている人に話を限らせてもらいます。事故などで障害を背負った人まで含めてしまうとややこしくなってしまうので。
現在では障害者も健常者と平等で、なんら変わりない人間だとされていますが、残念ながらそううまくはいきません。障害を抱えている人は、どうしたって健常者より劣っている、ハンデを抱えていると思ってしまいますし、少なくともコンプレックスは感じていることでしょう。それも仕方ないじゃないですか、他人とはどうしたって違うのですから。
ただ障害者の多くは自分のこのコンプレックスを乗り越える経験をします。それは大抵の場合は、自分の障害を「個性」だと思うことによって解決します。これをルサンチマンの克服などといいます。
一つわかりやすい例を挙げておきます。(残念ながら以前PCが壊れたときにデータが消えてしまったので名前やリンク、写真が消えてしまい、細かく紹介できないのですが)アメリカに三本の脚を持った男性がいました。健常者の二つの脚と、お尻のところにもう一本脚が生えていると思ってください。彼はやはり少年期にその体にコンプレックスを抱いていたのですが、あるとき病院で一本足の少年に出会います。その子に彼は言われました。「脚がたくさんあっていいね」。その言葉で彼の人生観は180度変わります。それまでは自分の余計な脚を邪魔物だと思っていました。しかしこれは自分にとっての個性であり、特長であると考えるようになるのです。それ以来三本脚を巧みに利用して、友人と球技を楽しみ、最終的にはサーカスに入団し、その三本脚を利用した芸を見せて人気を博します。特に、「僕は椅子がないところでもいつでも座れるんだ」と言って三本の脚を広げ、座ったように芸が名物でした(三つ脚の椅子はこの芸を見た職人が、その安定性に注目しつくったものだと言われています)。
このように、障害者は自分の障害をハンデとしてではなく「個性」としてみなすことによって、自分のコンプレックスを解消するのです。
しかし現在の障害者への接し方には問題があります。今なお健常者の多くは障害をハンデとして見てしまいがちです(バリアフリーなんていうのは典型ですね)。しかし障害者にとってはそれは余計なお世話というものです。手足があろうとなかろうと、普通の人間のように生活できるのです(ただ社会は健常者に合わせて作られているので、生活にはかなりの工夫が必要ですが)。あるいはどうしてもできないことは、他人に手伝ってもらえばいいだけの話です。その代わり障害者は自分の「個性」を活かして別の仕事を成し遂げればいいだけですから。
だから障害者は本当の意味での「平等」を求めています。健常者と同じになる、同じ生活ができる、なんてことは望んでいないのです。
しかしこれがなかなか達成できないのは、今ある平等という概念が邪魔をしているからです。健常者は障害者のことを同じ人間だとみようとしています。けれども本当に障害者のことを理解するには、まず「障害者は自分たちとは決定的に違うんだ」ということを感じてもらわなくてはなりません。そしてそれを踏まえたうえで接近してきてほしいわけです。
ということで上のことを感じやすい例を挙げておきます。次のリンクをクリックしてみてください。
ダルトン 色弱者用レンズ紹介
皆さんは一番上の画像の数字が何に見えたでしょうか? ちなみに私にはどうやっても52にしか見えません。ええ、実は私自身も色弱という障害を持っているのです(だからこうして障害者のことを調べてたりするわけです)。
色弱の人は結構数がいるので私みたいに健常者と同じ89に見えなかった人もいるかもしれません。ですが正常に読めた方には感じてほしいのです。私とあなたの見えている世界は違います。この感覚を大事に持ってほしいのです。まずは感情から入ってくることを望んでいます。その先で、「なーんだ、障害者でも普通に過ごせるじゃん」と思えるようになってくれれば、それが障害者を同じ人間だと、初めて平等なんだと認められたことになるのだと私は考えています。
(ちなみに私は上記のHPには半分反感を持っています。わかりやすいから紹介しただけです。下までスクロールしてもらうとわかると思いますが、色弱者の見え方や、補正レンズをかけたときの見え方が紹介されています。しかしはっきり言いますが、こんな風に私には見えません。この画像はあくまで健常者が勝手に想像してつくったもので、本当に色弱者の見え方を示しているのではないのです。私が強調したい、「障害者と健常者の間にはどうしても溝があり、それを感じて念頭に置いておいてもらわないと本当の理解には繋がらない」という意見に反するものだと感じています)

さて、障害者や「普通の」人は違った生き方をした人物を紹介してきましたが、みなさんはどう思ったでしょうか? 単純に今ある自分たちの人権(人間らしさ)や平等の概念を押し付けてはいけない気がしてきませんでしょうか?
by zattoukoneko | 2009-11-01 17:20 | 社会・経済 | Comments(0)


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